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- 2016年度 受賞者
表彰(日本金属学会)
下記の方々が受賞されました。おめでとうございます。~
第61回日本金属学会賞 贈呈式 (2016年3月23日)
八戸工業高等専門学校校長・東北大学名誉教授 岡田益男 君
岡田益男君は、1978年カリフォルニア大学バークレー校博士課程修了後、1979年東北大学工学部に助手として奉職し、その後、助教授を経て、1993年東北大学教授に就任した。
2013年に退職後、八戸工業高等専門学校長として赴任し、現在に至っている。
この間、科研費特定領域研究A「サブナノ格子物質におけるプロチウム新機能」研究代表者、総合科学技術会議材料検討委員会主査、日本学術会議第22期会員(第三部会)などを歴任し、材料工学の発展に貢献した。
主な研究業績として、水素吸蔵合金を主とした幅広い機能材料の分野において、組織と特性の関係を明らかにし、材料の高機能化や新規材料の創出に貢献している。
具体的にはBCC系水素吸蔵合金において100°C以下で3mass%に達する水素吸放出を達成し(下記1)、超高圧法によりMgやLi系新規水素化物と金属間化合物の合成に成功している(下記(2))。
さらに、水素中熱処理によりMg、Al、Cu系合金の微細組織を制御し、強度を向上させる(下記(3))など、金属材料における水素の有効利用という新たな学問領域を開拓したことなどが挙げられる。
(1) 3mass%の水素を吸放出するTi-V-Cr系BCC合金の開発
水素エネルギー社会に向けて、高容量な水素吸蔵合金の開発が望まれている。
V系合金やMg系合金が知られていたが、高い吸蔵量と低い作動温度の両者を満足する合金は開発されていなかった。この要請に対し、BCC合金に着目し、100°C以下で3mass%の水素吸放出が可能なTi-5V-57.5Cr合金を開発した。この水素吸放出量は、現在でも100°C以下でのチャンピオンデータである。さらに、高価なVを全く含有しないTi-Cr-Mo系等において同様に3mass%の吸放出が可能な合金を見出した。 高容量化の指針に関する論文では2005年日本金属学会論文賞を受賞している。
(2) 超高圧法による(Mg、Li)新規水素化物・金属間化合物の合成
高容量の水素化物を超高圧法により探索し、Mg系において25、Li系で7つの状態図にない新たな水素化物や金属間化合物を発見した。例えば、水素貯蔵量が高い材料としてMg2Li水素化物(>8 mass%)、新規な金属間化合物としてMgCuやMgNiが合成された。従来、超高圧法は合金探索にはほとんど利用されていなかった。その理由は、多くの合金は最密充填構造をとるため高圧により構造変化する余地はないと考えられていたからである。しかし、水素を含有する系や、圧縮率が大きい元素との組み合わせでは新化合物が得られると着想し、実際に合金開発における超高圧法の有効性を実証した。
(3)水素処理による(Mg、Al、Cu)系合金の微細組織制御と高機能化
Nd-Fe-B系永久磁石合金において水素を活用した結晶粒微細化(HDDR処理)法が報告されている。受賞者はこの手法が構造材料のAl合金、配線材料のCu合金等、主要元素が水素との親和力が弱い実用合金系にも適用可能であることを初めて見出した。具体的には、Cu-3mass%Ti合金の結晶粒径が水素吸放出により20~50nmにナノ微細化されることを見出した。これは従来技術により微細化されたCu合金と比較して一桁小さい粒径である。さらに、水素中熱処理では、合金の機械的強度と電気伝導率を同時に向上することができ、強度1100MPa、電気伝導度21-IACSを達成した。この知見は、時効析出型合金に水素処理を施すことで析出物をさらに微細化できる可能性を示唆し、他の合金系についても高強度化をもたらす熱処理として注目されている。
第57回 日本金属学会技術賞 受賞者(受賞者2名)(2016年3月23日)
[磁性材料及び磁気応用に関する研究開発]
新日鐵住金(株)先端技術研究所上席主幹 坂本広明 君
受賞者は、ミクロ組織の制御による高特性化によってモーターの高性能化や小型化、等に大きく寄与しているNdFeB系希土類磁石合金の特性改善の研究開発に従事した。また、鋼材のミクロ組織あるいは応力とバルクハウゼン現象との関係の基礎的な研究から、それを応用した鋼構造物の応力診断技術の研究開発にも従事してきた。その中で、ミクロ組織と磁気特性の関係の研究から、磁気応用技術としての実用化研究まで、その内容は当該分野の発展に大きく貢献した。
[原子・ナノ組織解析を活用した特殊鋼製品の開発]
新日鐵住金(株)先端技術研究所部長 佐野直幸 君
受賞者は、アトムプローブ法(APFIM)および透過電子顕微鏡法(TEM)による微細組織解析を通して、相変態と関連した鉄鋼材料の特性発現の機構解明に取り組み、種々の高性能鉄鋼製品の研究開発や実用化を推進してきた。中でも自動車用の特殊鋼製品の分野においては、破断分割製法で製造される高強度クラッキングコンロッド用鋼や、微量なMoを添加することで従来必須であった焼準処理を省略可能とした高強度軟窒化クランク用鋼の開発に従事し、それらは工業的に価値が高くまた学術的にも興味深いものである。
第66回 日本金属学会金属組織写真賞 受賞者(15名) (2016年3月23日)
最優秀賞 1件 (5名)[第1部門]光学顕微鏡部門
[六方晶マンガン酸化物における渦状ドメイン構造]
九州工業大学大学院工学研究院 准教授 堀部陽一 君
Ulsan National Institute of Science and TechnologyYoon Seok Oh 君
Seoul National University Seung Chul Chae 君
University of Science and Technology Beijing Xueyun Wang 君
Rutgers University Sang-Wook Cheong 君
[第2部門]走査電子顕微鏡部門
[SEM による磁気イメージング~環状検出器によるL10 型CoPt 合金の磁区構造観察]
九州大学大学院総合理工学府 赤嶺大志 君
九州大学大学院総合理工学府 奥村 聡 君
九州大学大学院総合理工学研究院 助教 Sahar Farjami 君
九州大学大学院工学研究院 教授 村上恭和 君
九州大学大学院総合理工学研究院 教授 西田 稔 君
[Ti-20Nb-0.7O 合金における等温a″マルテンサイトの生成・成長過程]
東京工業大学精密工学研究所 助教 田原正樹 君
東京工業大学精密工学研究所 准教授 稲邑朋也 君
筑波大学大学院数理物質科学研究科 教授 金 熙榮 君
筑波大学大学院数理物質科学研究科 特命教授 宮崎修一 君
東京工業大学精密工学研究所 教授 細田秀樹 君
第47回 日本金属学会研究技術功労賞 受賞者(受賞者10名)(2016年3月23日)
日鉄住金テクノロジー(株)君津事業所研究試験部 伊東和広 君
受賞者は、EPMAやX線回折法を用いて、鋼中の元素分布や集合組織、結晶構造および鋼材中の残留応力分布を明らかにすることに貢献してきた。特に、分析の定量性や分析の精度向上に積極的に取り組み、試料作製の創意工夫や作業効率の向上に努めてきた。さらに、日々進歩する測定・解析技術にも対応し、具体的には、2u-sin 2Ψ法による応力測定技術やX線集合組織解析におけるODF(結晶方位分布関数)対応など、常に最新データを出し続けてきたことは特筆すべきものである。
東北大学多元物質科学研究所技術室 柏原守好 君
受賞者は、1971年東北大学科学計測研究所(現多元物質科学研究所)に入所以来42年にわたり新規科学計測手法の研究・開発に対する技術支援の中心的存在として教育研究を支えてきた。特に、レーザー分光用超電導マグネット、ツェルニーターナー型トリプルモノクロメーター、内殻励起分子動力学実験装置など大型および微細分光装置開発に多大な寄与をした。また精密機械加工技術、超高真空容器に係る接合技術の開発にも先導的な役割を担うなど、先端計測機器開発や材料研究の発展に大きく貢献した。
