日本金属学会

表彰(日本金属学会)

~2017年3月15日(水) 首都大学東京南大沢キャンパスにおいて、
下記の方々が受賞されました。おめでとうございます。~

第62回日本金属学会賞 贈呈式 (2017年3月15日)

新日鐵住金(株)顧問・東京工業大学名誉教授 加藤雅治 君

加藤雅治君は、1978 年に東京工業大学大学院博士課程を修了後、ノースウエスタン大学博士研究員、ミシガン州立大学助教授、東京工業大学助教授、同教授を歴任した。 2016年に東京工業大学を定年退職し、直ちに新日鐵住金株式会社顧問に就任して現在に至っている。 君には、金属材料を理解するための基礎的諸現象を明らかにした次のような多くの研究業績がある。

(1) 相変態と析出に及ぼす応力効果:鉄合金やジルコニアセラミックスでの応力誘起マルテンサイト変態では、外部応力はマルテンサイトの全形状変形にではなく、変態初期の格子形を変える変形に大きな効果をもつことを明らかにした。 転位上での優先析出現象を、転位と析出物の弾性相互作用の観点から説明した。 外力によって誘起される一次相変態の熱力学を定式化した。

(2) 力学的性質:スピノーダル分解による強化機構を実験的、理論的に調べ、強化量は濃度変動の振幅に比例し、波長には無関係という理論式を導いた。 周期的に変動する内部応力場中の転位の熱活性化運動過程を解析し、降伏応力の温度・ひずみ速度依存性を定式化した。 疲労損傷蓄積過程を統計学的に議論し、Coffin-Manson則やPalmgren-Miner則を理論的に導出した。 分散強化合金の中間温度脆化の原因が粒界すべりとその阻止効果にあることを明らかにした。 LSI金属配線のストレスマイグレーション現象を、高温変形と破壊の観点から説明した。 第二相粒子を含む合金の疲労挙動と転位組織の関係を調べ、疲労転位組織図を構築した。fcc超微細結晶粒材料での強度の特異な温度・ひずみ速度依存性を説明する転位の結晶粒界での熱活性化depinningモデルを提唱した。

(3)格子欠陥:内部に周期的なeigenひずみをもつ楕円体介在物問題を応用し、内部双晶を含む球状マルテンサイトの弾性ひずみエネルギーを評価した。 変形と破壊の熱力学を定式化すると共に、拡散律速の変形と破壊の速度論を統一的に記述する基礎式を導き、刃状転位の上昇運動、拡散クリープ、粒界すべり、粒界ボイド成長などの速度論に適用した。 教科書「入門転位論」(裳華房)などを執筆して、初学者の理解を増進させた。

(4)第二相および薄膜の構造と結晶学:不変面変形理論に基づくマルテンサイト変態の結晶学的理論を微小変形理論を用いて解析的に再構築し、弾性ひずみエネルギー最小理論との等価性を証明した。 第二相(相変態生成物や析出物など)の形態や方位を結晶学とエネルギー論によって考察し、これらが第二相と母相の格子ミスフィット、第二相の大きさ、硬さにどのように依存するかを明確にした。 異種金属結晶間の界面およびヘテロエピタキシーにおいて、両結晶間の方位関係を簡単に予測できる「M パラメーター」を提唱した。

加藤雅治君は、共同研究者に恵まれて以上のような業績を挙げる傍ら、Materials Science and Engineering A誌の日本担当編集長を11年間にわたって務め、国際的なレベルで学界に貢献した。 また、国内では、日本金属学会分科会運営委員会や日本鉄鋼協会論文誌編集委員会の活動を、まずは担当委員として、後には委員長として推進した。さらに、平成21年度には日本金属学会の会長、平成26、27年度には日本鉄鋼協会の会長として、我が国の金属材料分野を牽引した。


第58回 日本金属学会技術賞 受賞者(3名) (2017年3月15日)

[メタラジーを活用した高機能ステンレス鋼の開発]

新日鐵住金(株)鉄鋼研究所主幹研究員 安達和彦 君

受賞者は、鉄鋼メーカーの研究者として、結晶粒微細化、析出および窒素吸収等の強化を活用した金属材料の組織と特性の関係の調査および最適化、最適化した材料の安定製造、製造方法の合理化について検討し、メタラジーを活用した主に高機能ステンレス鋼板の研究から新商品開発に従事してきた。 特に、結晶粒微細化による高疲労強度シリンダヘッドガスケット用準安定オーステナイト系ステンレス鋼板の研究開発を推進、実用化を多数達成しており、その内容は学術的にも工業的にも価値ある優れたものである。

