日本金属学会

表彰(日本金属学会)

~2013年9月17日(火)金沢大学角間キャンパス自然科学大講義棟レクチャーホールにおいて、下記の方々が 受賞されました。皆様、おめでとうございます。~

第11回日本金属学会学術貢献賞 贈呈式(10名) (2013年9月17日)

大阪府立大学工学研究科教授 岩 瀬 彰 宏 君

  受賞者は、高エネルギービームと物質との相互作用の研究、高エネルギービームを用いた材料改質・創製の研究に取り組み、金属材料の照射効果における高密度電子励起や自由拡散欠陥効果などの解明を行うとともに、エネルギービームを用いた磁性改質、表面硬度制御など、材料改質の研究においても、加速器照射と放射光などの分析手段を組み合わせた独創的研究成果をあげてきた。さらには、原子力関連材料における照射損傷の基礎研究も併せて行うなど、量子ビームを複合的に利用した照射効果研究に大きく貢献した。

豊橋技術科学大学大学院工学研究科教授 梅 本 実 君

  受賞者は長年にわたり鉄鋼材料の組織と特性に関する研究を行ってきた。鉄鋼材料の制御圧延や制御鍛造における相変態を研究し、相変態シミュレーションプログラムを構築した。ショットピーニング、ドリル加工などによる超強加工により鉄鋼材料の表面にナノ結晶組織が生成することを見出し、その特性の解明と表面改質への応用に貢献した。さらに セメンタイトのバルク材を創製して基本的物性を明らかにした。以上、鉄鋼材料の組織の形成メカニズムの解明、加工による組織の微細化の分野で貢献した。

新日鐵住金(株)株技術開発本部鉄鋼研究所 上席主幹研究員 小 川 和 博 君

  受賞者は石油、ガス、電力等のエネルギー分野で使用される高耐食性マルテンサイト鋼、二相ステンレス鋼、耐熱用の高強度フェライト鋼、オーステナイトステンレス鋼等の各種高性能鋼材の開発に関し、溶接熱影響部の性能確保に主眼を置いた溶接冶金学の視点からの鋼材成分の適正化研究や鋼材を活かすための適正溶接材料の設計・開発研究を行った。その成果により鋼材の高性能化と溶接性確保の両立の実現に関し学術面の進歩、鋼材の実用化に大きく貢献した。

マレーシア工科大学マレーシア日本国際工科院教授・九州大学名誉教授 桑 野 範 之 君

  受賞者は、合金・半導体材料における結晶構造や微細組織、欠陥組織を詳細に解析し、その安定性や組織発展機構を実験と理論の両面から研究を行ってきた。その中でも銅基合金の短範囲規則性と長周期構造、希土類合金の高圧下・低温域での電子物性、希土類磁石材料の組織形成機構、Ⅲ族窒化物半導体薄膜結晶における転位挙動、錫ウィスカ発生過程などに関して大きな成果を挙げた。これらの研究結果は高温構造材料、磁石材料、発光・レーザ半導体材料、鉛フリーはんだ材料などの開発に大きく貢献した。

信州大学工学部機械システム工学科教授 杉 本 公 一 君

  受賞者は、長年に亘り先進鉄鋼材料の変形機構や各種機械的性質に関する研究に従事し、多大な研究成果をあげてきた。とくに、低合金TRIP鋼の残留オーステナイトの変態機構と変形機構を提案するとともに、母相組織をラス組織に変化させ冷間プレス成形性を高めた980~1470MPa級の低合金TRIP鋼を世界に先駆けて開発し、乗用車へ適用するための化学組成と熱処理法の指針を示してきた。受賞者のこれらの研究成果は、我が国の先進鉄鋼材料の開発に多大な貢献を果たしてきた。

高知工科大学環境理工学群教授 谷 脇 雅 文 君

  受賞者は、これまで材料格子欠陥の研究に携わってきたが、とりわけ、半導体格子欠陥の分野で特筆すべき成果を得ている。いくつかの半導体では、イオン照射によって表面に微細構造が形成されることを見出した。この特異な現象は、照射によって導入された点欠陥の挙動によるものであることを明らかにした。さらにそれを応用したまったく新しいナノ構造形成法を提案し、この技術を発展させ、半導体導体表面にナノセル二次元格子を自在に形成し、ナノテクノロジー分野への応用が有望であることを実証している。

(株)IHI 経営企画部主幹 錦 織 貞 郎 君

  受賞者は、主としてジェットエンジン重量の低減、高推力化に大きく寄与する軽量耐熱革新材料としてTiAl合金の研究開発に取り組んできた。特に、化学成分、溶存酸素ならびに熱処理により制御した組織と高温変形機構の解明を系統的に進め、高温クリープ強度を飛躍的に向上させるTiAl合金の設計指針を示した。その先駆的な研究成果の学術的価値は多大であるとともに今日のジェットエンジンならびに車両用過給機へのTiAl合金の実用化、発展に大きく貢献した。

北海道大学大学院工学研究院教授 松 浦 清 隆 君

  受賞者は、鉄鋼の凝固と包晶変態の機構解明と組織制御、耐食耐熱金属間化合物の製造プロセス開発と新機能創生、耐摩耗性と耐食性付与のための金属表面改質と被覆、粉末冶金法による軽量合金の組織制御と機能設計、Al/Mgクラッド材の製造プロセス開発と超塑性発現など、多岐にわたる分野において研究を推進し、これらを通して多くの学生たちを育成し社会に送り出してきた。彼らのほとんどが上記研究に関する学術論文の著者に名を連ね、現在、国内外の大学や企業において研究者・技術者として活躍している。

東北大学多元物質科学研究所准教授 三 村 耕 司 君

  受賞者は、常用金属、高融点金属、希土類金属など多種多様な金属の高純度精製プロセスの開発および高純度金属・材料の純度評価や特性評価にわたり、多くの業績を上げてきた。特に高純度精製に関しては、陰イオン交換、溶媒抽出、水素プラズマ溶解、電子ビーム溶解、電子ビーム浮遊帯溶融、プラズマ加熱帯溶融など多くの精製法を駆使し、各不純物の極低減化に対する最適化を図った。また新規開発した「水素プラズマ溶解法」では、活性水素の優れた精製効果の発現を実証する等、この分野の発展に貢献した。

横浜国立大学機器分析評価センター准教授 吉 原 美 知 子 君

  受賞者は、合金および金属間化合物の高温酸化特性に関する研究に取り組み、優れた研究成果を上げている。なかでも、軽量耐熱構造用材料として優れた特性を示すTiAl系金属間化合物について、合金設計上重要である添加元素の影響を調査し解明したことは学術的、実用的見地から意義が大きい。またその手法として従来の合金法に加えてイオン注入法を利用し、合金法では添加が困難なものも含めた広範な元素の影響を明らかにしている。耐酸化性改善に関しても複数の方法を提案し、合金開発に大いに貢献した。

第36回 日本金属学会技術開発賞 贈呈式 (12件51名) (2013年9月17日)