新日鐵住金(株)広畑製鐵所設備部 構 雅敏 君
受賞者は、厚板工場に9年、設備技術部門に37年間在籍し、操業知識と開発業務経験を有効に活かして数多くの技術開発に果敢に挑戦し、製鐵所の各ラインの操業安定化・品質改善や、新商品の開発等に大きく貢献した。主な例として、電気制御技術を応用した鋼板静電気除去技術の開発、磁力線による鋼板蛇行防止技術の開発、多目的実験用の鋼板連続通板パイロットラインの開発等が挙げられる。また、後進の育成にも注力する等、社業の発展への寄与も大きく、その功績は顕著である。
金沢大学技術支援センター 菊地遵一 君
受賞者は、技術支援センターの技術職員として、39年間にわたり金属加工技術の向上に取り組み、その技術を用いて多くの教職員に対する技術支援に尽力し、多くの研究成果に多大なる貢献を行ってきた。その中で特筆すべきは、強い探究心をもってこれまでに蓄積された技術を駆使し一連の紐結び装置を10年にわたって教員と共同で開発を行い、その間特許も取得したことが挙げられる。さらに若手の技術職員に長年にわたり3D-CADなどを駆使した金属加工の指導にもたゆまない努力を行ってきた。
東京大学大学院工学系研究科 杉田洋一 君
受賞者は、28年間にわたり、各種のオリジナリテイーに富むプラズマプロセス装置の作製、冷却部に精密な加工を必要とするコールドクルーシブルの製作など、多様な研究室からの実験装置の設計、製作、改良、実験試料の加工などの要望に丁寧に対応し、自ら工夫した工作法で研究者の要望を取り入れた装置の製作に携わり、それぞれの分野の研究進展を支えてきた。学科内の教育に関しては、CAD・CAMの授業、機械工作演習などを担当するとともに、研究・実験の安全教育の講師を担当するなど学生に対する教育面での貢献も大きい。
JFE スチール(株)スチール研究所鋼管・鋳物研究部 高橋寿夫 君
受賞者は、入社以来30年以上にわたり、鋼管製品の研究開発のための各種実験、材料試験、利用加工評価実験を担当し新プロセス・新商品開発の研究補助業務に広く従事した。例えばステンレス継目無鋼管のマンネスマン方式による製造技術開発実験や、世界初の4ロール電縫鋼管絞り圧延実験の実施、加えて様々な加工評価試験の主導による高機能自動車用電縫鋼管開発の一翼を担った。現在は研究開発の実験リーダーとしてグループを指揮しつつ後輩育成にあたり、安全・衛生等に及ぼす貢献は顕著である。
新日鐵住金(株)技術開発本部尼崎研究支援室 中手雅則 君
受賞者は、入社以来40年間にわたり一貫して材料研究開発に従事し、薄鋼板からTi、Zr、MgおよびAl等の非鉄合金まで、多種多様な金属材料の高機能化に大きく貢献した。純Tiの冷間圧延工程の合理化や、熱間プレス工法の工夫による部分強化した自動車の衝突安全用部材の開発など、材料の製造から利用技術に至るまで広範囲な成果をあげてきた。特に、手法が確立されていない研究開発業務の中で、幅広い知見と探究心で新たな実験・評価方法を考案し、多くの新材料・新製品の開発につなげた功績は顕著である。
鹿児島大学大学院理工学研究科技術部 前田義和 君
受賞者は、1980年4月1日に鹿児島大学工学部機械工学第二学科材料工学講座採用後、 一貫して鹿児島大学に勤務し、平成21年技術部システム情報技術系主任に昇格、2013年同技術班長に昇格した。長年に渡り、高機能高炭素鋼、特に「黒鉛鋼に関する研究」に、熱処理・試料研磨・組織観察、摩耗試験機作成など多岐にわたって作業面で多大な貢献をした。教育面においては、「機械工学実験」などで学生に指導あるいは補助業務を担当してきた。長年にわたって材料関係の研究および教育に取り組んできた業務は高く評価できる。
北海道大学大学院工学研究院技術部 宮﨑宣幸 君
受賞者は、約30年間にわたりTEM、SEMなどの電子顕微鏡、EPMA、XRF、XRDなどの元素分析・結晶構造解析装置、その他多くの機器の維持管理およびオペレータ業務に従事し、多くの教員や学生たちに対して技術指導を行ってきた。特に、EPMAについては、長年にわたるその分析技術の研鑽により、金属、合金、セラミックなど材料研究の分野において、多くの教員や研究者たちからこの上なく高い信頼と評価を集め、学内研究成果の結実にきわめて大きな貢献をした。
日鉄住金テクノロジー(株)富津事業所総合試験課 渡辺史朗 君
受賞者は、40年間にわたり鉄鋼製造と研究開発支援業務に従事し、材料評価装置の新規立ち上げと安全性の向上、また、評価技術の考案や標準化など、多岐におよぶ多大な貢献を果たした。特に、自動車用薄板材料の研究開発においては、薄板の高精度CAE解析のための材料パラメータ同定試験作業や高強度鋼板の伸びフランジ破断対策など、多くの重要な開発に関わり、何れも随所に創意工夫を発揮して成果に繋げた。現在は、さらに後進の育成指導や技能伝承にも熱心に取り組むなど、研究開発への功績は極めて顕著である。
第74回日本金属学会功績賞 受賞者(受賞者8名)(2016年3月23日)
[物性部門]
[金属ガラスの緩和・複合化および金属溶湯中での脱成分技術に関する研究]
東北大学金属材料研究所教授 加藤秀実 君
受賞者は、金属ガラスやアモルファス合金等の非平衡準安定金属材料の緩和現象およびその複合材料化プロセスに関する研究に従事してきた。主な業績として、金属過冷却液体の粘性流動の非線形化に関する研究、その場反応分散・急冷凝固プロセスによる金属ガラス複合材料の開発に関する研究である。また最近では、後者の研究を展開して金属溶湯中における脱成分技術を開拓し、種々の卑・半金属材料のオープンセル型ポーラス材料の開発に繋げたことが高い評価を受けている。
[組織部門]
[マルテンサイト変態の結晶学と機能性チタン基合金の設計原理に関する研究]
東京工業大学精密工学研究所准教授 稲邑朋也 君
受賞者は、マルテンサイト変態に関する結晶学的研究と、それらを基にした機能性チタン基合金の高性能化原理に関する研究に従事しており、①形状記憶合金では晶癖面バリアント間に存在する変形の不連続性が自己調整組織の結晶学的性格を決定する普遍的因子で あること、②βチタン合金において実用レベルの超弾性を得るための合金設計・集合組織制御の指針、③生体用チタン合金を極限まで低ヤング率化するためのGoss方位形成条件などを明らかにし、マルテンサイト変態に関する学理の深化と、多様な機能性チタン基合金の研究開発に貢献している。
[組織部門]
[超弾性合金の合金設計とミクロ組織制御に関する研究]
東北大学大学院工学研究科准教授 大森俊洋 君
受賞者は、合金状態図研究に立脚した合金設計とミクロ組織制御の研究で優れた業績を挙げた。主な功績は、銅系超弾性合金の異常粒成長と集合組織制御による大断面超弾性合金の開発、鉄系合金のBCC/FCCマルテンサイト変態の熱力学解析とミクロ組織制御による超弾性の発現、Co基超耐熱合金の合金設計指針の確立と材料開発などである。これらの成果は、新規構造・機能材料の創製とその基礎学理の構築に寄与するものである。
[力学特性部門]
[方位制御結晶の利用による各種高機能構造材料創成に関する研究]
大阪大学大学院工学研究科准教授 萩原幸司 君
受賞者は、遷移金属シリサイド等の超高温構造材料、軽量高強度Mg 基LPSO合金、さらには(Mg、Ca)基生分解性化合物合金など、力学機能に加え他の複数機能を付加的に有する。次世代機能性構造材料として期待される一連の新材料開発、機能発現に関する系統的な研究を行い、優れた業績を挙げている。単結晶、方位制御結晶を用いることで、塑性変形を転位構造、面欠陥の安定性といった微視的視点から捉え、特異な各種物性の発現機構、支配因子を解明している。それらを直接的に実用応用する方策も検討するなど、今後の更なる展開が期待される。
[材料化学部門]
[生体用金属材料の腐食特性評価と表面処理]
物質・材料研究機構MANA 研究者 廣本祥子 君