[高温超伝導バルク材料の高性能化に関する技術開発]

新日鐵住金(株)先端技術研究所主幹研究員 成木紳也 君

受賞者は、溶融成長法で作製した高温超伝導バルク材料の製造プロセス、組織制御、高特性化に関して、基礎から応用までの技術開発に従事し、当該分野の発展に貢献した。 中でもGd系、Eu系及びDy系など、各種の希土類系超伝導材料に対し、微細組織制御による臨界電流密度の改善や、単結晶の大型化に取り組み、捕捉磁場等の特性を飛躍的に向上させた。 これらの成果は、現在精力的に進められている大型フライホイール畜電システムや小型NMRなど、超伝導バルク材料の実用化に向けた開発に大きく寄与するものである。

[介在物制御技術を活用したステンレス鋼製品の開発]

新日鐵住金ステンレス(株)研究センター製鋼・厚板・棒線研究部長 福元成雄 君

受賞者は、ステンレス鋼の介在物制御に関する研究開発に従事し、(1)計算熱力学的手法をいち早く適用した酸化物系介在物の組成予測とスピネルなど硬質相の生成防止による無害化、(2)EBR溶解を活用した他に類のない超高清浄鋼の製造とステンレス極細線製造への適用、(3)脱酸制御など介在物を活用した新しい凝固組織微細化、(4)硫化物形態制御による熱間加工性および被削性改善など、介在物制御要因に関する基盤研究から高清浄ステンレス鋼製品の製造技術開発や特性向上まで幅広く貢献した。


第67回 日本金属学会金属組織写真賞 受賞者(22名) (2017年3月15日)

優秀賞 3件 (22名)
[第3部門]透過電子顕微鏡部門

1.[Ni50Mn20In30 ホイスラー合金における逆位相界面での偏析現象]

理化学研究所創発物性科学研究センター 特別研究員 新津甲大 君
東北大学大学院工学研究科 助教 許皛 君
東北大学(現YKK) 水口知大 君
東北大学金属材料研究所 助手 長迫実 君
物質・材料研究機構計算構造材料設計グループグループリーダー 大沼郁雄 君
(株)日立製作所研究開発グループ 研究員 谷垣俊明 君
九州大学大学院工学研究院 教授 村上恭和 君
東北大学多元物質科学研究所 教授 進藤大輔 君
東北大学大学院工学研究科 教授 貝沼亮介 君


[第4部門]顕微鏡関連部門

2.[中性子イメージングによる塗膜下腐食鋼の水の動きのその場観察]

理化学研究所中性子ビーム技術チーム 副チームリーダー 竹谷篤 君
理化学研究所中性子ビーム技術チーム 研究員 若林泰生 君
理化学研究所中性子ビーム技術チーム チームリーダー 大竹淑恵 君
(株)コベルコ科研材料ソリューション事業部 若林琢巳 君
(株)コベルコ科研材料ソリューション事業部 河野研二 君
(株)神戸製鋼所材料研究所 研究首席 中山武典 君
理化学研究所・日本原子力研究開発機構 池田裕二郎 君


[第4部門]顕微鏡関連部門

3.[結像型放射光X線CTを用いたAl-10%Si鋳造合金の損傷観察]

豊橋技術科学大学 古田将吾 君
豊橋技術科学大学 准教授 小林正和 君
高輝度光科学研究センター 研究員 上杉健太朗 君
高輝度光科学研究センター 副主幹研究員 竹内晃久 君
豊橋技術科学大学 教授 三浦博己 君
豊橋技術科学大学 准教授 青葉知弥 君




第48回 日本金属学会研究技術功労賞受賞者(10名) (2017年3月15日)

日新製鋼(株)ステンレス・高合金研究所 蛭濱修久 君

受賞者は、入社以来33年間にわたり、ステンレス鋼の製造プロセスの研究開発業務に携わり、様々な新鋼種開発の推進および製造プロセスの開発に多大な貢献をしてきた。 例として、ステンレス鋼の新鋼種開発において不可欠な基盤技術であるラボ溶製技術を確立し、試験用母材の安定供給を可能とすることによる新鋼種開発促進への貢献が挙げられる。 プロセス改善において積極的に取り組み、柔軟な発想で創意工夫し、様々な技術を確立させて、数多くの研究開発につなげた功績は著しい。

