応募部門 | 2.走査電子顕微鏡部門(分析、EBSD等を含む) |
題目 | インジウム箔を用いた高温超電導接合線材の断面組織 |
作品の説明 | RE系高温酸化物高温超電導線材は、高2軸配向を有するセラミックス中間層が形成された金属テープ基板上にREBa2Cu3Oy (REBCO、RE:Y、Gd等)超電導層が成膜され、さらに、安定化層として銀(Ag)層、銅(Cu)層が積層されている。このような高温超電導線材を使用現場で簡便に接合させるプロセスの一つとして、接合部にインジウム(In)箔を用いて、低温の熱処理と圧力を加えて接合させる技術開発を行っている(図1)。接合部の組織を明らかにするためには、何らかの方法により接合部の断面出しを行い、断面観察を行うことが必要である。しかしながら、接合部に用いたIn箔は容易に変形してしまい、本来の接合組織の観察を行うことは極めて困難であった。そこで、液体窒素による冷却機能ステージを有するアルゴン(Ar)イオンミリング装置を用いて、加速電圧8kVのArイオンビームにより接合線材を切断し、さらに、加速電圧5kVのArイオンビームを用いて断面仕上げ研磨を行った。そのような接合サンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)により断面観察したところ図2に示すように、2つの線材が密着している状態を確認することができた。さらに、図3に示すように、CuとInの接合部には、ほぼ均一厚さでIn2Cuが形成されていることが判明した。 謝辞:JST未来社会創造事業(JPMJMI17A2)による支援のもとで実施されました。 |
学術的価値 | これまで組織観察が困難であったIn箔と銅の接合組織を明らかにすることができた。また、接合部には、In2Cuが形成されていることが分かった。これらの接合組織を明らかにすることにより接合抵抗をさらに低減させるための設計指針が得られる。 |
技術的価値 | 高温超電導線材および接合組織を破壊せずに断面SEM観察試料に仕上げる条件を見いだしたことに大きな技術的価値がある。インジウムに限らず、金属材料は、通常の機械切断および機械研磨を行うと、組織が変形したり、研磨傷が残ることがあり、正確な組織観察が不能である。 |
組織写真の価値 | 超電導線材の接合組織を明らかにすることにより、更なる接合抵抗の低抵抗化に必要なプロセス開発指針および接合プロセスにおける歩留まり向上に貢献できる。この超電導線材接合技術は、現場での作業が必要な鉄道き電、さらには、核融合炉のコイル等への応用が期待できる。 |
材料名 | 酸化物高温超電導線材はSuperPower社製のYBCO線材を用いた。線材の積層構造は、 Cu/Ag/YBCO/LaMnO3/MgO/Y2O3/Al2O3 HastelloyTMである。線材のCu表面およびIn箔表面をフラックスによる表面洗浄後に、70℃の熱処理により接合した。 |
試料作製法 | 加速電圧8kVのArイオンビームを用いて、合計10時間照射し、4mm幅の接合線材を0.5~1mmずつ位置移動させながら切断した。その後、加速電圧5kVのArイオンビームにより接合断面を平坦化した。Arミリング装置として、日本電子製IB-19520CCP装置を用いた。 |
観察手法 | 断面SEM像の撮影は、日立製SU8000(加速電圧2kV)で行い、反射電子検出器を用いた。エネルギー分散型X線分光(EDS)分析およびEDS元素マッピングは、加速電圧20kVで、SU8000付設のBruker製のEDS検出器を用いて実施した。 |
出典 | R. Hayasaka, S. Ito, D. Yokoe, T. Kato, H. Hashizume, Journal of Physics: Conference Series,Vol. 1559, 012034 (2020). |
応募者・共同研究者 | 1. 加藤 丈晴、ファインセラミックスセンター
2. 有賀 純子、ファインセラミックスセンター
3. 横江 大作、ファインセラミックスセンター
4. 吉田 竜視、ファインセラミックスセンター
5. 伊藤 悟、東北大学
6. 早坂 遼一路、東北大学
7. 橋爪 秀利、東北大学 |