受賞者は、生体用金属材料の腐食特性評価および表面処理に関する研究に従事している。具体的には、以下の先駆的な研究に取り組んできた。①細胞培養下での電気化学測定セルを開発し、細胞による316Lステンレス鋼の耐孔食性の低下を報告した。②アモルファス合金の生体材料応用を提案し、高耐食性と低ヤング率に起因する骨再生の促進を明らかにした。近年は、③生体吸収性Mg合金の水溶液処理による水酸アパタイト被覆法を開発し、被覆による腐食速度制御や細胞適合性の改善などに取り組んでいる。
[材料プロセシング部門]
[急速凝縮に基づくナノ組織制御プラズマスプレー技術開発]
東京大学大学院工学系研究科准教授 神原 淳 君
受賞者は、高温蒸気の急速共凝縮過程の理解とその制御に基づいた材料の高機能化と高速度を両立しうるプロセシングの開発に従事してきた。主な功績として、液体様ナノクラスターの生成・成膜ダイナミクスの解明とこれに基づく超高速エピタキシャル成膜技術の開発、並びに不均質核生成を利用した複合構造ナノ粒子の高速形成による高密度リチウム2次電池の開発としてその効果を実証した。現在、多元系バルクウエハ製造技術として高度化を進めると共に、産業界と連携してエネルギー分野への応用展開を推進している。
[工業材料部門]
[集合組織制御による優れた室温成形性を有するマグネシウム合金板材の開発]
産業技術総合研究所研究グループ長 千野靖正 君
受賞者は、マグネシウム合金展伸材の集合組織制御に関する研究開発に取り組み、室温成形性を改善するための数多くの技術シーズを創出してきた。代表的な成果としては、①Mg-Ce系合金、②Mg-Zn-X系合金(X=Ce、Y、Ca等)、③汎用(Mg-Al系)合金の集合組織を制御するための圧延技術の開発、及びそのメカニズム解明が挙げられる。一連の成果は、当該分野を先導するものとして国内外で高く評価されている。また、工業的観点から産業界との連携を積極的に推進し、顕著な成果を残しつつある。
[工業技術部門]
[部分転位の反復運動による耐疲労特性改善と制振ダンパーへの応用]
物質・材料研究機構主席研究員 澤口孝宏 君
受賞者は、鉄系形状記憶合金として知られるFe-Mn-Si合金が、引張圧縮変形下で正逆二方向のマルテンサイト変態を、受動的かつ可逆的に行う新現象を観察した。この繰り返し変形下の組織変化を部分転位の反復運動としてモデル化し、新しい耐疲労合金設計指針を提案した。その結果開発された新合金は従来比10倍の疲労耐久性を示し、長周期・長時間地震動に対応可能な制振ダンパーとして、共同研究企業により超高層ビルへの実装を達成し、社会インフラ長寿命化の材料技術として評価されている。
第55回 日本金属学会谷川・ハリス賞 受賞(受賞者4名)(2016年3月23日)
[先進酸化物分散強化(ODS)合金の創製と実用化に関する研究]北海道大学大学院工学研究院教授 鵜飼重治 君
受賞者は、メカニカルアロイングによる酸化物粒子の強制分解・析出を利用したナノ粒子分散技術を創出し、ODS合金のナノスケールからミクロンスケールに至る組織制御技術を開発した。マルテンサイト系ODS鋼では準安定フェライト相の制御とこれによる高温強度発現機構を解明して実用化のための基盤を確立した。フェライト系ODS鋼では冷間圧延-再結晶組織、Ni基ODS超合金ではゾーンアニーリングによる一方向再結晶組織について、これらの組織発達機構を解明し実用材製造のための新たな制御指針を構築した。
[高温高圧水中における金属材料の腐食・防食に関する研究]東北大学理事・工学研究科教授 原 信義 君
受賞者は、水溶液腐食に関する広範な研究を展開する中で、実験的研究が難しい高温高圧水中における腐食・防食の研究にも注力し、多くの成果を上げてきた。軽水炉冷却水環境で使用できる各種化学センサ(pH、溶存水素、溶存酸素など)および照合電極の開発研究を行った他、純水中での電気化学分極曲線の精密測定と解析を行って腐食電位の推定方法などを提案した。さらに超臨界水環境や使用済み核燃料再処理環境などの高温特殊環境における腐食についても先駆的研究を行い、軽水炉の信頼性・安全性の向上や新規プロセスの開発に貢献した。
[金属および酸化物材料の組織組成制御による機能性構造材料の創成に関する研究]北見工業大学工学部マテリアル工学科教授 平賀啓二郎 君
受賞者は、金属および酸化物を対象に、特性発現機構と微視組織との関係について新知見を得て材料設計指針を導き、新機能を付与した構造材料を実現した。前者ではとくに、鉄基超合金の低温磁気変態、相安定性、強度の支配因子を明らかにし、4Kでも高強度・靱性でかつ弱磁性の材料を創成した。後者では正方晶ZrO2等よりなる微細粒材料の高温変形における局所応力集中・緩和、粒界損傷の発生・成長,微視き裂形成、破断の過程と関与機構を明らかにし、高速超塑性材料を創成するなど、本分野の発展に貢献している。
[金属・無機材料の微細組織形成と安定性に関する研究]九州大学大学院工学研究院教授 松村 晶 君
受賞者は、金属・無機結晶材料の相変態や格子欠陥生成に伴う微視組織形成と安定性に関して精力的に研究を行ってきた。特に、定量電子回折・電子顕微鏡法について早くから独自の手法を確立して、Ni基規則合金の短範囲規則状態と長範囲規則状態への発展過程の原子構造や三元合金の各元素の規則化速度を実験から初めて明らかにした。さらにスピネ ル化合物や蛍石型結晶酸化物の高速重イオンや高速電子照射によって引き起こされる局所的な不規則化挙動と格子欠陥構造についても顕著な成果を挙げている。
第22回 日本金属学会増本量賞 受賞者(2名)(2016年3月23日)
[電磁波と材料の相互作用を利用した機能材料と材料評価に関する研究]東京大学大学院工学系研究科教授 香川 豊 君
受賞者は、様々な波長の電磁波と材料の相互作用を利用した新規機能を構造用材料に付与した材料を提案し実証してきた。また、電磁波と材料の相互作用を利用した新たな評価手法を開発してきた。可視光領域で透明なオプトメカニカル複合材料、近赤外光領域で輻射熱エネルギーを制御する耐熱コーティング材料、可視光とミリ波帯域の異なる波長領域を透過・遮蔽する複合材料、材料中での透過時間差を利用した光散乱の定量評価、ミリ波領域の電波を利用した複合材料の検査手法の開発などに大きく貢献した。
[パワー半導体材料の高品質化および光電子素子応用に関する研究]物質・材料研究機構部門長 小出康夫 君
受賞者は、禁制帯幅の広いパワー半導体材料の高品質な単結晶薄膜の結晶成長と光電子素子開発に関する基盤的研究において卓越した業績を挙げてきた。今日のGaN/AlGaN系高効率発光素子の発展と2014年ノーベル物理学賞につながる礎を築いた。またダイヤモンド半導体の低抵抗オーム性電極および高抵抗整流性電極材料の開発、並びに異種材料接合界面の電子物性制御と物性理解を通して、高性能なトランジスタおよびマイクロ電子機械スイッチの開発に成功し、世界を先導する貢献を果たした。
第24回 日本金属学会若手講演論文賞 受賞者(受賞者3名)(2016年3月23日)
[L10 型FePtRh 規則合金薄膜の磁気相転移と格子歪みとの相関](日本金属学会誌79巻9号)
秋田大学大学院工学資源学研究科助教 ○長谷川 崇 君
秋田大学大学院工学資源学研究科 木村詩織 君
秋田大学大学院工学資源学研究科 虻川卓憲 君
Ioffe Physical-Technical Institute, Russian Academy of Sciences Albert A. Valiullin 君
Ioffe Physical-Technical Institute, Russian Academy of Sciences 教授 Aleksandr S. Kamzin 君
School of Computer Science, University of Manchester Craig Barton 君
School of Computer Science, University of Manchester 教授 Thomas Thomson 君
秋田大学大学院工学資源学研究科教授 石尾俊二 君
東北大学大学院工学研究科 ○木村雄太 君
東北大学大学院工学研究科 許 皛 君
東北大学大学院工学研究科准教授 大森俊洋 君
東北大学大学院工学研究科教授 貝沼亮介 君