日鉄住金テクノロジー(株)尼崎事業所 角谷孝義 君

受賞者は、入社以来41年間、鉄鋼材料や非鉄金属材料の開発支援業務に従事してきた。 特に、透過電子顕微鏡による観察や解析の成否に大きく影響する薄膜試料の作製に卓越した技術を有する。 例として、軽量化および高強度化に有効な微細析出強化鋼の開発では微細析出物観察手法の確立や、高温材料の高温特性強化に必要な微細γ′相観察に最適な観察手法の確立に貢献した。 これらを含め様々な材料の研究開発で必要とされた技術課題に積極的に取り組み、研究開発の進展に貢献した功績は顕著である。

東北大学多元物質科学研究所 釜谷隆 君

受賞者は、昭和57年に文部技官として選鉱製錬研究所(現多元物質科学研究所)に入所以来35年にわたり、走査形電子顕微鏡、電子線プローブマイクロアナライザー等を用いた表面のnmからμm規模の形態変化、元素分析評価の中心的な存在として材料研究と教育を支えてきた。 様々な創意工夫で技術的困難の克服に先導的役割を担い、特に試料ステージへの粉体試料固定法やNaなど大気暴露を嫌う試料用密閉容器の開発、金属蒸着なしで絶縁体観察可能なリターディング法導入など多様化する材料研究発展に多大な貢献を行った。

日鉄住金テクノロジー(株)君津事業所 黒木勇二 君

受賞者は、高炭素鋼線材の研究開発に係る試験業務に長年従事し、自らの創意工夫によって試験設備等の改良を進め、高炭素鋼線の水素脆化特性を安定的に評価する手法や電子顕微鏡画像のデジタル化によるミクロ組織の定量的解析手法の確立に貢献した。 これらは高強度PCストランド用鋼線や長大橋に用いられる高強度橋梁用鋼線の開発等に活用され、同分野の発展に寄与した。 作業の安全性にも考慮し、試験環境の改善にあまねく努力する受賞者の姿勢は、職場同僚からの信頼も厚く、後進の育成にも貢献している。

(株)日本製鋼所室蘭研究所 高橋俊男 君

受賞者は、入社以来34年間にわたり、水素貯蔵材料の高性能化を目的とした材料開発に従事し、応用製品の商品化などに大きく貢献した。 特筆すべきは、水素圧力-組成-温度の相関関係や反応速度、繰返し耐久性といった特性を自動で測定できる装置を考案、設計し、測定精度の向上や作業効率の改善に大きく貢献したことであり、これにより数多くの貴重な水素貯蔵材料特性データが採取された。 また、後進の育成や技能伝承にも積極的に取り組むなど、研究開発への功績は極めて顕著である。

長岡技術科学大学技術支援センター 程内和範 君

受賞者は、実験や解析等の教育・研究支援業務に41年間従事してきた。 学生実験、実験試料作製、器具・装置改良、教育・研究上の安全対策などを通じて教員や学生の教育・研究活動に対して多大な貢献を行った。 金属電極を用いた電気化学的手法による溶存イオン種の定量分析や透過電子顕微鏡ほかの大型分析装置の維持・管理に加え、創意工夫に満ちた的確な分析技術指導を行ってきた。 また、技術支援センターの副技術長、技術長を歴任し、技術支援センター運営と共に、後進育成に多大な成果を挙げている。

新日鐵住金(株)広畑製鐵所生産技術部 堀江勝一 君

受賞者は、入社以来46年に渡り、自動車用鋼板、ブリキなどの薄鋼板に関する研究開発業務に従事してきた。 溶解・熱延・冷延・熱処理等の一貫試験工程に精通し、新しい実験課題への対応と効率化を自主的に進め、研究開発の多くのブレイクスルーに貢献した。 特に、連続焼鈍再現熱処理において、卓越した技能と創意工夫で得られた試作鋼板は均質性や表面性状に優れ、迅速な商品開発に寄与した。 また、長年培ってきた技能の伝承と後進の指導にも熱心に取り組むなどその功績は顕著である。