1. 高バーリング型590 MPa 級および780 MPa 級熱延原板合金化溶融亜鉛めっき鋼板の開発

新日鐵住金(株)本社人事労政部主幹 林 邦 夫 君

新日鐵住金(株)(現・木更津工業高等専門学校助教) 小 川 登 志 男 君

新日鐵住金(株)名古屋製鉄所品質管理部 田 中 博 之 君

新日鐵住金(株)(現・タイ新日鐵住金(株) Manager) 松 谷 直 樹 君

新日鐵住金(株)インドC.A.P.L プロジェクト Division Manager 後 藤 貢 一 君

2. 酸化物分散強化白金熱電対(TEMPLATTM)の開発

田中貴金属工業(株)伊勢原工場室長 浜 田 登 喜 夫 君

田中貴金属工業(株)伊勢原工場 山 嵜 春 樹 君

田中貴金属工業(株)伊勢原工場 児 玉 武 臣 君

3. 合成ガス製造装置用耐メタルダスティング合金「NSSMCTM 696」の開発

新日鐵住金(株)技術開発本部鉄鋼研究所 上席主幹研究員 西 山 佳 孝 君

新日鐵住金(株)技術開発本部鉄鋼研究所 主幹研究員 森 口 晃 治 君

新日鐵住金(株)技術開発本部鉄鋼研究所 主幹研究員 岡 田 浩 一 君

新日鐵住金(株)鋼管事業部尼崎製造所 主幹 小 薄 孝 裕 君

新日鐵住金(株)鋼管事業部尼崎製造所 主査 栗 原 伸 之 佑 君

4. 析出強化型銅合金の集合組織制御技術の開発

DOWA メタルテック(株)金属加工事業部 主席研究員 高 維 林 君

DOWA メタルテック(株)金属加工事業部取締役 金属加工事業部長 菅 原 章 君

DOWA メタルテック(株)金属加工事業部 課長 木村 崇 君

5. ディーゼル車触媒担体用高耐酸化性ステンレス鋼箔「JFE18-3USR」の開発

JFE スチール(株)スチール研究所 ステンレス鋼研究部 主任研究員 太 田 裕 樹 君

JFE スチール(株)ステンレスセクター部 主任部員 清水 寛 君

JFE スチール(株)西日本製鉄所 薄板商品技術部主任部員 河 野 雅 昭 君

JFE スチール(株)スチール研究所 ステンレス鋼研究部主任研究員 福 田 國 夫 君

JFE テクノリサーチ(株)知的財産事業部 主査 石 井 和 秀 君

6. TS1800MPa 級ホットスタンプ用鋼板の開発

新日鐵住金(株)技術開発本部鉄鋼研究所 主幹研究員 匹 田 和 夫 君

新日鐵住金(株)技術開発本部鉄鋼研究所 主幹研究員 西 畑 敏 伸 君

新日鐵住金(株)鹿島製鐵所薄板生産技術部 主幹 菊 地 祐 久 君

アイシン高丘(株)塑性生技部主担当 鈴 木 貴 之 君

マツダ(株)車両開発本部ボデー開発部 アシスタントマネージャー 中 山 伸 之 君

7. 白金を塩酸で溶解する環境調和型の新リサイクル技術の開発

東京大学(現・関東化学(株)) 堀 家 千 代 子 君

東京大学大学院 工学系研究科教授 森 田 一 樹 君

東京大学 生産技術研究所教授 岡 部 徹 君

8. 電子ビーム積層造形法による骨類似機能化した人工関節の開発

ナカシマメディカル(株)開発部開発グループ主任 福 田 英 次 君

ナカシマメディカル(株)開発部課長 高 橋 広 幸 君

ナカシマメディカル(株)開発部部長 中 川 誠 治 君

ナカシマメディカル(株)代表取締役社長 中 島 義 雄 君

大阪大学大学院 工学研究科教授 中 野 貴 由 君

9. 省合金型極低温用高変形能天然ガス輸送用鋼管Super Tough-Ace® の開発

新日鐵住金(株)技術開発本部鉄鋼研究所 上席主幹研究員 原 卓 也 君

新日鐵住金(株)技術開発本部君津技術研究部 主幹研究員 篠 原 康 浩 君

新日鐵住金(株)技術開発本部先端技術研究所 上席主幹研究員 重 里 元 一 君

新日鐵住金(株)技術開発本部鉄鋼研究所 主幹研究員 津 留 英 司 君

10. 水素系燃料バーナーとクロム鉱石溶融還元法による省CO2 ステンレス鋼製造プロセス

JFE スチール(株)スチール研究所 製鋼研究部 主任研究員 奥 山 悟 郎 君

JFE スチール(株)スチール研究所 製鋼研究部 主任研究員 内 田 祐 一 君

JFE スチール(株)西日本製鉄所 製鋼部主任部員 小 川 尚 志 君

JFE スチール(株)スチール研究所 製鋼研究部長 三 木 祐 司 君

JFE スチール(株) スチール研究所 主席研究員 岸 本 康 夫 君

11. 養殖用金網材C45470「UR30ST」の開発

三菱伸銅(株)三宝開発部 グループリーダー 田 中 真 次 君

三菱伸銅(株)三宝開発部 シニアフェロー・部長 大 石 恵 一 郎 君

(株)三宝フォージング 製造部課長 吉 川 勉 君

12. 高温・高CO2 ガス環境で優れた耐食性を有するシームレス17%Cr ステンレス油井用鋼管UHP® -17CR

JFE スチール(株)スチール研究所 鋼管・鋳物研究部 主任研究員 石 黒 康 英 君

JFE スチール(株)スチール研究所 鋼管・鋳物研究部 主任研究員 鈴 木 健 史 君

JFE スチール(株)知多製造所 商品技術部 主任部員 中 橋 哲 君

JFE スチール(株)知多製造所 製造部副工場長 石 川 和 俊 君

JFE スチール(株)知多製造所 商品技術部 主任部員 佐 藤 秀 雄 君


第11回日本金属学会功労賞 贈呈式 (3名) (2013年9月17日)

[学術部門]2名

大阪府立大学副学長・工学研究科教授 東 健 司 君

 受賞者は、主に構造用金属材料の変形・加工に関する研究に従事し、第一原理計算を活用した合金設計に加え、マルチスケール組織制御や新規材料プロセスを駆使した新素材の開発など、非常に多くの成果を挙げてきた。例えば、Al-Zn合金において、その組織および有害元素量制御により室温高速超塑性を実現した。この材料はメンテナンスフリー制震ダンパーとして応用され、建築物に設置されている。マグネシウム合金の変形・加工に関する研究では、結晶粒微細化と結晶方位制御による加工性能の大幅な向上を実現している。この知見は、家電製品の加工などに応用されている。また、材料分野への貢献として、独立行政法人日本学術振興会学術システム研究センター研究員として科研費のシステム改革に取り組み、今後10年間の材料工学およびナノ材料工学の発展への道筋を明確にした。

九州大学大学院工学研究院教授 東 田 賢 二 君

 受賞者は、結晶の力学物性、特に加工硬化や材料破壊の支配機構について、転位論に基づく研究を行って来た。まず加工硬化の研究では、変形帯と呼ばれる転位組織の形成の必然性とその役割を明確化した。破壊靭性の研究では、亀裂先端集中応力に対する転位遮蔽効果を、超高圧電顕法による亀裂転位の性格付けと遮蔽場の可視化を通して実証した。さらに脆性-延性遷移の支配機構、鉄鋼材料の圧延加工組織解析、疲労や水素脆化の機構、長周期積層構造の強化機構等、広く力学物性に関わる研究に力を注いでいる。

[技術部門]1名

日立金属(株)安来工場冶金研究所主管研究員 吉 沢 克 仁 君

 受賞者は、長年に渡って超急冷金属軟磁性材料の開発とその実用化研究に従事してきた。主な業績は、電源やトランスなどに用いられているアモルファス軟磁性材料の開発やナノ結晶軟磁性材料の開発である。特に、Fe基アモルファス合金の結晶化によりナノ結晶軟磁性材料を世界で初めて開発し、その特性向上や応用に関する研究開発に取り組み、ナノ結晶軟磁性材料の実用化に大きく貢献した。これらを通して明らかになった軟磁性材料の開発指針は、今日の軟磁性材料の研究開発に大きな影響を与えており、軟磁性材料技術の進歩発展に多大な功労があった。

第23回日本金属学会奨励賞 贈呈式 (6名) (2013年9月17日)

[物性部門]

東北大学多元物質科学研究所助教 森 戸 春 彦 君

 受賞者は、新しい強磁性形状記憶合金の開発に取り組み、多くの成果を挙げてきた。特に、Co-Ni-(Al、Ga)合金およびNi-Fe-Ga系合金のシングルバリアント単結晶を用いた結晶磁気異方性の研究は、国内外から高い評価を受けている。さらに、Ni-Fe-Ga系合金において、元素置換や組織制御により、磁気的特性やマルテンサイト変態温度、結晶構造などを制御し、数にも及ぶ巨大磁歪の発現に成功した。現在は、セラミックスの分野にも活躍の場を広め、今後の更なる飛躍が期待される。

[組織部門]

九州大学大学院工学研究院助教 中 田 伸 生 君

 受賞者は、鉄鋼材料の高機能化を目指した組織制御に関する研究に携わっており、独自の組織制御法ならびに組織解析手法を用いて数多くの研究成果を上げている。主な業績として、(1)鋼の結晶粒微細化強化と合金元素の影響を調査した研究ならびに(2)鉄鋼材料のbcc→fcc逆変態を対象とした研究などが挙げられる。とくに、ラスマルテンサイト組織を初期組織とした逆変態に関する一連の研究は国内外から高い評価を受けており、将来にわたって材料科学分野を背負っていく人材となることが期待される。

[力学特性部門]

東北大学大学院工学研究科助教 小 原 良 和 君

 受賞者は、超音波探傷における最難関課題であった「閉じたき裂」の高精度超音波計測法の開発に関する研究を進めてきた。主な業績として、閉じたき裂の映像法SPACE(subharmonic phased array for crack evaluation)の開発と、閉じた疲労き裂や応力腐食割れ試験体での深さ計測の高精度化の実証が挙げられる。現在、さらなる高性能化を目指し、き裂の荷重依存性や熱応力の利用に着目した映像法の創出にも取り組んでおり、今後の更なる発展が期待される。

[材料化学部門]

