日本金属学会

金属組織写真賞作品


第71回金属組織写真賞 選評


 第71回金属組織写真賞は、最優秀賞1件(透過型電子顕微鏡部門),優秀賞2件(走査電子顕微鏡部門、透過型電子顕微鏡部門),奨励賞2件(光学顕微鏡部門、顕微鏡関連部門)の5作品に授賞された。それらの作品の選評を下に記載する。
 なお、本年度の応募件数は1. 光学顕微鏡部門2件,2. 走査電子顕微鏡部門2件,3. 透過電子顕微鏡部門5件,4. 顕微鏡関連部門1件の計10件であった.金属組織写真賞規則に従って選考委員会でWebによる選考を行い、理事会において授賞を決定した.

 最優秀賞「Al-Zn-Mg-Cu合金における結晶粒界無析出物帯中の溶質クラスタ」(3. 透過電子顕微鏡部門)は,既存の時効硬化型アルミニウム合金の結晶粒界近傍領域に存在するPFZ内部をTEM,電子回折,HAADF-STEM法等によるマルチスケールでの精緻な観察と解析を行うことにより,PFZ内に溶質クラスタを発見し,そしてその形態・分布を明らかにした成果は材料学的に極めて優れており,学術的価値の高い作品として評価された.
 優秀賞(部門別、受付番号順) 1件目「入射電子エネルギー1eVでのSEM観察による複相鋼組織の分離可視化」(2. 走査電子顕微鏡部門)は,これまで誰も手掛けてこなかった入射電子エネルギー1eVでのSEM観察により,試料の電子構造を反映した新しいコントラストを利用して,複相鋼中のフェライト相,オーステナイト相,マルテンサイト相の同定が,SEMのコントラストで可能であることを実証した先駆的な成果であることが評価された.
 優秀賞2件目「高精度位相シフト電子線ホログラフィーによるn型GaNのドーパント濃度分布」(3. 透過電子顕微鏡部門)は,空間分解能と位相計測精度を両立した「位相シフト電子線ホログラフィー」により,n型窒化ガリウム中のドーパント濃度が明瞭に可視化されており,技術的にも学術的にもレベルの高い作品として評価された.今後の半導体分野における研究開発において有用な研究手法となることが期待される.
 奨励賞(部門別、受付番号順) 1件目「Weck’s 試液を用いた組織観察における試液温度の影響」(1. 光学顕微鏡部門)は,アルミニウム合金の腐食による光学顕微鏡像の変化と腐食温度との関係を系統的に調査したもので,微細組織内の溶質濃度に対するコントラストの変化からミクロ偏析を明瞭に可視化することに成功している.光学顕微鏡を用いた組織観察の教材や組織写真集における光学顕微鏡法の応用例としても利用できる優れた作品であると評価された.
 奨励賞2件目「Nb添加鋼の相界面で重畳した偏析と析出の3DAP観察」(4. 顕微鏡関連部門)は,相界面析出を3DAP法により偏析と析出を観察し,従来観察することが大変困難であったフェライト・オーステナイト相界面に現れる析出物の分布状態を明らかにした点,さらに実験条件を制御して炭化物のクラスタの空間分布の解明とした点が評価された.

 今回の選に惜しくも漏れた作品もレベルの高い力作が多かった。他の学会に類を見ない独自性と学術性を重んじてきた金属組織写真賞の継続と発展のために,今後ますます優れた組織写真の応募を大いに期待したい.

金属組織写真賞委員会委員長 松田健二(富山大学)



 最 優 秀 賞 

 
3. 透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 

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 応募部門  3.透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 題目  Al-Zn-Mg-Cu合金における結晶粒界無析出物帯中の溶質クラスタ
 応募者・
 共同研究者 
 1. 松田 健二, 富山大学
 2. 安元 透, 富山大学大学院生(現・三菱アルミニウム(株))
 3. Bendo Artenis, 富山大学(現・Imperial College London)
 4. 土屋 大樹, 富山大学
 5. 李 昇原, 富山大学
 6. 西村 克彦, 富山大学
 7. 布村 紀男, 富山大学
 8. Marioara Calin, SINTEF
 9. Lervik Adrian , ノルウェー科学技術大学
 10. Holmestad Randi, ノルウェー科学技術大学
 11. 戸田 裕之, 九州大学
 12. 山口 正剛, 日本原子力研究開発機構
 13. 池田 賢一, 北海道大学
 14. 本間 智之, 長岡技術科学大学
 15. 池野 進, 富山大学名誉教授
説明文など
 優 秀 賞 