島根大学戦略的研究推進センター特任助教 ○PHAM Hoang Anh 君
島根大学大学院総合理工学研究科 教授 大庭卓也 君
島根大学大学院総合理工学研究科 准教授 森戸茂一 君
島根大学総合科学支援センター 助教 林 泰輔 君
日本金属学会名誉員(受賞者1名)(2016年3月23日)
東京大学名誉教授・高知工科大学名誉教授 佐久間健人 君
第26回 優秀ポスター賞受賞者35名 (2016年3月23日発表) (五十音順)
伸線加工されたCu-Pd-Ag 合金の微細組織観察(P70)
茨城大学 安達直紀君,横山達也君,岩本知広君,ヨコオ 渡邊文男君
千葉県産業支援技術研究所 西村祐二君
大阪大学 池西貴昭君,荒木晴香君,萩原幸司君,中野貴由君
高速変形によるCoCrFeMnNi 系HEAの変形帯形成(P56)SDSfrez Urrutia 君,大澤嘉昭君,土谷浩一君,神戸大学 向井敏司君
Ti 不働態皮膜中に存在する結合水量と皮膜厚さとの関係(P42)関西大学 今村昌仁君,春名匠君
Pd/AlN 多層薄膜の水素化in-situ XRD観察(P72)東京理科大学 大西悠介君,石黒 孝君,東京工業大学 春本高志君
走査電子顕微鏡による新規磁気イメージング法の開発(P139)九州大学 奥村聡君,赤嶺大志君,Sahar Farjami 君,村上恭和君,西田稔君
高圧下ねじり加工により作製したバルクω-Ti の結晶配向・力学特性へ及ぼす酸素量の影響(P115)豊橋技術科学大学 金澤優徳君,戸高義一君,足立望君,中北貴大君,山口大喜君
CeO2 ナノ粒子による薄膜の作製と評価(P37)名古屋大学 唐井利賢君,服部隆志君,小林克敏君,小澤正邦君
ラーベス相MgX2 の相安定性に関する第一原理計算(P96)
九州工業大学 河野翔也君,九州工業大学 JST-ALCA 飯久保智君
東北大学,JST-ALCA 大谷博司君
熊本大学 久間康平君,峯洋二君,高島和希君
Ti 合金ならびに各種純金属上の骨芽細胞挙動に及ぼす熱酸化処理の影響(P82)愛媛大学 清兼友理子君,小林千悟君,岡野聡君,岡本威明君
MnxGa 合金の作製とメスバウァー分光法による超微細磁気構造解析(P63)東北学院大学 越場昂君,嶋敏之君,土井正晶君
Mn-Al 合金に対する磁場中熱処理効果(P68)
鹿児島大学 小林領太君,三井好古君
東北大学 梅津理恵君,高橋弘紀君,水口将輝君,高梨弘毅君,
鹿児島大学 小山佳一君
京都大学 佐治奈萌子君,
金沢大学 國峯崇裕君,
京都大学 柴田曉伸君,辻伸泰君
首都大学東京 鈴木大志君,北園直樹君,山口凜太郎君,北薗幸一君
有限温度下における純マグネシウム中〈a〉らせん転位の移動性評価(P121)大阪大学 高橋和平君,石井明男君,君塚肇君,尾方成信君
不活性窒素Ga-Al 融液を原料とする新たなAlN 結晶成長法の開発(P76)東北大学 高橋慧伍君,安達正芳君,大塚誠君,福山博之君
Structure and Magneto - dielectric Responses of 2D Co/AlF Granular Films(P47)
東北大学 曹 洋君
電磁材料研究所 小林伸聖君,
東北大学 張亦文君,
電磁材料研究所,東北大学 大沼繁弘君,
東北大学 増本博君
東北大学 佃諭志君,藤枝俊君,鈴木茂君
異種アニオン含有塩水環境下におけるCa 添加難燃性Mg 合金AZ61の腐食挙動(P44)芝浦工業大学 綱川美佳君,石﨑貴裕君
Al-Mg 合金の局所変形過程におよぼすひずみ速度の影響(P88)コベルコ科研 常石英雅君,田口秀幸君,森野勝也君,八橋篤志君,池田健一君
Cu-Cr-Zr 合金のクリープ疲労における転位組織変化のECC 観察(P90)東京大学 出口雅也君,ISAS/JAXA 戸部裕史君,佐藤英一君
摩擦重ね接合法によるAl 合金と炭素繊維強化熱可塑性樹脂の異材接合(P141)大阪大学 永塚公彬君,肖伯律君,中田一博君,東レ 土谷敦岐君
水中結晶光合成法による酸化銅表面ナノ構造の形成機構(P36)北海道大学 西野史香君,MelbertJeem 君, 西山賢君, 張麗華君,岡本一将君,渡辺精一君
鉛フリーはんだの粘度測定システムの開発(P46)茨城大学 橋本康孝君,太田弘道君,西剛史君
CrAlGe の結晶構造と磁性(P67)鹿児島大学 福田雄介君,藤井伸平君
生体内分解性Mg-Zn 合金の高強度化および分解性評価(P80)
神戸大学 藤原健吾君,Brown Univ. Kim Yoojin 君,
神戸大学 池尾直子君,向井敏司君
芝浦工業大学,物質・材料研究機構 松永紗英君
芝浦工業大学 芹澤愛君,
物質・材料研究機構 御手洗容子君
熊本大学 松本翼君,山崎倫明君,
大阪大学 萩原幸司君,
熊本大学 河村能人君
愛媛大学 宮本裕太君,小林千悟君,岡野聡君,阪本辰顕君
Au-Zn 合金の大気中での熱処理による配向ZnO 膜の作製(P74)
東京理科大学 村田佳那恵君,石黒孝君,
東京工業大学春本高志君
早稲大学 森雄飛君,
物質・材料研究機構 横川忠晴君,小林敏治君,
早稲田大学 鈴木進補君,
物質・材料研究機構 原田広史君
大阪大学 横峯智仁君,
新日鐵住金 山本祐義君,
大阪大学 佐藤和則君,福田隆君,寺井智之君,掛下知行君,
ユーリッヒ研究センター 小倉昌子君,
東京大学 赤井久純君
早稲田大学 吉田春香君,野元将志君,井下匠君,井上靖秀君,
九州工業大学 堀部陽一君,
早稲田大学 小山泰正君
東北大学 Zhi WANG君,
SYNL, IMR, Chinese Academy of Sciences, China Rui Tao Qu 君,
IFW Dresden, Germany Sergio Scudino 君 ,
SYNL, IMR,Chinese Academy of Sciences, China Zhe Feng Zhang 君,
東北大学 Ming Wei Chen 君,Dmitri VLouzguine-Luzgin 君
第24回 日本金属学会・日本鉄鋼協会奨学賞受者(受賞者49名)(2016年3月)
北海道大学工学部応用理工系学科 近藤竜之介 君
北海道大学工学部応用理工系学科 相馬智紀 君
室蘭工業大学工学部機械航空創造系学科 神田 健 君
岩手大学工学部マテリアル工学科 渡邊遼河 君
秋田大学工学資源学部材料工学科 須藤裕弥 君
東北大学工学部材料科学総合学科 大平拓実 君
東北大学工学部材料科学総合学科 北本祥子 君
東北大学工学部材料科学総合学科 戸村勇登 君
茨城大学工学部マテリアル工学科 森井達也 君
筑波大学理工学群応用理工学類 雨宮太希 君
東京大学工学部マテリアル工学科 西川元希 君
東京大学工学部マテリアル工学科 福原 智 君
東京工業大学工学部金属工学科 太田雅之 君
東京工業大学工学部金属工学科 山野花穂 君
横浜国立大学理工学部機械工学・材料系学科 笠間亮太 君
長岡技術科学大学工学部機械創造工学課程 佐伯優志 君
富山大学工学部材料機能工学科 田岸拳太朗 君
豊橋技術科学大学工学部機械工学課程 神保正義 君
名古屋大学工学部物理工学科 石黒雄也 君
名古屋大学工学部物理工学科 金 昇光 君
名古屋工業大学工学部環境材料工学科 寺田真穂 君
京都大学工学部物理工学科 浴畑 嶺 君
京都大学工学部物理工学科 島 洋輔 君
大阪大学工学部応用理工学科 山崎大介 君
大阪大学工学部応用理工学科 吉井丈晴 君
島根大学総合理工学部物質科学科 井戸翔太 君
香川大学工学部材料創造工学科 岡部京介 君
愛媛大学工学部機能材料工学科 高橋祐介 君
九州大学工学部物質科学工学科 Harnas Karo karo 君
九州大学工学部物質科学工学科 村田健太 君
九州大学工学部物質科学工学科 渡 健太 君
九州工業大学工学部マテリアル工学科 松本悟 君
長崎大学工学部工学科 西上真由 君
熊本大学工学部マテリアル工学科 鬼丸和弥 君
熊本大学工学部マテリアル工学科 松尾 健 君
大阪府立大学工学域物質化学系学類 井上大輔 君
兵庫県立大学工学部応用物質科学科 渡邉彩花 君