東北大学大学院工学研究科助教 菅 原 優 君

 受賞者は、電気化学的原理に基づいて、機能材料・構造材料の腐食劣化機構の解析と高機能表面の創製に関する研究を推進してきた。主な業績として、(1)固体高分子形燃料電池の白金系触媒の溶解機構解明、(2)ステンレス鋼の局部腐食発生過程の解析、(3)アモルファス合金から出発するナノポーラス材料の創製、などが挙げられる。明らかにした知見に基づき、現在は高耐食を有する白金系触媒の創成やナノポーラス材料のガスセンサーへの応用に取り組んでおり、今後の更なる進展が期待される。

[材料プロセシング部門]

東北大学多元物質科学研究所助教 安 達 正 芳 君

 受賞者は、新しい単結晶窒化アルミニウム(AlN)の液相成長法の開発研究を行っている。AlNは深紫外発光素子の基板として有望視されている材料である。受賞者は、化学熱力学的な学理に基づいた発想から、フラックスとしてGa-Al系を用いることで、高品質AlN膜の成長に成功している。最近では、成長したAlNの極性が反転する原因を突き止め、その結果を元に結晶成長メカニズムを明らかにした。現在、実用化を目指した大口径化の研究も行っており、今後の更なる発展が期待される。

[工業材料部門]

東北大学金属材料研究所助教 稗 田 純 子 君

 受賞者は、現在、表面修飾による生体機能化に関する研究を中心とした医療用金属材料の開発に従事しており、本研究分野では、これまで、生物学的生体適合性付与を目指した硬組織適合性膜あるいは軟組織適合性膜による医療用β型チタン合金の表面修飾に関する研究を行い、医療用β型チタン合金の表面形状の制御と膜の密着強度向上に関する研究を中心に研究成果を上げている。さらに、現在、新規医療用チタン合金の開発についても取り組んでおり、今後のさらなる展開が期待される。

第3回日本金属学会まてりあ賞 贈呈式 (4編15名) (2013年9月17日)

[第3回まてりあ論文賞](2編13名)

1. 巨大超弾性を示す鉄系形状記憶合金の開発

東北大学 (現・大同特殊鋼(株)) 田 中 優 樹 君

東北大学大学院 工学研究科助教 大 森 俊 洋 君

古河スカイ(株) 深谷工場 檜 室 義 幸 君

東北大学大学院 工学研究科准教授 須 藤 祐 司 君

東北大学大学院 工学研究科教授 貝 沼 亮 介 君

東北大学 名誉教授 石 田 清 仁 君

2. 放射光を利用した金属合金における固液共存体のせん断変形のその場観察

大阪大学大学院 工学研究科助教 柳 楽 知 也 君

京都大学 工学研究科教授 安 田 秀 幸 君

Imperial College London Lecturer Christopher M. Gourlay 君

大阪産業大学 工学部教授 杉 山 明 君

大阪大学大学院 工学研究科准教授 吉 矢 真 人 君

高輝度光科学研究センター 研究員 上 杉 健 太 朗 君

高輝度光科学研究センター 主幹研究員 梅 谷 啓 二 君

[第3回まてりあ啓発・教育賞](2編2名)

1. 計量標準を支える材料―光の標準を一例として―

産業技術総合研究所 主任研究員 市 野 善 朗 君

2. 廃製品の金属リサイクルにおける中間処理技術への期待

産業技術総合研究所 グループ長 大 木 達 也 君


第10回日本金属学会村上記念賞 贈呈式 (1名) (2013年9月17日)

東北大学名誉教授 丸山公一君 君

 受賞者は、長年に渡って高温構造材料の変形や破壊そして高機能化に関する研究に従事してきた。その間、TiAl合金を中心とする金属間化合物の高強度化に向けたラメラ組織形態の設計、ラメラ界面構造の設計によるラメラ組織劣化の防止、Mg基を始めとする耐熱軽金属材料の合金・粒界組織設計、クリープ破断時間の領域区分解析法やクリープ曲線のu法解析に基づく耐熱鋼の長時間強度評価などの分野で、幾多の成果を挙げてきた。このように、金属工学、特に高温材料強度の分野において先駆的な研究を行い格段の功績を挙げた。

第10回日本金属学会村上奨励賞 贈呈式 (3名) (2013年9月17日)

東京工業大学精密工学研究所准教授 稲 邑 朋 也 君

 受賞者は、マルテンサイト変態の結晶学に関する基礎研究と、それを基にした新材料の設計・プロセス研究を行っている。これまでに、βチタン形状記憶合金における集合組織制御・合金設計の指針を明らかにしたこと、形状記憶合金の晶癖面バリアント間には無歪み結合もしくは双晶方位からの偏差が隠然と存在することを見いだし、自己調整組織に対する理解を深化させたこと、等の成果を挙げている。現在はこれらの成果を、種々の形状記憶合金の材料設計・高性能化に応用展開しており、今後の発展が期待される。

東北大学金属材料研究所助教 佐 藤 和 久 君

 受賞者は、電子線構造解析による強磁性規則合金ナノ粒子の新しい評価手法を確立するとともに、機能発現メカニズムと原子的構造との関係を明らかにしてきた。主な業績として、L10型規則合金ナノ粒子における長範囲規則度の粒径依存性解明と規則-不規則変態の実験的検証、原子分解能イメージングによるナノ粒子構造の解明、粒子サイズと冷却速度を考慮した規則化熱処理条件の提案と実証が挙げられる。これらの成果は、合金ナノ粒子の構造と相安定性の解明に寄与するものであり、今後の更なる発展が期待される。

大阪大学大学院工学研究科准教授 萩 原 幸 司 君

 受賞者は、Ni3X型化合物、遷移金属シリサイド等の新規超高温材料をはじめとし、軽量高強度Mg基LPSO合金、更にはCa基生体内分解性化合物など、環境に優しい次世代構造材料として期待される一連の新材料の塑性挙動、機能発現に関する系統的な研究を行い、多数の優れた業績を挙げている。単結晶、方位制御結晶を用いることで、特異な各種力学物性の発現機構、支配因子を本質的観点から解明し、新材料開発への指針を明確に与えている。更にはそれら方位制御結晶の直接的な実用応用を検討するなど、今後の展開が期待される。

第61回日本金属学会論文賞 贈呈式 (6編29名) (2013年9月17日)

[物性部門]1編(3名)

1. Dislocations in Deformation Microstructure of Extruded Mg97Y2Zn1 Alloy Studied by High-Angle Annular Detector Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy (HAADF-STEM)

東北大学 名誉教授 平 賀 賢 二 君

日本電子(株) EM 事業ユニット 安 原 聡 君

秋田大学大学院 工学資源学研究科教授 齋 藤 嘉 一 君

[組織部門]1編(6名)

2. Ti-4Fe-7Al 合金の焼戻しに伴う特異現象

岡山大学大学院 自然科学研究科 准教授 竹 元 嘉 利 君

三浦工業(株) メディカル技術部 越 智 昌 宏 君

岡山大学大学院 自然科学研究科 教授 瀬 沼 武 秀 君

岡山大学大学院 自然科学研究科 特任教授 高 田 潤 君

岡山大学大学院 自然科学研究科 准教授 清 水 一 郎 君

広島大学大学院 工学研究院 教授 松 木 一 弘 君

[力学特性部門]1編(3名)

3. 押込み試験とモデリングによるベキ乗則材料の単軸クリープに関する構成式の予測

日本大学 工学部専任講師 准教授 高 木 秀 有 君

マサチューセッツ工科大学 工学部主任研究員 道    明

日本大学 工学部教授 藤 原 雅 美 君

[材料化学部門]1編(7名)

4. Experimental Determination and Thermodynamic Assessment of Phase Equilibria in the Co-Mo System

東北大学大学院 工学研究科教授 及 川 勝 成 君

Metallurgy Division, National Institute of Standard and Technology Physical Scientist
Ursula R. Kattner 君

(株)日立製作所 日立研究所研究員 佐 藤 順 君

東北大学大学院 工学研究科助教 大 森 俊 洋 君

Northeastern University School of Materials and Metallurgy Professor
Min Jiang 君

東北大学大学院 工学研究科教授 安 斎 浩 一 君

東北大学 名誉教授 石 田 清 仁 君

[材料プロセシング]1編(6名)

5. Bone Loss and Reduced Bone Quality of the Human Femur after Total Hip Arthroplasty under Stress-Shielding Effects by Titanium-Based Implant

ナカシマメディカル(株) 薬事品証部係長 野 山 義 裕 君

大阪大学 接合科学研究所 三 浦 拓 也 君

大阪大学大学院 工学研究科助教 石 本 卓 也 君

大阪大学 (現:大阪ガス(株)エネルギー技術部) 板 屋 貴 大 君

東北大学 金属材料研究所 教授・所長 新 家 光 雄 君

大阪大学大学院 工学研究科 教授 中 野 貴 由 君

[工業材料部門]1編(4名)