大同特殊鋼(株)技術開発研究所 前田浩 君

受賞者は、入社以来35年にわたり研究開発部門で、金属の組織観察、特性評価を担当し、様々な材料の観察・測定技術を確立させた。 この技術は特にハードディスクにあるスピンドルモータのハブ素材となる快削ステンレス鋼DHS1の開発に大きく貢献した。 また、近年は磁石開発の分野でも、錆やすい希土類磁石の防錆観察方法を独自に考案し、複雑な組織を解析することで磁石の高特性化にも寄与した。 さらに、これらの卓越した技術を惜しみなく伝承し、若手を育成している。

新日鐵住金(株)技術開発本部鹿島技術研究部 村上芳雄 君

受賞者は、入社以来41年間にわたり、製銑および鋼板製造プロセスに関する研究・開発試験業務に一貫して従事し、評価解析業務を通じて組織・表面品質の造り込み技術確立に大きく貢献した。 FE-SEM等の最新分析機器を使いこなすだけで無く、サンプル採取や前処理方法等、独自の創意工夫で解析技能を高めることにより、例として、超微細粒鋼や高成形性ハイテンの製造技術確立を加速した。 さらに、目的に応じて工夫する大切さを若手に伝承することにより、優秀な後進の育成にも貢献しており、功績は大きい。

日鉄住金テクノロジー(株)八幡事業所 山口博 君

受賞者は、電磁鋼板の試験検定・研究開発に一貫して従事してきた。 特に方向性電磁鋼板研究において、繊細な条件調節を必要とする二次再結晶組織現出作業を長年担当し、極めて鮮明なマクロ試料を作製できる腐食技術を確立し、二次再結晶機構に関わる多くの投稿論文や研究報告書の礎となる業績を残した。 試料作製と言う派手さは無いものの、縁の下の力持ち的な重要業務に長年ひたむきに取り組み、電磁鋼板の研究開発と技術革新に多大な貢献をした。 その功績は顕著であり研究技術功労賞に相応しい。




第75回 日本金属学会功績賞 受賞者(8名) (2017年3月15日)

[物性部門]

[先進計算科学による格子欠陥の構造・機能解明と新物質探索]

東京工業大学科学技術創成研究院 教授 大場史康 君

受賞者は、第一原理計算等の計算科学手法を駆使して、様々な半導体中の格子欠陥に起因した機能の発現機構を明らかにしてきた。 さらに、その知見に基づいて酸化物系電子セラミックスや酸化物・窒化物半導体,太陽電池用化合物半導体の設計指針を提案するとともに、新物質の探索を進めている。 希少元素を含まず、発光や吸光に適した直接遷移型のバンド構造を有する新規半導体CaZn2N2を発見するなど、新物質設計・探索の具体的な成果も得ており、今後の幅広い研究展開が期待される。

[組織部門]

[機能性材料における局所構造およびドメイン構造の透過型電子顕微鏡を用いた研究]

九州工業大学大学院工学研究院 准教授 堀部陽一 君

受賞者は、様々な機能性材料において局所構造やナノ組織観察による機能性発現機構の解明に従事してきた。 具体的には透過型電子顕微鏡法およびX線回折精密構造解析法を組合せた手法を用いて、①トポロジカルなドメイン構造の探索とそれに起因する新奇物性に関する研究、②強相関現象発現に伴う局所構造・ナノ組織変化と機能性発現メカニズムの解明等の研究を行っている。 これらの研究成果は、様々な機能性発現に対する理解を深めるものとして、高い評価を受けている。

[組織部門]

[原子レベル計測,第一原理計算および情報科学手法を用いた物質のナノ構造解析]

東京大学生産技術研究所 准教授 溝口照康 君

受賞者は、透過型電子顕微鏡、電子分光、第一原理計算、および情報科学手法を複合利用し、界面などのナノ構造を系統的かつ定量的に解析し、材料機能を制御および設計するための指針を得ることを目的とした研究を行っている。 主な業績として、①一粒子・二粒子・多粒子理論に基づく電子分光の理論計算法の確立と材料学への応用、②情報科学手法を用いたナノ構造決定の高速化などがある。 最近ではガラス、液体、および気体の高分解能解析と物理抽出に取り組んでおり、材料科学におけるナノ構造解析のさらなる高度化に貢献することが期待される。

[力学特性部門]

[結晶性材料の変形・靭性に関する研究]