千葉工業大学工学部機械サイエンス学科 椎名祐斗 君
東京理科大学基礎工学部材料工学科 児玉由紀 君
芝浦工業大学工学部材料工学科 菅野智広 君
東海大学工学部材料科学科 安達裕人 君
金沢工業大学工学部機械工学科 小林隼一 君
関西大学化学生命工学部化学・物質工学科 中島佳祐 君
近畿大学理工学部電気電子工学科 岸本穂高 君
福井工業大学工学部機械工学科 京谷成惇 君
石巻専修大学理工学部情報電子工学科 久保匠平 君
鹿児島大学工学部機械工学科 小森一樹 君
群馬大学工学部機械システム工学科 西城舜哉 君
鈴鹿工業高等専門学校専攻科応用物質工学専攻 松下和樹 君
第66回金属組織写真賞 最優秀賞 作品(2016年3月23日)
第1 部門: 光学顕微鏡部門 第2部門: 走査電子顕微鏡部門
第3部門: 透過電子顕微鏡部門 第4部門: 顕微鏡関連部門
九州工業大学大学院工学研究院 堀部陽一 君
Ulsan National Institute of Science and Technology Yoon Seok Oh 君
Seoul National University Seung Chul Chae 君
University of Science and Technology Beijing Xueyun Wang 君
Rutgers University Sang-Wook Cheong 君
第66回金属組織写真賞 優秀賞 作品(2016年3月23日)
第1 部門: 光学顕微鏡部門 第2部門: 走査電子顕微鏡部門
第3部門: 透過電子顕微鏡部門 第4部門: 顕微鏡関連部門
九州大学総合理工学府 赤嶺大志 君
九州大学総合理工学府 奥村 聡 君
九州大学総合理工学研究院 Sahar Farjami 君
九州大学工学研究院 村上恭和 君
九州大学総合理工学研究院 西田 稔 君
第66回金属組織写真賞 優秀賞 作品(2016年3月23日)
第1 部門: 光学顕微鏡部門 第2部門: 走査電子顕微鏡部門
第3部門: 透過電子顕微鏡部門 第4部門: 顕微鏡関連部門
東京工業大学精密工学研究所 田原正樹 君 稲邑朋也 君
筑波大学数理物質系 金熙榮 君 宮崎修一 君
東京工業大学精密工学研究所 細田秀樹 君
第66回金属組織写真賞 奨励賞 作品(2016年3月23日)
第1 部門: 光学顕微鏡部門 第2部門: 走査電子顕微鏡部門
第3部門: 透過電子顕微鏡部門 第4部門: 顕微鏡関連部門
九州大学大学院総合理工学研究院 山﨑 重人君 光原昌寿 君
波多 聰 君 中島英治 君
下記の方々が受賞されました。皆様、おめでとうございます。~
第14回 日本金属学会学術貢献賞 受賞者(10名) (2016年9月21日)
[改良型ステンレス鋼溶射皮膜の開発]九州工業大学大学院工学研究院 教授 恵良秀則 君
受賞者は、金属生産工学及び材料加工・処理の分野において精力的な研究を行ってきた。急冷凝固の基礎的研究を発展させ、これらの結果を溶射法に適用し、耐食・耐摩耗性溶射皮膜の開発へとつなげた。近年は、高耐食性ステンレス鋼溶射皮膜の開発に成功し、さらには溶射法を適用したプレス成形用ハイブリッド金型の試作開発の研究も実施している。また、アルミニウム合金を温間で鍛造することにより、高強度・高靭性の自動車用アルミ部品を得る技術を開発するなど、金属学並びに金属工業の学術、技術の発展に貢献した。
[マルテンサイトの回折結晶学的研究]島根大学大学院総合理工学研究科 教授 大庭卓也 君
受賞者は、回折結晶学的手法を通してマルテンサイトの研究を行ってきた。AuCdやTiNi合金においてX線回折によりマルテンサイト相の結晶構造解析を行い、マルテンサイト変態メカニズムを考察し、中性子散乱によりフォノンの測定を行った。また、ゴム状弾性の原因について回折結晶学的な実験結果を示し、結晶構造の変化の可能性について検証をおこなった。日本刀に現れるマルテンサイトについての結晶学的研究も行っている。学会活動においては中四国支部長などを歴任し地域の学会活動の振興にも貢献した。
[金属材料の組織形成過程の速度論的挙動と機構の解明]東京工業大学物質理工学院 教授 梶原正憲 君
受賞者は、金属材料の組織形成過程の速度論的挙動と機構の解明を目的として、Ni基超合金、Fe基耐熱合金、高窒素鋼、Nb基超伝導合金、Cu基導電性合金、Sn基接合用合 金、等を対象とする実験的観察や理論的解析に関する研究を行っている。これらの研究を介して、従来、純粋な体積拡散律速型と思われていた組織形成過程においても、粒界拡散や界面反応が律速過程に寄与する場合のあることを見出し、この混合律速過程を定量的に記述する速度モデルを構築することにより、材料組織学の発展に貢献している。
[溶射コーティングプロセスに関する基礎的研究]物質・材料研究機構 上席研究員 黒田聖治 君
受賞者は、各種の保護皮膜形成プロセスとして重要な溶射に着目し、まず、溶射粒子の温度・速度の非接触計測法を開発した。さらに基材の曲率を成膜中にその場測定する技術を開発し、溶射皮膜中の残留応力の発生機構を解明した。また、Warm Sprayという軟化状態の粒子を基材に投射して緻密な皮膜を得るプロセスを開発し、高強度合金や炭化物サーメット皮膜製造への有効性を実証した。これらの成果によって、成膜プロセスの基礎現象の科学的解明と新プロセスの開発に貢献した。
[先端物理解析手法の開発と鉄鋼材料設計への応用]JFE テクノリサーチ(株)フェロー 佐藤馨 君
受賞者は、微細構造解析技術の開発とそれらの応用による高性能鉄鋼材料設計で成果をあげた。特に、分析透過電子顕微鏡を用いた析出物や粒界・界面のナノメートル領域分析と極低加速走査電子顕微鏡を用いた最表面観察および多様な像取得技法を大きく前進させた。また、産学連携により鉄鋼業における中性子利用研究を推進した。日本金属学会組織写真集の編集委員や関東支部主催の物理解析の基礎と適用上の注意点に関する講習会の講師を務め、学会のレベル向上と次世代の研究者育成にも貢献した。
[高温冶金現象に関わる熱物性測定とその場観察]東北大学多元物質科学研究所 教授 柴田浩幸 君
受賞者は、材料製造プロセス制御にとって非常に重要な熱拡散率測定法の開発・測定を行い、各種無機材料の熱物性値データの充実やその発現機構の解明に貢献してきた。さらに鉄鋼の製造プロセスに関する研究では、製錬から凝固までの領域をカバーする多面的で基礎的な研究をその場観察法を駆使して行ってきた。これらの経験を踏まえ、東北地域の企業との産学連携および全国大学連携研究設備ネットワークを通しての東北地域国立大学間の連携活動も行い、地域の学術や技術の発展に貢献した。
[溶融塩を用いた酸化物の還元]北海道大学大学院工学研究院 教授 鈴木亮輔 君
受賞者は、非晶質合金のガラス転移と構造緩和、超伝導金属間化合物や超伝導酸化物の合成とそれらの熱力学的測定、オゾンガス酸化などの先駆的研究を行った。特にCaCl2-CaOを用いた溶融塩電解をチタン等の非鉄金属の酸化物還元やCO2の分解に適用する新製錬技術開発を主導してきた。一方、熱電変換ではいち早く熱電発電システムの重要性にd着眼して、材料科学、熱工学、流体工学と電気工学を融合した発電シミュレーションを始め、熱電素子形状および熱電発電機の最適設計を行っている。
[水素エネルギー関連材料の開発と支部活動への貢献]新潟大学名誉教授 原田修治 君
受賞者は、金属水素化物の形成機構の解明を目的に、新しい実験手法の開発を通して、数多くの重要な知見を得てきた。特に、クイック水素センサなどを世界に先駆けて開発することで、水素エネルギー社会の到来に寄与をしてきた。このセンサは、水素ガスの微量漏えい検知に優れるなどの特徴が評価され、第4回産学官連携功労者表彰での文部科学大臣賞の受賞やAUTM2007での世界100選などに繋がった。また、北陸信越支部長などを歴任し、支部活動の活性化や金属の工業分野の地域振興に貢献した。
[材料の微細組織制御と力学的特性に関する研究]大阪大学 名誉教授 古城紀雄 君