6. 中炭素鋼の温間変形抵抗と加工材強度

新日鐵住金(株) 技術開発本部 鉄鋼研究所部長 越 智 達 朗 君

新日鐵住金(株) 技術開発本部 室蘭技術研究部主幹研究員 宮 西 慶 君

松菱金属工業(株) 部品技術部 部長 戸 田 正 弘 君

新日鐵住金(株) 技術開発本部 鉄鋼研究所主幹研究員 加 田 修 君


第19回日本金属学会若手講演論文賞 贈呈式 (3編3名) (2013年9月17日)

1. Energetic Stability and Thermoelectric Property of Alkali-Metal-Encapsulated Type-I Silicon-Clathrate from First-Principles Calculation

電力中央研究所材料科学研究所主任研究員 ○中 村 馨

電力中央研究所材料科学研究所主任研究員 山 田  進 君

電力中央研究所材料科学研究所主任研究員 大 沼 敏 治 君

2. Identical Area Observations of DeformationInduced Martensitic Transformation in SUS304 Austenitic Stainless Steel

京都大学大学院工学研究科 ○陳 美 伝

京都大学大学院工学研究科助教 柴 田 暁 伸 君

京都大学大学院工学研究科助教 寺 田 大 将 君

京都大学大学院工学研究科助教 辻  伸 泰 君

3. OpticalMicroscopic Study on NiCoMnAlMetamagnetic Shape Memory Alloy by In Situ Observation under a Pulsed High Magnetic Field

東北大学大学院工学研究科 ○許 皛

東京大学物性研究所 片 倉 稲 子 君

東京大学物性研究所特任研究員 木 原 工 君

東京大学物性研究所准教授 徳 永 将 史 君

仙台高等専門学校助教 伊 東 航 君

東北大学金属材料研究所准教授 梅 津 理 恵 君

東北大学大学院工学研究科教授 貝 沼 亮 介 君


第21回 優秀ポスター賞受賞者28名 (2013年9月18日受賞決定) (五十音順)

1. LiCa(AlH4)3 の格子振動特性,結晶構造,脱水素化反応の解明

東北大学 赤 城 拓 馬 君,佐 藤 豊 人 君,高 木 成 幸 君,折 茂 慎 一 君

2. 骨生体アパタイトナノ配向化構造の定量解析と力学機能異方性への寄与

大阪大学 荒 木 裕 太 郎 君,石 本 卓 也 君,中 野 貴 由 君,西 田 倫 希 君, 田 口 英 次 君,保 田 英 洋 君

3. 侵入型固溶原子の転位芯高速拡散経路の原子論的研究

大阪大学 石 井 明 男 君,尾 方 成 信 君 マサチューセッツ工科大学 Ju Li 君

4. ARB 加工の進展に伴うFCC 純金属の蓄積エネルギーの変化

東京工業大学 上 田 太 郎 君,宮 嶋 陽 司 君,兵庫県立大学 足 立 大 樹 君,東京工業大学 藤 居 俊 之 君,尾 中 晋 君,加 藤 雅 治 君

5. Ti-Cr-Sn 合金の機械的性質に及ぼすCr およびSn の濃度の影響

東京工業大学 岡 野 奈 央 君,篠 原 百 合 君,若 林 薫 君,草 野 泰 宏 君,田 原 正 樹 君,稲 邑 朋 也 君,細 田 秀 樹 君,筑波大学 宮 崎 修 一 君

6. 骨欠損部への配向化材料埋入による異方的な骨再生挙動とその影響因子

大阪大学 荻 須 宏 幸 君,石 本 卓 也 君,松 垣 あ い ら 君,中 野 貴 由 君

7. 立方晶-単斜晶マルテンサイト変態におけるKinematic Compatibility の格子定数依存性

大阪大学 加 藤 潤 一 君,田 原 正 樹 君,稲 邑 朋 也 君,細 田 秀 樹 君

8. 軟X 線照射により結晶化したSiGe多層膜のTEM 観察

兵庫県立大学 草 壁 史 君,丸 山 裕 樹 君,部 家 彰 君,松 尾 直 人 君,神 田 一 浩 君,望 月 孝 晏 君,大阪大学 伊 藤 和 博 君,高 橋 誠 君

9. Al-Zn およびAl-Mg 二元合金の熱力学解析とスピノーダル線の決定

横浜国立大学 古 後 翔 佑 君,廣 澤 渉 一 君

10. Mg-Zn-Y 合金における長周期積層構造相の引張変形挙動と結晶方位の関係

熊本大学 坂 本 幸 成 君,峯 洋 二 君,山 崎 倫 昭 君,河 村 能 人 君,高 島 和 希 君

11. Mn-Ga-Cu 3 元合金の磁気特性におよぼす時効熱処理の影響

仙台高等専門学校 佐 々 木 雅 弘 君,東北大学 水 口 知 大 君,貝 沼 亮 介 君,仙台高等専門学校 伊 東 航 君

12. 強相関電子系Sr1-xNdxMnO3 におけるC 型軌道整列状態の形成

早稲田大学 佐 藤 兆 樹 君,日産アーク 井 上 靖 秀 君,早稲田大学 小 山 泰 正 君

13. Cr-O 新高硬度薄膜

長岡技術科学大学 鈴 木 知 真 君,遠 藤 稔 之 君,鈴 木 常 生 君,中 山 忠 親 君,末 松 久 幸 君,新 原 晧 一 君

14. Design and development of a low-cost, high-creep strength Ni-Fe-base superalloy for A-USC applications

物質・材料研究機構 鍾 志 宏 君,Yong Yuan 君,Zhan Shi 君,谷 月 峰 君

15. Ti-6Al-4V 合金単結晶の摩耗特性およびその支配因子の解明

大阪大学 田 中 智 貴 君,芹 澤 愛 君,萩 原 幸 司 君,中 野 貴 由 君

16. 超高圧電子顕微鏡を用いた亀裂先端近傍における転位ネットワークの初期形成過程の解明

大阪大学 田 中 智 貴 君,芹 澤 愛 君,萩 原 幸 司 君,中 野 貴 由 君

17. 水熱処理により形成した凹凸構造によるIZO 導電膜の高透過率化

東京理科大学 長 目 拓 也 君,春 本 高 志 君,石 黒 孝 君

18. 基板表面形状を利用した骨芽細胞配列化制御

大阪大学 西 川 泰 紀 君,松 垣 あ い ら 君,當 代 光 陽 君,中 野 貴 由 君

19. LPSO 相を有するマグネシウム合金の高温における不均一変形挙動

九州大学 野 口 量 介 君,徳 永 尚 史 君,樋 口 成 起 君,森 川 龍 哉 君,東 田 賢 二 君

20. 高強度・高延性を有するFeCo基合金の磁気特性評価

熊本大学 野 中 良 太 君,松 田 光 弘 君,連 川 貞 弘 君,高 島 和 希 君,東北大学 藤 井 啓 道 君

21. 強相関電子系酸化物Sr1-xCexMnO3 におけるC 型軌道整列状態の結晶学的特徴

早稲田大学 花 岡 武 宏 君,日産アーク 井 上 靖 秀 君,早稲田大学 小 山 泰 正 君

22. HPT 加工によるバルクナノ結晶Si作製:付与ひずみ依存性

九州大学 早 野 一 紀 君,Kaveh Edalati 君,生 駒 嘉 史 君,堀 田 善 治 君,佐賀大学 齊 藤 勝 彦 君,郭 其 新 君

23. HAADF-STEM を用いたβ-Ti 合金におけるω相の観察

九州大学 吹 留 佳 祐 君,日本電子 奥 西 栄 治 君,九州大学 Sahar Farjami 君, 光 原 昌 寿 君,板 倉 賢 君,西 田 稔 君

24. 双晶変形を示すオーステナイト鋼における白色X 線を用いた応力解析

東北大学 堀 田 孝 治 君,藤 枝 俊 君,篠 田 弘 造 君,鈴 木 茂 君,
KITECH 權 義 杓 君,東北大学 佐 藤 成 男 君,
JASRI/SPring-8 佐 藤 眞 直 君,梶 尾 堅 太 郎 君

25. Li1-xFePO4 のリチウム挿入脱離挙動と微細構造解析

名古屋大学 本 田 善 岳 君,武 藤 俊 介 君,巽 一 厳 君,豊田中央研究所 近 藤 広 規 君,堀 渕 嘉 代 君,小 林 哲 郎 君

26. 生体用Co-Cr-Mo 合金の疲労変形に伴う突出し・入り込み形成とひずみ誘起マルテンサイト変態

東北大学 光 延 卓 哉 君,小 泉 雄 一 郎 君,千 葉 晶 彦 君

27. エアロゾルデポジション法による丸棒試験片へのNi 膜形成

龍谷大学 森 本 悠 平 君,森 正 和 君,今 村 成 君,
産業技術総合研究所 明 渡 純 君

28. 共析鋼におけるV の析出挙動

岡山大学 山 道 崇 幸 君,村 瀬 雄 紀 君,瀬 沼 武 秀 君,竹 元 嘉 利 君


第22回World Materials Day Award(日本金属学会)受賞者

World Materials Day Award ~ Congratulations!! ~
Winner
「チョロリンピック]