九州大学大学院工学研究院 准教授 田中將己 君

受賞者は、金属の変形・破壊力学物性を系統的に研究し、その力学特性向上のための原理原則の確立に取り組んできた。 その業績として、例えば破壊靭性に及ぼす材料組織の影響に着目し、バルクナノメタルにおいて従来独立であると思われていた有効応力と非熱的応力の間に依存関係がある事を明らかにした事が挙げられる。 また、鉄基合金の脆性-延性遷移挙動の添加元素依存性が、応力遮蔽理論に基き原子結合性と転位易動度の影響に着目して整理出来ることを明らかにしつつあるなど、結晶性材料における力学特性に関する学理の深化に貢献している。

[材料化学部門]

[ナノ構造制御した金属触媒の創成と新規機能発現に関する研究]

大阪大学大学院工学研究科 准教授 森浩亮 君

受賞者は、ナノ構造触媒の創成と新規機能発現に重点を置き、金属ナノ粒子触媒、金属担持触媒、光触媒の開発で卓越した業績を挙げてきた。 開発した触媒群は、水素製造、環境浄化、太陽エネルギー変換などの次世代の基幹プロセスに成り得る重要な化学変換反応において、既存の反応系を凌駕する活性を示すことを見出した。 さらに、活性点の局所構造および作用機構を解明し、優れた触媒機能とナノレベルの構造との相関を明らかにした。 これらの成果は先駆的で新しい複合領域を創出し、金属触媒分野の拡大に大きく貢献した。

[材料プロセシング部門]

[組織形成・凝固に係る分子動力学研究の確立]

東京大学大学院工学系研究科 准教授 澁田靖 君

受賞者は、長年現象論的解析手法が主流である組織形成・凝固研究分野に、率先して分子動力学法を導入し先駆的な研究成果を多数挙げてきた。 主な功績として、①固液界面近傍全原子の動的挙動追跡による固液界面エネルギーやカイネティック係数などの高温物性値導出、②核生成・凝固・粒成長過程における原子の動的挙動解明、③粒成長過程における隣接粒方位依存関係の統計的理解などが挙げられる。 最近ではスパコンを活用した超大規模計算を積極的に推進し、当該分野の新境地開拓に貢献している。

[工業材料部門]

[理論計算を駆使した界面制御及び熱特性起源の解明]

大阪大学大学院工学研究科 准教授 吉矢真人 君

受賞者は、特に材料界面という観点から様々な理論計算法を開発・駆使し、多様な実材料に関する研究に従事してきた。 具体的には、①ナノ界面内包層状熱電変換材料、②ガスタービン遮熱コーティング、③結晶粒界不純物偏析、④多バリアント組織制御、⑤鉄鋼材料固相変態などについて、組織形成支配因子や特性発現メカニズム解明を行い、多様な実材料の特性向上指針を打ち立ててきた。 これら一連の成果は有機的・相補的な実験との協働を可能にし、高い評価を受けている。 最近では核生成をも含めた多階層構造制御による複数特性の同時最適化にも取り組んでいる。

[工業技術部門]

[Nb-TiNi 複相水素透過合金の作製と組織制御]

金沢大学理工研究域 教授 石川和宏 君

受賞者は、bcc系金属間化合物相の相平衡、規則-不規則変態、相安定性に関する研究に従事してきた。 主な功績としては、スピントロニクス材料として注目されているホイスラー型合金の安定性が構成元素の電子濃度に強く依存することを明らかにしている。 最近は、例えばNb-TiNi系などbcc系規則相と不規則相を含む2相合金において、微細組織に及ぼす①合金組成、②圧延・熱処理、③アモルファス化と結晶化の効果について解明し、非Pd系水素透過合金の組織制御と工業化に取り組んでいる。




第56回 日本金属学会谷川・ハリス賞 受賞者(4名) (2017年3月15日)

[合金状態図の決定と新型形状記憶材料の開発]

東北大学大学院工学研究科 教授 貝沼亮介 君

受賞者は、主にTi、Fe、Co、Ni、Cu基系において未決定だった多くの2元系および3元系状態図を実験的に決定し、これら合金系における材料開発の基盤を整備した。 また、決定した状態図に基づく合金設計や加工熱処理による組織制御を通し、数多くの新型形状記憶材料や超弾性材料を開発した。 その中でも、Cu系高加工性形状記憶合金の開発と製品化、Ni系メタ磁性形状記憶合金の開発、Fe系超弾性材料の開発、Co系ホイスラー合金におけるリエントラント変態の発見等の業績は、世界的に高く評価されている。

