日本金属学会

金属組織写真賞

第65回金属組織写真賞

受賞結果奨励賞 2件

奨励賞
サブミクロングリッドを用いた二次元的粒界辷り及び付随現象の局所観察

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応募部門

第2部門 走査電子顕微鏡部門

応募者・共同研究者

増田 紘士, 東京大学大学院工学系研究科
戸部 裕史, 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所
佐藤 英一, 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所
杉野 義都, 株式会社コベルコ科研
鵜飼 重治, 北海道大学大学院工学研究院

作品の説明

 超塑性変形は、粒界辷りと局所的な応力集中を緩和するミクロな付随現象により進行すると予想されている。著者らは、伸長した柱状粒組織から成る15Cr-ODS (Oxide-Dispersion-Strengthened)フェライト鋼(Figure 1)を、粒の伸長方向と垂直に引っ張ることで、ミクロ組織レベルで二次元的な粒界辷りを発生させ、FIB (Focused Ion Beam)により粒界三重点近傍に作製したサブミクロングリッドの変形をFE-SEM により観察した(Figure 2-4)。本観察は、超塑性条件の中でも高速変形側の、転位を伴う粒界辷りが支配的な条件(1)にて行った。Figure 3 より、変形は不均一で粒界近傍に限定されていることがわかる。Figure 4 に示す変形前後のメッシュの比較から、粒内(i)ではほぼ変形が見られないが、粒界近傍(ii)及び三重点近傍(iii)では粒界辷りにより生じる応力集中に対応した塑性変形が観察され、(ii)ではそれに加えて体積収縮が見られる。塑性変形は転位の辷り運動、体積収縮は拡散による物質移動にそれぞれ対応する。従って、超塑性変形中の粒界辷りに伴うミクロな付随現象として、粒界近傍における転位運動と拡散が重畳的に寄与していることが明らかとなった。

文献:(1) H. Masuda, S. Taniguchi, E. Sato, Y. Sugino and S. Ukai: Mater. Trans., 55(2014), 1599-1605.

奨励賞
BN フラワーのHe イオン顕微鏡像

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応募部門

第4部門 顕微鏡関連部門

応募者・共同研究者

増田 秀樹, 物質・材料研究機構 先端的共通技術部門 極限計測ユニット
Guo Hongxuan, 物質・材料研究機構 先端的共通技術部門 極限計測ユニット(現NIST)
藤田 大介, 物質・材料研究機構 先端的共通技術部門 極限計測ユニット

作品の説明

 2次元材料の合成と応用のためには構造と物理的特性の評価が重要である。本研究では、h-BN ナノシートの層数と形態を、走査型He イオン顕微鏡を用いて評価した。ナノシートは、B およびN をドープしたFe-Cr-Ni 合金基板を超高真空中で1000°Cに加熱・保持後、室温に冷却して作製した。構造は、Everhart-Thornley 検出器で取得した2 次電子強度により評価した。図(a)に基板表面に析出したh-BN ナノシートの2 次電子像を示す。h-BN ナノシートには3 回対称の自己相似形が現れ、花型の外形を持っている。周囲の薄い網目状の輪郭を持っている部分はナノシート析出の中間層であり、さらにその周りの黒い領域は基板である。図(b)には、2 次電子強度から判別した層数分布を示す。異なるエネルギーのHe イオンビームを用いて観察することで、2 次電子強度のh-BN ナノシート厚み依存性を解析した(図(c))。照射したHe イオンとh-BN ナノシートの相互作用を考慮して、2 次電子強度はh-BN 層数に指数関数的な相関をもつことが推測された。このときの減衰因子を用いて、ナノシート中の2 次電子の非弾性平均自由行程を計算できる(1)。この値はHe イオン加速電圧10-30kV の範囲で変化が小さく、いずれの条件でも高い表面感度を示している。

文献:(1) H. Guo, et al.: Appl. Phys. Lett., 104(2014), 031607.

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