発表者 富山大学大学院理工学教育部 新 川 敬 之 君

共同応募者 富山大学大学院理工学教育部 佐 藤 誉 将 君

部門賞
第2 部門:学園祭やキャンパスオープンデー等での該当する展示物,作品等
「未来のための材料を楽しく体験しませんか?~世界に一台,手作り燃料電池キャリアカー~」

発表者 新潟大学工学部 榎 本 剣 君

共同応募者 新潟大学自然科学研究科 宮 島 優 君 工学部 関 谷 凛 太 郎 君

「Al 昆虫のアルマイト処理」

発表者 新潟大学工学部 新 田 拓 也 君

共同応募者 富山大学工学部材料機能工学科 
深 見 舞 君 松 並 将 弘 君 山 岸 晃 大 君







~2013年3月27日(水)東京理科大学神楽坂キャンパスに於いて、下記の方々が受賞されました。
おめでとうございます。~


第58回 日本金属学会賞 受賞者(2013年3月27日)

東北大学名誉教授 石 田 清 仁 君

  石田清仁君は、昭和49年東北大学大学院工学研究科金属材料工学専攻博士課程修了後、大同製鋼株式会社(現大同特殊鋼株式会社)へ入社。昭和57年に同社を退社し、4月東北大学工学部助教授を経て、平成5年4月東北大学教授に就任した。平成22年3月定年退職後、現在は東北大学名誉教授である。独立行政法人日本学術振興会合金状態図第172委員会委員長を平成13年より10年間務め、平成19年には社団法人日本金属学会会長に就任するなど材料工学の発展に貢献している。
  主な研究業績は以下の通りである。
(1)合金状態図の熱力学的データベース構築
  多元系合金の状態図を計算、予測するために、CALPHAD(Calculation of Phase Diagrams)法によって鉄鋼、Cu基、Co基、はんだ、化合物半導体のデータベースを世界に先駆けて作成した。これらのデータベースは、材料開発に不可欠な道具として国内外の多くの企業や大学が導入し、広く利用されている。
(2)鉄鋼材料
 1)2相鋼の合金設計の基礎となるフェライト(α)とオーステナイト(γ)の平衡について熱力学的解析を行い、特にα相の磁気変態がα/γ平衡だけでなく、積層欠陥エネルギーやマルテンサイト変態に対しても大きな影響を及ぼすことを示した。
 2)分散組織や2相混合組織の粒成長について実験及びシミュレーションによる研究を行い、ピン止め効果を定量的に示した。
 3)鉄鋼中のMnS、CrS、TiS等種々の硫化物の生成とその形態について系統的研究を行い、サルファイドメタラジーの基礎を築いた。
(3)超耐熱合金
 1)Ni基超耐熱合金の主要構成相であるfcc不規則γ相とL12構造のγ’規則相、さらにコーティング相として使用されるB2構造β相に関する相平衡を実験的に決定するとともに、その熱力学的解析を行った。これらはNi基超耐熱合金の合金設計に極めて有用な基礎データとなった。
 2)Co-Al-W系において、L12構造の金属間化合物Co3(Al、W)を発見すると共に、γ + γ’合金が高温強度に優れることを示しCo基スーパーアロイの基礎を築いた。
(4)磁性及び形状記憶合金
 1)ハードディスクの高密度磁気記録媒体として使われているCo-Cr基合金や、スピノーダル磁石合金であるアルニコ、Fe-Cr-Co系合金、磁歪材料であるFe-Ga合金等多くの磁性材料の相安定性について熱力学的解析を行い、磁気変態や規則―不規則変態が2相分離や相平衡に大きな影響を及ぼす事を明らかにした。
 2)Ni基、Cu基、Co基、Fe基系で、強磁性、高加工性、高温駆動など従来に無い新しい機能や特徴を持つ形状記憶合金を多数発見した。特にNi-Mn-In系では、メタ磁性型形状記憶効果を見出した。さらに、Fe-Ni-Co-Al基合金のγ → α’変態やFe-Mn-Al基合金のα → γ’マルテンサイト変態を利用し、Fe基合金で初めて5%~13%もの超弾性特性を有する形状記憶合金を開発した。
(5)工業化及び商品化
 1)マイクロソルダー熱力学データベース:エレクトロニクス実装で重要なはんだ合金の合金設計に不可欠な融点や、凝固シミュレーションが出来るデータベースを世界に先駆けて構築し、ADAMIS(Alloy Database for Micro-Solders)の商品名で、国内外で利用されている。
 2)Pbフリー快削鋼の実用化:Tiの炭硫化物を利用した快削ステンレス鋼や磁性合金、さらにCrSを利用した低合金Pbフリー快削鋼を開発し、実用化に成功した。
 3)Cu基超弾性合金および高強度・高導電Cu基合金の開発:Cu-Al-Mn超弾性合金の製造技術を企業へ技術移転し、巻爪矯正器具を製品化した。また、高強度・高導電のCu-Ni-Al基合金を開発し、サスペッション、ワイヤーへの実用化に成功した。
 4)Co基超耐熱合金の開発:Co-Al-W基合金で見出したL12構造のCo3(Al、W)金属間化合物で強化したCo基スーパーアロイを開発し、摩擦撹拌接合(FSW)用ツールとして実用化した。



第14回 日本金属学会学術功労賞 受賞者(受賞者4名)(2013年3月27日)

東北大学 名誉教授 一 色 実 君

東北大学大学院 工学研究科 教授 川 崎 亮 君

東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 所長・教授 塙 隆 夫 君

九州大学大学院 工学研究院 主幹教授 堀 田 善 治 君




第54回 日本金属学会技術賞 受賞者(受賞者3名)(2013年3月27日)

[溶接性に優れたエネルギー用鋼材の開発]
新日鐵住金(株)鉄鋼研究所上席主幹研究員 小 川 和 博 君

  受賞者は、石油、ガス、電力等のエネルギー分野で使用される各種高性能鋼材に関し、溶接熱影響部の性能確保の視点からの鋼材成分の適正化研究や鋼材を活かすための適正溶接材料の設計・開発研究を行った。その成果により鋼材の高性能化と溶接性確保の両立を工業面で実現することに貢献した。石油掘削・輸送に用いられる高耐食性マルテンサイト鋼、二相ステンレス鋼の溶接性・溶接施工法を冶金的立場から考究し、火力発電プラント用高強度フェライト鋼、オーステナイトステンレス鋼において溶接継手強度と組織の長時間安定性に対して、材質設計指針を明らかにして苛酷条件下で使用可能な種々の新しい鋼の開発に大きく貢献した。

[ミクロ組織制御による構造用高性能金属材料の開発]
JFEスチール(株)スチール研究所部長 三田尾 眞 司 君

  受賞者は、一貫してミクロ組織制御による構造用金属材料の特性改善を中心とした研究開発に取り組んだ。扱った材料は、チタン合金、アルミ合金やTiAl基金属間化合物などの非鉄金属材料から鉄鋼材料まで多岐にわたる。特に、(1)TiAl基金属間化合物の熱間加工と動的再結晶挙動、ラメラーの不連続粗大化挙動の解明(2)パーライトラメラーの究極の微細化による高性能レール鋼の開発(3)加速冷却後のオンライン誘導加熱プロセスを活用したタンク・建産機用高強度高靭性鋼板、建築用低降伏比780MPa級鋼の開発など、ミクロ組織制御による構造用金属材料の高性能化技術の発展に大きく貢献した。

[高効率精錬プロセス及び高純度鋼溶製技術の開発]
新日鐵住金(株)室蘭技術研究部主幹研究員 宮 本 健一郎 君

  受賞者は、溶鋼の二次精錬工程において一本足大径浸漬管と取鍋底部からのArガス撹拌との組み合わせた従来のRHやDHとは抜本的に技術概念の異なる新形状脱ガス炉(REDA)を開発し、高純度鋼の効率的な溶製技術を確立した。更に、フェライト系ステンレス鋼の転炉精錬における総合反応モデルの開発や、従来は被削性向上のために含まれていた鉛を廃し環境に配慮した低炭快削鋼及びその製造方法の開発、転炉型溶銑予備処理法における蛍石を用いない溶銑脱燐技術の確立など製鋼精錬プロセスの効率化や新技術・新商品の開発に大いに貢献した。



第63回 日本金属学会金属組織写真賞 受賞者(2013年3月27日)