[鉄鋼製錬プロセスの高効率化と低環境負荷化に関する基礎研究]

東北大学大学院環境科学研究科 教授 葛西栄輝 君

受賞者は、製鉄原料塊成技術の高度化と環境汚染物質の排出削減、および塊成鉱の被還元性状向上など、鉄鋼製錬プロセスの高効率化と低環境負荷化に関する基礎研究に従事してきた。 中でも鉄鉱資源の劣質化に柔軟に対応可能な予備処理プロセス、窒素酸化物やダイオキシン類の発生機構解明と排出抑制、酸化鉄の還元反応促進などに関する成果は、いくつかの工業的応用技術に発展している。 さらに、日本学術振興会や多くの研究開発プロジェクトを通して関連研究分野の産学連携の発展に貢献している。

[マイクロ材料評価法の開発とその応用に関する研究]

熊本大学副学長・大学院先端科学研究部 教授 高島和希 君

受賞者は、ミクロンサイズの微小試験片を用いる材料試験法を世界で初めて開発し、微小材料研究のフロントランナーとして同分野を牽引しているのみならず、その国際標準化を進めている。 さらに、金属材料を構成している階層的微視組織から、微小試験片を切り出し、組織要素レベルでの局所的な変形メカニズムを解明し、大きな業績をあげている。 これらの成果は、マクロとミクロの機械的性質をつなぐマルチスケール的な材料強化設計の基盤となるものであり、今後の材料設計を革新的に進化させるものと期待されている。

[構造材料の高温力学特性に関する研究]

九州大学大学院総合理工学研究院 教授 中島英治 君

受賞者は、金属材料の高温変形を主軸として、広く構造材料の力学特性と微細組織に関して理論と実験の両面から研究に取り組み、数多の顕著な成果を挙げている。 特に純金属、固溶体合金および分散強化合金の高温変形機構の理論体系を構築した。 また、結晶粒界の構造解析や粒界エネルギー、粒界移動に関しても先見的な成果を残し、この知見は再結晶集合組織、超微細粒材料にも活かされている。 高温強度と結晶粒界という研究テーマは、特に結晶方位解析を利用した耐熱鋼のクリープ損傷評価という形で卓越した応用展開を見せている。




第23回 日本金属学会増本量賞 受賞者(1名) (2017年3月15日)

[巨大ひずみ加工による高機能材料創出に関する研究]

九州大学大学院工学研究院 主幹教授 堀田善治 君

受賞者は、金属間化合物やセラミックスのような高強度で低延性の材料でも、高圧下で巨大ひずみ加工をすることにより大量の格子欠陥を導入でき結晶粒をナノレベルに超微細化できることを示した。 これより、安価な水素貯蔵合金として知られるB2型構造のTiFeは、高温・高水素圧下での活性化処理が不要となり高性能化することができた。Al基のAl-Fe合金では、粗大な金属間化合物相を強制的にナノサイズに分断してFeを過飽和状態にし、その後時効処理を施すことで、軽量・高強度・高導電率の多機能化を達成した。




第26回 日本金属学会若手講演論文賞(受賞3編3名) (2017年3月15日)

[Bulk-Type All-Solid-State Lithium Batteries Using Complex Hydrides Containing Cluster-Anions](Materials Transactions, Vol.57, No.9)

東北大学(現・(株)日立製作所) ○宇根本篤 君
東北大学金属材料研究所 吉田浩二 君
東北大学原子分子材料科学高等研究機構 池庄司民夫 君
東北大学金属材料研究所 教授 折茂慎一 君

[Comparison of Reverse Transformation Behaviors of Thermally-and Deformation-Induced ε-Martensite in Fe-28Mn-6Si-5Cr Shape Memory Alloy](Materials Transactions, Vol.57, No.10)

筑波大学大学院物質・材料工学専攻 ○田崎亘 君
筑波大学教授;物質・材料研究機構拠点長 土谷浩一 君
物質・材料研究機構グループリーダー 澤口孝宏 君
物質・材料研究機構主任研究員 高森晋 君

[Quantitative Evaluation of Hydrogen Solubility and Diffusivity of V-Fe Alloys toward the Design of Hydrogen Permeable Membrane for Low Operative Temperature](Materials Transactions, Vol.57, No.10)