受賞者は、金属及びセラミックス材料工学分野で「材料の微細組織制御とその特性」に関する研究を積極的に進め、その内容は(1)超塑性変形機構と超塑性実用化への基礎研究、(2)急冷凝固したアルミニウム合金の組織と相分解に関する研究、及び(3)結晶粒度測定に関する定量形態学的研究、の3つにまとめられる。また、1991年には大阪でのわが国最初の「先端材料の超塑性国際会議」を主導し、以後9年間国際諮問委員会の事務局長を務めるなど、我が国の研究活動の国際化・活性化に大きく貢献した。
[金属中の水素の存在状態と拡散に関する研究]名古屋工業大学大学院工学研究科 教授 吉成修 君
受賞者は、金属中の水素の存在状態や拡散に関して、イオンチャネリング、内部摩擦法、電気化学的手法などの手段を用いて基礎的な研究を行ってきた。最近では、これらの知見をもとに金属中の水素の量子状態と量子拡散を計算により明らかにする手法の開発に取り組んできた。従来、水素の拡散の定量的な予測は困難であるとされてきたが、拡散の量子力学的な遷移状態を考慮することで正確に求めることができることを示した。来るべき水素エネルギー社会において、材料中の水素の輸送特性は重要な知見であり、これを計 算により得ることができることを示したことの貢献は大きい。
第39回 日本金属学会技術開発賞 受賞者(8件、36名) (2016年9月21日)
(まてりあ 55巻1号)
DOWA メタルテック(株) 金属加工事業部 主任 鎌田 俊哉 君
DOWA メタルテック(株) 品質保証部 部長 佐々木史明 君
DOWA メタルテック(株) 代表取締役社長 菅原 章 君
(まてりあ 55巻1号)
(株)STU 取締役研究開発室長 橋本嘉昭 君
広島工業大学 工学部 教授 日野 実 君
岡山県工業技術センター 研究開発部 研究員 村上浩二 君
株日本製鋼所 産業機械事業部 部長研究員 斉藤 研 君
岡山理科大学 技術科学研究所 客員研究員 金谷輝人 君
(まてりあ 55巻1号)
JFE スチール(株) スチール研究所 主任研究員 中井由枝 君
JFE スチール(株) スチール研究所 主任研究員 松井章敏 君
JFE スチール(株) スチール研究所 部長 菊池直樹 君
JFE スチール(株) スチール研究所 部長 鷲見郁宏 君
JFE スチール(株) スチール研究所 主席研究員 三木祐司 君
(まてりあ 55巻2号)
三菱マテリアル(株)中央研究所 研究員 伊藤優樹 君
三菱伸銅(株)若松製作所 副部長 牧 一誠 君
三菱伸銅(株)若松製作所 副主任 小林敬成 君
三菱伸銅(株)若松製作所 主任 小池慎也 君
(まてりあ 55巻2号)
新日鐵住金ステンレス(株) 研究センター 主任研究員 及川雄介 君
新日鐵住金ステンレス(株) 研究センター リサーチ・フェロー 柘植信二 君
新日鐵住金ステンレス(株) 商品開発部 部長代理 江目文則 君
新日鐵住金ステンレス(株) 光製造所 部長代理 本村 洋 君
新日鐵住金(株) (現・大阪大学 接合科学研究所 教授) 井上裕滋 君
(まてりあ 55巻3号)
三菱伸銅(株)三宝製作所 シニアフェロー・部長 大石恵一郎 君
三菱伸銅(株)三宝製作所 副部長 外薗 孝 君
三菱伸銅(株)三宝製作所 副主任 積川 靖弘 君
三菱伸銅(株)三宝製作所 副主任 須崎 孝一 君
(まてりあ 55巻3号)
JFE スチール(株) スチール研究所 主任研究員 中島孝一 君
JFE スチール(株) スチール研究所 主任研究員 一宮克行 君
JFE スチール(株) スチール研究所 部長 長谷和邦 君
JFE スチール(株) 西日本製鉄所 主任部員 衞藤太紀 君
JFE スチール(株) 厚板セクター部 主任部員 深井英明 君
(まてりあ 55巻3号)
三菱マテリアル(株) 堺工場 課長補佐 中本 斉 君
三菱マテリアル(株) 金属事業カンパニー 部長 石田 徳和 君
三菱マテリアル(株) 堺工場 課長 服部 芳明 君
三菱伸銅(株) 開発部 部長 大石恵一郎 君
菱星尼崎電線(株) 尼崎工場 工場長 芦田 哲哉 君
第14回 日本金属学会功労賞受賞者(3名) (2016年9月21日)
[学術部門]2名
[高温構造材料としての金属間化合物の力学特性に関する研究]京都大学大学院工学研究科 教授 乾 晴行 君
受賞者は、一貫して遷移金属のアルミナイドやシリサイドなど高温構造材料としての金属間化合物の格子欠陥と力学特性に関する研究に取り組み、数々の優れた業績を挙げてきた。Ti-Al系アルミナイドにおける延性発現の発見、強度・延性の異方性の発現機構の解明、強度の逆温度依存性の発現機構の解明、Mo系遷移金属シリサイドの室温変形能の発見と変形機構の解明、転位の分解様式に基づいたL12型アルミナイドの新たな分類法の提案など、材料物性学の幅広い分野にわたる研究成果は国内外において高く評価されており、その学術の発展に貢献した。
[鉄および鉄鋼材料の変形・破壊に関する研究]京都大学エネルギー理工学研究所 教授・副所長 木村晃彦 君
受賞者は、鉄及び鉄鋼材料の変形・破壊挙動に及ぼす水素及び照射の影響に関する研究において優れた業績をあげてきた。世界最高純度の鉄単結晶の作製に成功し、高純度鉄単結晶の変形・破壊挙動に及ぼす水素の影響を明らかにした。また、鉄鋼材料の照射硬化機構、硬化に及ぼすHe やMn 効果の解明、SCC挙動と水素等、原子力材料における照射欠陥形成や照射影響の機構解明に貢献した。近年は、FeCrAl-ODS鋼における酸化物粒子の微細分散化に成功し、当該鋼の特異な現象を数多く見出し、国の内外において高く評価されている。
[技術部門]1名
[金属工業における技術開発]三菱マテリアル(株)参与・堺工場長 三橋 章 君
受賞者は、耐熱合金、耐食合金、および耐摩耗合金の開発と製造プロセス開発に従事し数々の開発合金の実用化を成功させるとともに、特殊合金メーカの材料技術者として種々のプラントの材料損傷問題の解決に従事し社会的損失の軽減に貢献した。また、社会の基盤となる非鉄金属である銅およびアルミニウムの加工技術において合金の開発、溶解・鋳造や塑性加工の技術改善などの指揮を取り成果を上げた。製造場所長として高品質素材の安定供給と車両の電化・軽量化などのニーズに応える新製品の展開を指揮している。
第26回 日本金属学会奨励賞 受賞者(9名) (2016年9月21日)
[物性部門]
[材料物性学的視点からの生体用構造材料の開発]大阪大学大学院工学研究科 助教 當代光陽 君
受賞者は、材料物性工学からの視点から無拡散相変態において現れる物性異常について理解し、これを利用することで材料が本来有する機能を指向化させ、これまでにない機能を発揮する生体材料の開発を行ってきた。その成果として低ヤング率かつ高異方性b型Ti合金を得るための合金設計指針を提案し、これに基づいて、あたかも生体骨として振舞う単結晶ボーンプレートの開発に成功した。現在では拡散相変態を利用した高温構造・生体材料の開発に取り組んでおり、今後の更なる展開が期待される。
[組織部門]
[NiMn 基およびCoCr 基メタ磁性形状記憶合金に関する研究]東北大学大学院工学研究科 特任助教 許 皛 君
受賞者は、NiMn基およびCoCr基メタ磁性形状記憶合金を対象に基礎物性から変態制御まで幅広く研究してきた。主な業績として、①NiMn 基合金における磁気相図の実験的決定、②NiMn基合金の熱変態停止現象における熱力学および動力学的研究、③CoCr基合金におけるリエントラントマルテンサイト変態および冷却誘起形状記憶効果の発見、などが挙げられる。現在は、メタ磁性形状記憶合金における駆動磁場の低減および新規合金の開発に取り込んでおり、今後の更なる展開が期待される。
[力学特性部門]
[先進高強度鋼の加工硬化および損傷発達機構に関する研究]九州大学大学院工学研究院 助教 小山元道 君
受賞者は、鉄鋼材料の加工硬化、低温脆化、水素脆化、ならびにマルテンサイト由来の脆化機構についての微視組織因子解明に努めてきた。近年では、実用環境における最重要破壊因子である疲労現象も研究対象としている。例えば、鉄鋼材料の粒内疲労き裂停留限界における固溶炭素の影響を定量的に明らかにした。現在、現職の所属である機械工学の知見に基づき、材料設計から構造物のパフォーマンス設計まで、統一的な学理に基づく構造材料特性の予測・設計法を試みており、今後の更なる展開が期待される。