最優秀賞 1件
[第1部門]光学顕微鏡部門
球圧子による純Mg単結晶の変形挙動

熊本大学大学院自然科学研究科助教 北 原 弘 基 君
熊本大学工学部技術専門職員 津志田 雅 之 君
熊本大学先進マグネシウム国際研究センター教授 安 藤 新 二 君

優秀賞 2件
[第1部門]光学顕微鏡部門
材料工学的手法に基づく骨系細胞の配列化制御

大阪大学大学院工学研究科特任研究員 松 垣 あいら 君
大阪大学大学院工学研究科助教 石 本 卓 也 君
大阪大学大学院工学研究科 藤 原 奈都子 君
大阪大学大学院工学研究科 田 口 大 誠 君
大阪大学大学院工学研究科教授 中 野 貴 由 君

[第2部門]走査電子顕微鏡部門
透過EBSD 法によるマルテンサイト鋼の微細構造の観察

(株)TSLソリューションズ代表取締役 鈴 木 清 一 君




第44回 日本金属学会研究技術功労賞 受賞者(受賞者11名)(2013年3月27日)

(株)日鐵テクノリサーチTS事業部総合試験課班長 相 蘇 勝 弘 君

  受賞者は、昭和47年に新日本製鐵(株)に入社以来41年間にわたり、製鉄設備の改善及び鉄鋼製品の研究試験業務に従事し、製鉄設備の高機能・長寿命化、研究試験装置の新規立ち上げと作業安全性向上、さらには超大型破壊試験の高精度化・高効率化を進め、新商品開発に繋がる評価試験技術の確立に多大な貢献を果たしてきた。特に世界最大級の8000トン破壊試験装置の脆性き裂アレスト試験では、試験温度の高精度化などの創意工夫を進め、複雑な破壊現象の解明に大きく寄与した。また、後進の育成指導や技能伝承にも熱心に取り組むなど、研究開発への功績は極めて顕著である。

東北大学多元物質科学研究所技術専門員 伊 東 益 雄 君

  受賞者は、昭和50年に東北大学選鉱製錬研究所(現、多元物質科学研究所)に奉職以来37年に渡り技術専門員として教育研究支援業務に従事し、実験や解析等の技術面から教育研究を支援してきた。主な業績としては、複雑硫化鉱の亜硫酸浮選における固液界面の吸着現象、界面活性剤の化学反応機構の解明等の支援が挙げられる。また、X線光電子分光、オージェ電子分光、二次イオン質量分析等による分析業務にも携わり、各分析への創意工夫により多くの成果をあげた。これらの業務を通じた教育研究への功績は顕著である。

大阪大学大学院工学研究科工学技術長 大 道 徹太郎 君

  受賞者は、昭和48年大阪大学工学部に任官以来31年間にわたり鋳造技術の研究支援を行い、昭和56年に金属学会論文賞を受賞した。さらに凝固現象の解析のためにX線透過観察の技術支援などを積み重ね、凝固計算技術の検証・発展に寄与した。平成16年からは触媒材料開発にも携わり、鉄鋼スラグによる触媒担体の開発など学術論文発表に貢献した。あわせて平成19年より技術部で技術班長、副工学技術長を歴任し、平成24年4月からは工学技術長として技術部の運営と共に後進の育成にも取り組んでいる。

名古屋大学工学部技術専門職員 纐 纈 明 三 君

  受賞者は、昭和48年名古屋大学工学部に任官されて以来40年間にわたり、実験装置の製作や各種試験片の加工などの機械加工業務を始め、学生への安全教育や工作実習など、研究教育に対する技術的支援において多大な貢献をした。特に、鋳造工学の分野では、独創的なダイカストマシンを自作するなど教員や学生と一緒に研究に携わり、研究成果の大きな進展に貢献した。また、ワイヤカット放電加工機の導入に伴い、責任者として自らの加工技術の研鑽により特殊材料の加工を可能にして研究支援の範囲を拡大するなど、その功績は顕著である。

三島光産(株)機工事業本部職長 三 宮 利 宏 君

  受賞者は、入社以来31年間に亘り、製鉄用連続鋳造鋳型内壁のめっきコーティング開発を始めとして、自動車・航空宇宙・電子部品向けのめっき金型製作など、社内における数多くのめっき関連業務に従事してきた。開発の遂行に当たっては、試験設備の製作立ち上げから、サンプル製作、評価に至るまでを自身で一貫遂行し、またその信頼性も非常に高いものである。このような開発品の確立は、本人のめっき職人としての高い技術・技能なくして成しえなかったものであり、その功績は非常に顕著なものである。

東北大学大学院工学研究科技術専門職員 相 馬 才 晃 君

  受賞者は、昭和42年に東北大学工学部に奉職以来45年余にわたり、マテリアル・開発系の研究室に所属し、ステンレス鋼をはじめとする各種金属およびセラミックス材料の腐食機構の研究業務に携わり、また学生に対する電気化学測定技術、データ整理・解析方法の指導を行ってきた。特に、高温高圧水用の銀・塩化銀照合電極、固体電解質隔膜型照合電極およびpHセンサーの設計と試作において卓越した技能を発揮し、その成果は多数の学会発表および学術論文として結実したことから、同人の功績は極めて顕著である。

ニッテツテクノ&サービス(株)試験部主任 土 井 一 男 君

 受賞者は、昭和50年に新日本製鐵(株)(現、新日鐵住金(株))に入社以来36年余にわたり、製鋼工場及び室蘭技術研究部において研究試験作業に従事し、その間、プロセス開発や新商品開発に関わる金属組織評価を行ない、研究開発支援の面で極めて大きな貢献を果たした。SEMによる高倍率観察技術や微小介在物の高精度な分析技術に加え、EBSDによる微細金属組織の観察や介在物などの各種観察、分析技術を確立すると共に、その効率化や精度向上に努力を重ね、生産性、質ともに極めて高いレベルまで向上させた。

JFEスチール(株)スチール研究所主任部員 藤 森 栄 一 君

  受賞者は、昭和49年に日本鋼管(現JFEスチール)(株)に入社し、建築・造船用厚板鋼板、大径溶接鋼管(UOE鋼管)用厚鋼板、ステンレス鋼、レール等の各種鋼材の確性・腐食業務を30年間担当し、新商品開発に多大な貢献をした。特に世界初のオンライン加冷却設備の開発立ち上げ時は、レーザー変位計を用いての鋼板のひずみ測定などの実製造ライン試験に従事し、鋼板の反り防止技術の構築に貢献し、新プロセスを有効活用できる新技術確立の一翼を担い、その功績は顕著である。

(株)豊田中央研究所金属材料研究部 堀 田 昇 次 君

  受賞者は、入社以来41年間、一貫して鉄鋼材料・軽金属材料の強度評価に従事し、自動車用材料の各種強度試験を実施することにより自動車の性能向上に大きな役割を果たしてきた。貢献した主な業績は、各種成形工具用VC被覆鋼やエンジンバルブ用高性能チタン材料、ハイブリッド車のリアクトル用高性能圧粉磁心の実用化、およびエンジンや駆動系の機械要素の強度設計技術の向上が挙げられる。同時に、新試験法の開発や材料試験技術の向上に取り組み、最近では、将来のものづくりを支える後継者を積極的に育成している。

マツダ(株)技術研究所アシスタントマネージャー 槇 前 辰 己 君

  受賞者は、入社以来42年間にわたり、一貫して自動車エンジン主要部品のボルト締結に関わる鉄鋼材料と締め付け技術の研究開発業務に従事し、延べ30機種以上のエンジンの性能および品質向上を支えてきた。例として、ボロン鋼ボルトを開発する過程において、遅れ破壊を評価するための試験装置と治具を自らの創意工夫により作製するなど、その実用化に大いに貢献した。また、最近では、自ら構築してきた技術と経験を研究開発部門および生産部門の若手技術者に積極的に伝承しており、その功績は顕著である。

新潟大学工学部技術専門職員 柳 沢 敦 君

  受賞者は、昭和54年に新潟大学工学部に奉職以来33年間に渡り金属材料研究室および工業材料研究室の技術職員として教育研究支援業務に従事してきた。当初は疲労試験装置などの製作や検鏡用試料の作製などを担当した。渡辺健彦研究室に配属後、同教授退職までは、ろう接合装置の設計・製作などに携わり、アルミニウム合金の固相接合において回転ピンの通過位置の最適化などの評価・調整法において多大な成果を挙げた。また、技術部の地域貢献活動でも積極的な役割を担っている。この様に、同人の功績は顕著である。



第71回 日本金属学会功績賞 受賞者(受賞者8名)(2013年3月27日)