 
2.走査電子顕微鏡部門(分析, EBSD等を含む)
 

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 応募部門  2.走査電子顕微鏡部門(分析, EBSD等を含む)
 題目  入射電子エネルギー1 eVでのSEM観察による複相鋼組織の分離可視化
 応募者・
 共同研究者 
 1. 青山 朋弘, JFEスチール(株)スチール研究所
 2. シャルカ ミクメコバ, JFEスチール(株)スチール研究所 (現 ISI of the CAS)
説明文など
 
3. 透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 

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 応募部門  3.透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 題目  高精度位相シフト電子線ホログラフィーによるn型GaNのドーパント濃度分布
 応募者・
 共同研究者 
 1. 山本和生, ファインセラミックスセンター
 2. 仲野靖孝, ファインセラミックスセンター
 3. 松本実子, ファインセラミックスセンター
 4. 穴田智史, ファインセラミックスセンター
 5. 石川由加里, ファインセラミックスセンター
 6. 平山司, ファインセラミックスセンター
 7. 田中敦之, 名古屋大学
 8. 本田善央, 名古屋大学
 9. 安藤悠人, 名古屋大学
 10. 小倉昌也, 名古屋大学
 11. 天野浩, 名古屋大学
説明文など
 奨 励 賞 

 
1.光学顕微鏡部門
 

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 応募部門  1.光学顕微鏡部門
 題目  Weck’s 試液を用いた組織観察における試液温度の影響
 応募者・
 共同研究者 
 1. 雷 斯敏, 東京工業大学
 2. 原田 陽平, 東京工業大学
 3. 熊井 真次, 東京工業大学
説明文など
 
4.顕微鏡関連部門(FIM, APFIM, AFM, X線CT等)
 

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 応募部門  4.顕微鏡関連部門(FIM, APFIM, AFM, X線CT等)
 題目  Nb添加鋼の相界面で重畳した偏析と析出の3DAP観察
 応募者・
 共同研究者 
 1. 張咏杰, 東北大学金属材料研究所
 2. 董浩凱, 東北大学大学院工学研究科(現: 中国清華大学)
 3. 宮本吾郎, 東北大学金属材料研究所
 4. 古原忠, 東北大学金属材料研究所
説明文など


応募作品
 第1部門 



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 応募部門  1.光学顕微鏡部門
 題目  浸炭表層面における摺動疲労損傷の形成過程
 応募者・
 共同研究者 
 1. 金澤 智尚, 千葉大学大学院 融合理工学府 地球環境科学専攻
説明文など
 第2部門 



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 応募部門  2.走査電子顕微鏡部門(分析, EBSD等を含む)
 題目  インジウム箔を用いた高温超電導接合線材の断面組織
 応募者・
 共同研究者 
 1. 加藤 丈晴, ファインセラミックスセンター
 2. 有賀 純子, ファインセラミックスセンター
 3. 横江 大作, ファインセラミックスセンター
 4. 吉田 竜視, ファインセラミックスセンター
 5. 伊藤 悟, 東北大学
 6. 早坂 遼一路, 東北大学
 7. 橋爪 秀利, 東北大学
説明文など
 第3部門 



 

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 応募部門  3.透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 題目  リチウムイオン二次電池におけるシリコン負極に生じる充放電反応組織のex-situ観察
 応募者・
 共同研究者 
 1. 島内 優, JFEテクノリサーチ(株)
 2. 池本 祥, JFEテクノリサーチ(株)
 3. 大森 滋和, JFEテクノリサーチ(株)
 4. 糸井 貴臣, 千葉大学大学院工学研究院
説明文など
 

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 応募部門  3.透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 題目  Direct observation of Re segregation at interfacial dislocation core region in crept Ni-based single crystal superalloy
 応募者・
 共同研究者 
 1. Fei SUN, Advanced Institute for Materials Research (AIMR), Tohoku University
説明文など
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