[材料化学部門]
[高活性な金属ナノ粒子化技術の開発と金属表面の劣化機構解明]長岡技術科学大学技学研究院 助教 白仁田沙代子 君
受賞者は、高活性な金属表面確保のための金属ナノ粒子化技術の開発と金属電極の劣化機構解明や金属表面制御研究に従事してきた。①マイクロ波・紫外光・超音波照射により合成した貴金属ナノ粒子が環境触媒および電極触媒として高活性を示すこと、②Pt電極はH2O2およびFe2+共存下で溶解が加速されること、③Niフリーステンレス鋼への窒素熱処理により金属窒化物層が形成され耐食性が向上することを見出した。これらの成果は、省資源化および水素エネルギー社会構築への貢献とさらなる展開が期待される。
[材料化学部門]
[金属間化合物を用いた機能性触媒材料の開発とその表面科学の開拓]東京工業大学(現・北海道大学触媒科学研究所 准教授) 古川森也 君
受賞者は、触媒材料としての利用が乏しかった金属間化合物に着目し、その触媒特性について詳細な検討を行ってきた。その中で、従来の金属触媒では達成することが困難な種々の高難度分子変換に対し、一連の金属間化合物が高い活性、選択性を示す有効な触媒として機能することを見出し、従来の系を凌駕する高効率かつ革新的な触媒反応系の数々を構築してきた。また金属間化合物が、表面反応場の設計における理想的な要素を兼ね備えた優れた触媒材料であることを示し、金属材料とその科学における新たな可能性を提示した。
[材料プロセシング部門]
[資源循環プロセスの物理化学に関する研究]愛媛大学大学院理工学研究科 講師 佐々木秀顕 君
受賞者は、物理化学的な視点にもとづき様々な素材プロセスの反応解析を行い、優れた業績を挙げている。主な業績として、対流ボルタンメトリーを用いて水溶液中における合金の挙動を評価し、貴金属合金の特異な溶解特性を報告した。最近は反応の可視化にも取り組み、大きな成果を挙げつつある。これに加え、高温質量分析、高温電気化学、真空精製などの手法を駆使して幅広い研究を実施している。現在は銅をはじめとする非鉄金属や、鉄、レアメタルの資源循環プロセスの開発を実施しており、今後の更なる展開が期待される。
[材料プロセシング部門]
[加工プロセスを駆使した構造用金属材料の組織制御と高機能化に関する研究]東北大学金属材料研究所 助教 山中謙太 君
受賞者は、加工プロセスを駆使した構造用金属材料の組織制御と高機能化について多くの成果を上げてきた。生体用Co-Cr合金や航空宇宙用チタン合金を主な対象として、熱間鍛造を始めとする塑性加工や近年大きな注目を集めている電子ビームを用いた三次元積層造形におけるプロセス最適化と力学特性の改善について研究を行い、高い評価を受けている。最近は、X線・中性子回折を用いた加工組織の定量評価と組織制御、加工プロセスへの応用に関する研究にも取り組んでおり、今後の更なる展開が期待される。
[工業材料部門]
[錯体水素化物固体電解質を備える次世代型全固体電池デバイスに関する研究]東北大学(現・(株)日立製作所日立研究所 研究員) 宇根本篤 君
受賞者は、固体電気化学および固体イオニクスを専門とし、高速イオン伝導体ならびに全固体電池デバイスについて成果を挙げてきた。主な研究業績として、(1)次世代全固体電池のデバイスコンセプト提案とその原理実証、(2)電池の繰り返し安定動作を促す界面形成メカニズムの解明、(3)新規錯体水素化物系超イオン伝導体の開発などが挙げられ、新たな研究分野を開拓した。現在では、産業界で電池材料およびデバイスの研究開発とその社会実装に携わっており、今後の更なる展開が期待される。
[工業技術部門]
[特殊鋼棒線材の疲労強度,加工性向上に関する研究]新日鐵住金(株)技術開発本部鉄鋼研究所 主任研究員 間曽利治 君
受賞者は、特殊鋼棒線材の疲労強度及び加工性向上に関する研究開発に取り組んできた。高周波焼入れした鋼材の疲労強度に及ぼす組織や合金元素の影響を明らかにし、さらに急速加熱とピンニング粒子を活用した細粒化技術の開発を行うなど、鋼部品の高強度化指針を提示した。また、切削加工時の工具/鋼材界面の現象解析により、鋼中合金元素が界面反応物及び潤滑特性に極めて大きな影響を与えることを明らかにした。今後は本基礎知見を活用した切削工具寿命向上技術の開発への展開が期待される。
第6回 日本金属学会まてりあ賞 受賞者(3編6名) (2016年9月21日)
[第6回まてりあ論文賞](2編5名)
1. 不揮発性メモリ用Ge-Cu-Te 系相変化材料の研究 (まてりあ 53巻2号)
東北大学大学院 工学研究科 准教授 須藤祐司 君
産業技術総合研究所 研究員 齊藤雄太 君
東北大学未来科学技術 共同研究センター 教授 小池淳一 君
東北大学大学院 工学研究科 准教授 大森俊洋 君
東北大学大学院 工学研究科 教授 貝沼亮介 君
[第6回まてりあ 啓発・教育賞](1編1名)
1. 鉄鋼の相変態 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ (まてりあ 54巻1号、2号、3号、4号)茨城大学 名誉教授 榎本正人君
第13回 日本金属学会村上記念賞 受賞者(1名) (2016年9月21日)
九州大学大学院工学研究院 主幹教授 堀田善治 君
受賞者は、巨大ひずみ加工を利用した結晶粒超微細化にいち早く取組み、加工時に導入できるひずみ量を定量的に評価し、透過電子顕微鏡による精密組織解析によって、結晶粒超微細化が再現性をもって実現できることを示した。また、巨大ひずみ加工を高圧下で行うことにより、高強度で脆性的な金属間化合物などにも適用できることを示し、ナノ結晶化とともに力学特性や機能特性に優れた材料が創出できることを示した。これらの業績を通して、金属工学の分野における先駆的研究および開発に格段の功績を挙げた。
第13回 日本金属学会村上奨励賞 受賞者(4名) (2016年9月21日)
北海道大学大学院工学研究院 准教授 礒部繁人 君
受賞者は、リチウム系材料等で知られる軽元素系水素貯蔵材料の反応機構解明に取り組んできた。材料に担持された触媒のキャラクタリゼーションとその機構解明にも挑戦し、多くの業績を挙げてきた。特に、透過型電子顕微鏡による水素貯蔵材料の研究では、触媒と母材の界面で反応が進行していく様子をナノスケールで観察し、その反応機構解明に大きく貢献した。最近では、軽元素系水素貯蔵材料中のイオンの移動度と触媒効果の相関を見出し、イオニクス材料への応用など、今後の更なる発展が期待される。
九州大学大学院工学研究院 准教授 田中將己 君
受賞者は、結晶性材料の変形・破壊力学物性を系統的に研究し、その力学特性向上のための理論構築に取り組んできた。特に、電子顕微鏡法を駆使して亀裂先端転位の3次元構造を明らかにする事によって、転位による破壊靭性向上のメカニズムを明らかにしてき た。また、これまでSi単結晶で明らかにした「転位易動度変化を通した破壊挙動の変化」をbcc金属にも適用・発展させている。このように、転位論を基盤として脆性-延性遷移挙動の支配因子を明らかにする研究を展開しており、今後の更なる発展が期待される。
大阪大学産業科学研究所 准教授 多根正和 君
受賞者は、「不均質材料の弾性特性を高精度で計算可能なマイクロメカニックス理論(Effective-mean-field 理論)」と「多結晶弾性率から単結晶弾性率を決定するための独自手法」の構築を基軸として、金属材料の弾性特性を中心とした力学特性に対して研究を行ってきた。主な成果として、一方向ポーラス金属の弾性および塑性変形挙動を明らかにするとともに、生体用チタン合金の低弾性率化メカニズム、LPSO構造を有するMg合金の弾性特性の支配因子を明らかにしており、今後の更なる発展が期待される。
東北大学金属材料研究所 准教授 宮本吾郎 君