[物性部門] 東北大学大学院工学研究科准教授 手 束 展 規 君

  受賞者は、スピントロニクス分野の研究を先駆けて行い、これまで(1)室温トンネル磁気抵抗効果の実現、(2)高スピン分極率材料の創成など、スピン伝導現象の発現・解明に関する研究を行い、その特性向上に大きく貢献した。具体的には、世界で初めて室温で10%以上のトンネル磁気抵抗比を得、また、ホイスラー合金を用いた接合でトンネル磁気抵抗効果の観測に成功し、室温においても高いスピン分極率を示すホイスラー合金薄膜を開発した。最近では、これらの成果をスピン注入技術などの重要な研究へと展開し、今日のスピントロニクス分野に貢献している。

[組織部門] 東北大学大学院工学研究科准教授 須 藤 祐 司 君

  受賞者は、状態図を基にした合金設計・組織制御を駆使し、機能材料・構造材料の高性能化・高強度化に関する研究に従事してきた。特に、新規形状記憶合金(SMA)の開発と組織制御による高性能化について取り組み、中でも実用を視野に入れた高加工性Cu-Al-Mn系超弾性合金について優れた成果を挙げ、Cu系SMAの医療分野への応用を開拓した。最近では、薄膜材料の組成設計、組織制御、界面反応に関する研究に取り組み、相変化メモリや低摩耗硬質被膜といった新規機能性薄膜の開発を進めている。

[力学特性部門] 物質・材料研究機構主幹研究員 森 田 孝 治 君

  受賞者は、構造用セラミックス材料の研究、特にZrO2の超塑性変形機構の解明に取組み、歪の精密計測と変形中の組織変化を考慮して新規な変形機構の提案に至るとともに、発現機構に基づいた高速超塑性セラミックスの実現に至った。近年は、放電プラズマ焼結(SPS)法の焼結機構の解明を通し、力学特性や光学特性などを重畳した高・多機能構造セラミックスの開発にも成功している。その研究内容は基盤研究にとどまらず、基礎知見をもとに新材料開発や創製などにも目をむけ精力的に研究に取組んでいる。

[材料化学部門] 大阪大学大学院工学研究科准教授 小 野 英 樹 君

  受賞者は、鉄鋼製錬・精錬ならびにリサイクルプロセスにおける高温材料物理化学の研究に取り組んできた。Fe-Cu(, Sn)混合スクラップのリサイクルに関する研究では、2液相分離を利用して効率的にCu(, Sn)を分離・回収し、またFeを鉄源として回生する手法を提案した。また、溶鉄中の非金属介在物ならびに溶鋼成分の精密制御に関わる熱力学・速度論的研究、さらに低鉄品位鉄鉱石の使用に対応した焼結鉱の高炉内還元・浸炭反応の解析に関する研究などを行い、資源利用拡大ならびに環境調和型高温材料プロセスの構築に貢献している。

[材料プロセシング部門] 名古屋大学エコトピア科学研究所准教授 黒 田 健 介 君

  受賞者は、湿式や乾式のプロセスを駆使し、金属表面に各種の機能性皮膜を作製する研究に取り組んできた。具体的には、溶融塩電解プロセスによる合金薄膜の作製や、各種の湿式プロセスによる生体材料用チタン表面への骨伝導性物質コーティングを行ってきた。特に、生体材料の研究においては、作製した材料の動物埋植評価によって、従来は考えられてこなかった骨伝導性に影響を及ぼす種々の因子について明らかにしてきた。最近は、表面・界面制御に立脚した新たな電池部材の開発などの研究も進めている。

[工業材料部門] 東北大学大学院工学研究科准教授 亀 川 厚 則 君

  受賞者は、高性能水素吸蔵合金の開発および水素処理による合金の微細組織の変化と機能向上に関する研究に従事してきた。水素貯蔵材料などの新しい材料探索手法として超高圧合成法を当該研究分野に導入し、状態図にはない多数の新規化合物の合成を報告してきた。また、合金の水素化による不均化反応とその微細組織変化に着目し、水素中熱処理によりチタン銅など実用合金の機械的強度や電気伝導率の向上に成功するなど、水素利用技術による工業材料の発展に大きく貢献している。

[工業材料部門] 筑波大学数理物質系物質工学域准教授 金 熙 榮 君

  受賞者は、形状記憶合金、チタン合金および金属間化合物に関する研究・開発に取り組んできた。特に、Ti基合金のマルテンサイト変態挙動、変形機構、結晶学など基礎研究を系統的に行ってきた。各添加元素がTi合金の結晶構造、変態・変形挙動に及ぼす影響を明らかにし、生体に安全な元素のみで構成され優れた超弾性を示す様々な新たな超弾性合金系を見出した。最近では、応力誘起相変態を利用する組織制御に着目し、結晶粒径微細化および集合組織制御技術の開発にも取り組んでいる。

[工業技術部門] 新日鐵住金(株)鉄鋼技術研究所上席研究主幹 富 田 俊 郎 君

  受賞者は、磁性材料や自動車用鋼板の開発研究に従事し、二方向性電磁鋼板や微細粒薄鋼板などの新しい製法を見出した。また、集合組織、相変態、非晶質遷移に関する分野でも、斬新なアイデアに基づく先進的かつ細密な研究を行い、これら分野の発展に大きく寄与している。最近では、γからαへの相変態、もしくはその逆変態に伴う集合組織の発達について研究し、新しいバリアント選択則を導入した精度の高い変態集合組織の予測法を開発している。



第52回 日本金属学会谷川・ハリス賞 受賞(受賞者4名)(2013年3月27日)

[不均一組織制御による薄鋼板の高機能化に関する研究]

新日鐵住金(株)技術開発本部フェロー 潮 田 浩 作 君

  受賞者は、鉄鋼材料における不均一現象に着目した基盤研究に取り組み、組織と特性の制御に関し独創的な成果を挙げた。(1)せん断帯及びC-Mn複合体による回復・再結晶・集合組織制御、(2)AlN/MnS複合析出と熱間脆化、及び初晶Al優先核生成と凝固組織制御、(3)α域でのC-X相互作用とC固溶限、(4)低合金TRIP鋼の特性制御である。これらの成果は自動車用薄鋼板の体系化、連続焼鈍プロセスの基本設計指針や新溶融めっき鋼板の実用化に反映されており、本分野の進歩発展に貢献した。産学連携への地道な活動も特筆される。
[環境対応高温半導体用独創的配線・実装材料の開発に関する研究]

茨城大学工学部教授 大 貫 仁 君

  受賞者は、(1)半導体デバイスと電極とのアルミニウムによるオーミックコンタクトの研究、(2)高信頼・高性能Cuボールボンデイング技術に関する研究、(3)高温半導体デバイスを実現するための高信頼性太線アルミ合金ワイヤボンデイング技術、(4)超塑性現象を利用した高温Pbフリーはんだ材料およびこれを用いたボイドフリー接合プロセス技術の研究、ならびに(5)次世代超高速・低消費電力LSI用の極低抵抗率Cu配線材料の研究・開発に従事し、環境に適合した半導体デバイスの高性能化・高信頼化に大いに貢献した。
[金属リサイクルにおけるハロゲン化合物の物理化学とプロセス開発]

東北大学多元物質科学研究所教授 中 村 崇 君

  受賞者は、金属製錬工学で応用されてきた化学熱力学が廃棄物処理における焼却、溶融プロセスの基礎研究に大変効果的に応用できることを示し、また金属製錬プロセスを基礎としたリサイクル工学の確立に大きな貢献を行った。特にスクラップや廃棄物からの金属リサイクルを行う場合は、ダイオキシンの発生抑制ならびに水素化ハロゲンの制御など、そのプロセスにおけるハロゲンの挙動を把握し、制御することが重要であり、そのための物理化学的解析に顕著な貢献を行なっている。
[形状記憶合金の微細構造解析と相変態・組織制御に関する研究]

九州大学大学院総合理工学研究院教授 西 田 稔 君

  受賞者は、一貫して形状記憶合金の微細構造解析、相変態機構の解明と特性改善のための組織制御に取り組んできた。その間、Ti-Niをはじめとする種々の合金のマルテンサイト(M)相の双晶モードと界面構造の実験的解明、Ti-Ni合金のB19’M相の自己調整構造の体系化、Ni過剰Ti-Ni合金の析出過程の解明と析出相の配向制御による二方向形状記憶特性の付与、実用レベルに達するNiフリーTi-Mo系形状記憶合金の開発などの成果を挙げ、M変態と形状記憶効果の学理の発展に貢献した。



第19回 日本金属学会増本量賞 受賞者(2013年3月27日)

[準結晶物質の確立と材料への展開]

東北大学多元物質科学研究所教授 蔡 安 邦 君

  受賞者は、多くの安定な準結晶を発見することで、準結晶という物質を確立したほか、準結晶の安定性の起源は合金の電子構造に由来することを明らかにした。また、多くの良質な準結晶の発見で構造解析と物性解明を可能にし、これらの成果は“準結晶発見”で2011年ノーベル化学賞の授賞に大きく貢献した。さらに準結晶に優れた触媒機能を有することを発見したとともに、金属学に基づく触媒研究という新しい分野を開拓した。