受賞者は、鉄鋼材料を対象にして熱力学的および結晶学的な観点から微細組織制御に関する理論的・実験的研究を一貫して行ってきた。特に、拡散型相変態における界面移動速度に及ぼす元素分配の影響を明確にしたこと、せん断型相変態組織の複雑な結晶方位組織を定量的に解明したこと、ナノ炭窒化物を利用した鉄鋼材料の高強度化指針を示したことが挙げられる。さらに、せん断型変態組織の結晶方位から母相方位を再構築する新たな手法を開発して産業界における材料開発へも貢献しており、今後の更なる展開が期待される。
第64回 日本金属学会論文賞 受賞者(5編31名) (2016年9月21日)
[組織部門]1編(7名)
(Materials Transactions, Vol.56, No.8)
北海道大学大学院 工学研究院 助教 佐藤博隆 君
(株)日本製鋼所 室蘭製作所 品質管理部 佐藤友哉 君
名古屋大学大学院 工学研究科 研究員 塩田佳徳 君
北海道大学大学院 工学研究院 准教授 加美山隆 君
University of California at Berkeley
Full Research Physicist Anton S. Tremsin 君
北海道大学大学院 工学研究院 教授 大沼正人 君
名古屋大学大学院 工学研究科 特任教授 鬼柳善明 君
[力学特性部門]1編(6名)
(Materials Transactions, Vol.56, No.3)
豊橋技術科学大学 機械工学系 Li Hui 君
九州大学大学院 工学研究院 主幹教授 戸田 裕之 君
高輝度光科学研究センター 研究員 上杉健太朗 君
高輝度光科学研究センター 副主幹研究員 竹内 晃久 君
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 非常勤講師 鈴木 芳生 君
豊橋技術科学大学 機械工学系 准教授 小林 正和 君
[材料化学部門]1編(4名)
(日本金属学会誌 79巻7号)
秋田大学大学院 理工学研究科 准教授 福本倫久 君
新日鐵住金ステンレス(株) 研究員 櫻庭拓也 君
秋田大学大学院 理工学研究科 教授 原 基 君
秋田大学 名誉教授 金児紘征 君
[材料プロセシング部門]1編(7名)
(Materials Transactions, Vol.56, No.5)
神戸大学大学院 工学研究科 助教 池尾 直子 君
大阪大学大学院 工学研究科 講師 石本 卓也 君
大阪大学(現・トヨタ自動車(株)) 平本 菜摘 君
弓削商船高等専門学校 助教 福田 英次 君
大阪大学(現・(株)村田製作所) 荻須 宏幸 君
大阪大学(現・スズキ(株)) 荒木裕太郎 君
大阪大学大学院 工学研究科 教授 中野 貴由 君
[工業材料部門]1編(7名)
(日本金属学会誌 79巻8号)
新日鐵住金(株) 鉄鋼研究所 主幹研究員(現・大同大学工学部)
高田 健 君
新日鐵住金(株) 技術開発本部 顧問 潮田 浩作 君
九州大学大学院 総合理工学府 (現・(株)神戸製鋼所) 研究員 秋吉竜太郎 君
北海道大学大学院 工学研究院 准教授 池田 賢一 君
新日鐵住金(株) 先端技術研究所 上席主幹 高橋 淳 君
九州大学大学院 総合理工学研究院 教授 波多 聰 君
九州大学大学院 工学研究院 教授 金子 賢治 君
第25回 日本金属学会若手講演論文賞 受賞者(3編3名) (2016年9月21日)
(日本金属学会誌 80巻3号)
東北大学大学院工学研究科 ○小川由希子 君
東北大学大学院工学研究科 助教 安藤 大輔 君
東北大学大学院工学研究科 准教授 須藤 祐司 君
東北大学未来科学技術共同研究センター 教授 小池 淳一 君
(Materials Transactions, Vol.57, No.3)
名古屋大学(現・日本車輌製造(株)) ○森本慎平 君
名古屋大学大学院工学研究科 助教 湯川 宏 君
鈴鹿工業高等専門学校材料工学科 教授 南部智憲 君
名古屋大学大学院工学研究科 教授 村田純教 君
(Materials Transactions, Vol.57, No.4)
Beijing Computational Science Research Center (CSRC)
Materials and Energy Division ○山田泰徳 君
東北大学金属材料研究所 教授 毛利哲夫 君
第25回 日本金属学会講演大会優秀ポスター賞受賞者 47名
(2016年9月22日受賞決定) (五十音順)
長岡技科大学 池山卓君,石井義彦君,木下堪太君,中山忠親君,末松久幸君,鈴木常生君
大阪大学 石井健太郎君, 萩原幸司君,中野貴由君
北海道大学 井尻佑太君,大野直子君,鵜飼重治君,原子力研究開発機構 大塚智史君,皆藤威二君,東北大学 松川義孝君
東京工業大学 井場木亮祐君,飛田智史君,遠藤一輝君,田原正樹君,稲邑朋也君,細田秀樹君
名古屋工業大学 梅澤道久君,石河瞭一君,宮崎怜雄奈君,日原岳彦君
大阪府立大学 大本達朗君,久保田佳基君,山田幾也君,小菅厚子君
兵庫県立大学 岡田将秀君,足立大樹君
東京工業大学 笠倉麻未君,木村好里君
横浜国立大学 笠間亮太君,梅田裕仁君,廣澤渉一君,
本田技術研究所 渡邊博之君,藤田雅君
東北大学 門脇万里子君,武藤泉君,住鉱国富電子石川尚君,米山幸伸君,
東北大学 菅原優君,原信義君
神戸大学 川畑雅敬君,寺本武司君,田中克志君
東北大学 窪内将隆君,小川陽平君,林慶君,髙松智寿君,宮﨑 讓君
大阪府大学 久間千早希君,瀧川順庸君,上杉徳照君,東健司君
九州大学 熊野良紀君,生駒嘉史君,堀田善治君,Kaveh Edalati 君,佐賀大学 齊藤勝彦君,郭其新君
東北学院大学 黒須李沙君,菅原彩君,岩間弘樹君,土井正晶君,嶋敏之君
北海道大学 近藤竜之介君,菊地竜也君,夏井俊悟君,鈴木亮輔君
東北大学 齋藤樹里君,和田武君,湯葢邦夫君,加藤秀実君
東京大学 佐藤悠志君,井上純哉君
香川大学 塩谷真歩君,松本洋明君
神戸大学 下門輝也君,池尾直子君,向井敏司君
東北大学 進藤怜史君,須藤祐司君,安藤大輔君,小池淳一君,産業技術総合研究所 齊藤雄太君
九州工業大学 鈴木雄文君,平田研二君,赤瀬仁君,飯久保智君,楠献一郎君,堀部陽一君
大阪府立大学 杣龍之介君,岩瀬彰宏君,量子研究機構斉 藤勇一君,若狭湾エネルギー研究センター 石神龍哉君, 大阪府立大学 松井利之君
北海道大学 曽和貴史君, 鵜飼重治君,大野直子君,原子力研究開発機構 矢野康英君,皆藤威二君,NFD 鳥丸忠彦君, 京都大学 木村晃彦君,東京工業大学 林重成君
熊本大学 高木康介君,峯洋二君,高島和希君
大阪大学 武岡正樹君,森貞好昭君,孫玉峰君,藤井英俊君
富山高等専門学校 坂本佳紀君,竹村沙友理君,ファインネクス 山崎中君,志村将臣君
東京工業大学 茶原健太郎君,宮澤知孝君,藤居俊之君
兵庫県立大学 土居利行君,山崎徹君,東北大学 網谷健児君,加藤秀実君
東北大学 富樫陽色君,吉見享祐君
香川大学 内藤大樹君,松本洋明君
兵庫県立大学 中山翔太君,足立大樹君,山崎徹君
東京工業大学 西谷宣彦君,原田航君,熊谷悠君,赤松寛文君,大場史康君
東北大学 畑山祥吾君,進藤怜史君,須藤祐司君,小池淳一君
大阪府立大学 樋口公計君,上杉徳照君,瀧川順庸君,東健司君
東京大学 土方亮二郎君,Briffod Fabien 君,白岩隆行君,榎学君
東京大学 福原智君,熊本大学 下條冬樹君,東京大学 澁田靖君
東京工業大学 藤岡和毅君,宮嶋陽司君,尾中晋君
東京工業大学 堀旭伸君,井上純哉君
九州工業大学 松本悟君,山口富子君,西日本工業大学 西尾一政君
名古屋工業大学 水谷史仁君,宮﨑秀俊君,西野洋一君
鈴鹿高等専門学校 森唯人君,小俣香織君,南部智憲君
岩手大学 安野伸吾君,山口明君
東北大学 山岸稜君,小嶋隆幸君,亀岡聡君,蔡安邦君,物質・材料研究機構 西村睦君
大阪大学 山崎大介君,小笹良輔君,松垣あいら君,中野貴由君
大阪大学 李自宣君,萩原幸司君,中野貴由君,熊本大学山崎倫昭君,河村能人君
広島大学 Suganthamalar Selvaraj 君,Ankur Jain 君,Sanjay Kumar 君,Hiroki Miyaoka 君,Yoshitsugu Kojima君, Takayuki Ichikawa 君