第18回 日本金属学会若手講演論文賞 受賞者(受賞者3名)(2013年3月27日)(掲載号順)

1.パラジウム系水素透過合金膜の耐久性に及ぼす周期表第5族および第6族金属の添加効果(日本金属学会誌76巻10号)

(株)大同分析リサーチ分析試験部 ○木村 彩香 君
鈴鹿工業高等専門学校 有馬 義貴 君
鈴鹿工業高等専門学校准教授 南部 智憲 君
名古屋大学大学院工学研究科助教 湯川 宏 君
大分工業高等専門学校教授 松本 佳久 君

2.Transmission Electron Microscopy Study of Precipitation Behaviors in Cu-15mass%Sn Alloy Annealed at 593 K (Materials Transactions,Vol53,No.9)

東北大学金属材料研究所・北京航空航天大学 ○王 曾潔 君
東北大学金属材料研究所教授 今野 豊彦 君

3.In-Situ Evaluation of Detwinning Behavior in Extruded AZ31 Mg Alloy by AE(Materials Transactions,Vol53,No.9)

東京大学大学院工学系研究科 ○安富 隆 君
東京大学大学院工学系研究科教授 榎 学 君




第21回 日本金属学会・日本鉄鋼協会 奨学賞 受賞者 49名

北海道大学 工学部 応用理工学科 金谷寿浩

北海道大学 工学部 応用理工系学科 鈴木詩織

室蘭工業大学 工学部 機械航空創造系学科 太田智之

岩手大学 工学部 マテリアル工学科 菅原みどり

秋田大学 工学資源学部材料工学科 大宮裕之

東北大学 工学部 材料科学総合学科 赤城拓馬

東北大学 工学部 材料科学総合学科 高橋星也

東北大学 工学部 材料科学総合学科 中川卓也

東北大学 工学部 材料科学総合学科 平島哲矢

茨城大学 工学部 マテリアル工学科 菅原篤史

茨城大学 工学部 マテリアル工学科 鈴木善貴

筑波大学 理工学群・ 応用理工学類 根来直弥

東京大学 工学部 マテリアル工学科 戸川遥絵

東京大学 工学部 マテリアル工学科 平井悠久

東京工業大学 工学部 金属工学科 大阪太郎

東京工業大学 工学部 金属工学科 平井亮士

横浜国立大学 工学部 生産工学科 野口絢子

長岡技術科学大学 工学部 機械創造工学課程 渡辺弘和

富山大学 工学部 材料機能工学科 丸野 瞬

豊橋技術科学大学 工学部 生産システム工学課程 安道直幸

名古屋大学 工学部 物理工学科 鈴木飛鳥

名古屋大学 工学部 物理工学科 古嶋佑帆

名古屋工業大学 工学部 環境材料工学科 紅谷祐貴

京都大学 工学部 物理工学科 岡本弘晃

京都大学 工学部 物理工学科 橋本大輝

大阪大学 基礎工学部 電子物理科学科 中谷泰博

大阪大学 工学部 応用理工学科 宮川敦士

大阪大学 工学部 応用理工学科 山口貴士

島根大学 総合理工学部 物質科学科 三村直樹

香川大学 工学部 材料創造工学科 濱本汰一

愛媛大学 工学部 機能材料工学科 山崎寛大

九州大学 工学部 物質科学工学科 秦 謙太郎

九州大学 工学部 物質科学工学科 森田雄介

九州工業大学 工学部 マテリアル工学科 古川立樹

長崎大学 工学部 材料工学科 野崎修平

熊本大学 工学部 マテリアル工学科 村田充史

大阪府立大学 工学部 マテリアル工学科 福井皐丈

兵庫県立大学 工学部 応用物質科学科 松本章央

千葉工業大学 工学部 機械サイエンス学科 佐藤良輔

東京理科大学 基礎工学部 材料工学科 蜂屋はるな

芝浦工業大学 工学部 材料工学科 小川賢介

東海大学 工学部 材料科学科 山崎由晃

関西大学 化学生命工学部 化学・物質工学科 高橋卓矢

近畿大学 理工学部 機械工学科 福山修平

福井工業大学 工学部 機械工学科 塩入翔也

石巻専修大学 理工学部 情報電子工学科 砂金恒平

群馬大学 工学部 機械システム工学科 圖子田幸佑

鈴鹿工業高等専門学校 応用物質工学専攻 庄司衣友弓

仙台高等専門学校 生産システムデザイン工学専攻 片岡絋平




~2013年3月28日(木) 東京理科大学神楽坂キャンパスにおいて、下記の方々が優秀ポスター賞を受賞
されました。おめでとうございます。~



第20回 優秀ポスター賞受賞者 19名(2013年3月28日発表)(五十音順)


分子動力学法を用いた FeSi 合金の粒界における転位放出過程の研究
大阪大学 井上祐太郎君,林 雄一郎君,譯田真人君,君塚 肇君,尾方成信君
HPT 加工・焼鈍による高圧 β 相の相変態挙動
豊橋技術科学大学 井戸畑拓真君,足立 望君,池谷雅典君,栃木敦博君,戸高義一君,梅本 実君,九州大学 光原昌寿君
Fe2 wt.%Cu 合金の冷間圧延による組織変化
九州大学 今村亮祐君,波多 聰君,池田賢一君,中島英治君,山本信次君,土山聡宏君,赤間大地君,横浜国立大学 諸岡 聡君,バージニア工科大学 村山光宏君
TiMoZrSn 合金のマルテンサイト変態に及ぼす Zr および Sn 濃度の影響
東京工業大学 遠藤一輝君,田原正樹君,稲邑朋也君,細田秀樹君,筑波大学 宮崎修一君
1800℃における Mo5SiB2 単相組成の検討
北大学 金子昂弘君,原  崇君,中村純也君,吉見享祐君,丸山公一君
セラミックスの自己き裂治癒における改変機構の解明
横浜国立大学 鴨田紀一君,長田俊郎君,高橋宏治君,物質・材料研究機構 原 徹君
表面特性制御による陽極酸化 TiO2 皮膜の骨伝導性変化
名古屋大学 榊原正男君,黒田健介君,興戸正純君
CrN 系化合物における高硬度化および高電気伝導化
長岡技術科学大学 佐藤蒼生君,遠藤稔之君,鈴木知真君,鈴木常生君,中山忠親君,末松久幸君,新原晧一君
部分安定化ジルコニアセラミックスとチタン合金の活性金属接合 ―反応層の構造と成長挙動(I)―
北海道工業大学 渋谷幸太郎君,齋藤 繁君,見山克己君,高島敏行君
透過型電子顕微鏡法による Fe3O4 磁性微粒子の構造・形態評価
東北大学 竹野雄夢君,村上恭和君,進藤大輔君,Washington Univ. R. Matthew Ferguson 君,Kannan M. Krishnan 君
純マグネシウムの結晶粒径と変形挙動の相関
久留米工業高等専門学校 谷 啓貴君,周 致霆君
SUS304 における加工誘起 α′相の生成過程の放射光回折実験
大阪府立大学 長里晋平君,森 茂生君,久保田佳基君,佐藤洋平君,新日鐵住金ステンレス 秦野正治君,日本原子力研究開発機構 菖蒲敬久君
電析 NiW ナノ結晶合金の機械的性質に及ぼす攪拌処理の影響
兵庫県立大学 中山翔太君,岡本佳奈君,鍋島隆行君,足立大樹君,山崎 徹君
TPM での表面改質による ZrO2 ナノ粒子の分散性向上と蛍光特性
久留米工業高等専門学校 橋本翔太朗君,山崎有司君,松山 清君,奥山哲也君,豊橋技術科学大学 武藤浩行君
γ 線照射励起還元法を用いた Cu 系ナノ微粒子の合成
大阪府立大学 堀 達朗君,岡本晃彦君,永田光一郎君,岩瀬彰宏君,堀 史説君
生体親和性(K, Na)NbO3/HAp 複相圧電材料の創成,組織制御
大阪大学 堀内一宏君,萩原幸司君,松垣あいら君,中野貴由君
CoZrB 系合金急冷薄帯の微細構造と磁気特性
九州大学 本田拓海君,本村俊一君,板倉 賢君,西田 稔君,千葉工業大学 齋藤哲治君
高強度・高耐食性 Mg/LPSO 二相 Mg(Zn/Al)Gd 合金の開発
熊本大学 松本正俊君,山崎倫昭君,河村能人君,大谷 学君,北海道大学 幅崎浩樹君
MoSiB 合金の組織形成と高温強度に及ぼす D88 型シリサイド安定化元素の効果
東北大学 森山貴裕君,金今大樹君,吉見享祐君,丸山公一君
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