名古屋大学大学院工学研究科 ○鈴木飛鳥 君
名古屋大学大学院工学研究科 助教 湯川宏 君
鈴鹿工業高等専門学校 教授 南部智憲 君
大分工業高等専門学校 教授 松本佳久 君
名古屋大学大学院工学研究科 教授 村田純教 君




日本金属学会名誉員(1名) (2017年3月15日)

立命館大学 特別招聘研究教授・京都大学 名誉教授 村上正紀 君




第28回 優秀ポスター賞受賞者 26名(2017年3月16日発表) (五十音順)

銅合金における耐応力緩和特性と転位組織の関係(P21)

茨城大学 伊藤美優君,佐藤成男君,

三菱マテリアル 伊藤優樹君,森広行君,松永裕隆君,牧一誠君,

東北大学 鈴木茂君

ステンレス鋼SUS304の水素誘起双晶界面分離における変形誘起マルテンサイト変態の役割(P59)

熊本大学 植木翔平君,峯洋二君,高島和希君

強相関電子系Ca1-xLaxMnO3の無秩序状態に出現するHuang散乱の起源(P111)

早稲田大学 遠藤智貴君,後藤崇将君,井上靖秀君,小山泰正君

Ti-22Nb-2Al形状記憶合金における自己調整組織のメゾスケール解析(P90)

東京工業大学 長内大輔君,岡本岳大君,篠原百合君,田原正樹君,

細田秀樹君,稲邑朋也君

摩擦圧接を利用したADC12ポーラスコアA1050緻密パイプの圧縮特性の調査(P43)

群馬大学 織田澤俊介君,半谷禎彦君,

芝浦工業大学 宇都宮登雄君

Mo中間層の有無によるNd-Fe-B/Fe薄膜磁石の異方性発現機構の解明(P114)

九州大学 近藤政孝君,板倉賢君,西田稔君,

山形大学 小池邦博君,加藤宏郎君,小林奎大君

ピロリン酸アノード酸化によるアルミニウム合金の超親水化・超撥水化(P62)

北海道大学 近藤竜之介君,中島大希君,菊地竜也君,夏井俊悟君,

鈴木亮輔君

黒体放射を用いた超高温熱分析装置の開発とMo系合金への適用(P83)

東北大学 澤田龍伍君,中島治樹君,大塚誠君,福山博之君,富樫陽色君,

吉見享祐君

シアーセル法と安定密度配置を用いた液体Snの自己拡散係数測定(P14)

早稲田大学 椎木政人君,福田英士君,安藤佑樹君,鈴木進補君

高温電子照射したCr23C6単結晶の微細組織変化(P92)

東北大学 鈴江瞭平君,

東京大学 叶野翔君,

東北大学 松川義孝君,佐藤裕樹君,

東京大学 阿部弘亨君

Mechanical and thermal properties of a Zr-Cu-Al alloy after solid-state amorphization by high-pressure torsion(P35)

物質・材料研究機構 QIANG Jian 君,土谷浩一君

EBSD法を用いたCu-Cr-Zr合金のクリープ疲労における転位組織変化の解明(P5)

東京大学 出口雅也君,

宇宙航空研究開発機構 戸部裕史君,佐藤英一君

γ線照射還元法を用いた多元系金属ナノ微粒子の合成(P130)

大阪府立大学 戸田晋太郎君,田中元彬君,岩瀬彰宏君,

産業技術総合研究所 田口昇君,田中真悟君,

京都大学 徐ギュウ君,

大阪府立大学 堀史説君

Co合金における加工に伴うマルテンサイト相発達と転位増殖の強度への影響(P133)

茨城大学 中川真惟子君,小貫祐介君,

東北大学 山中謙太君,

仙台高等専門学校 森真奈美君,

東北大学 千葉晶彦君,

茨城大学 佐藤成男君

原子サイト分離光電子分光法で明らかにする混合原子価化合物の電子物性(P124)

奈良先端科学技術大学院大学 橋本由介君,田口宗孝君,松井文彦君,

松田博之君,

高輝度光科学研究センター 松下智裕君,

奈良先端科学技術大学院大学 大門寛君

種々の第4元素添加によるC40/C11b複相シリサイドの組織制御(P50)

大阪大学 樋口隆幹君,池西貴昭君,萩原幸司君,中野貴由君

プロトン伝導性酸化物BaZr0.8Sc0.2O3-δの水和反応と局所構造変化― in situ XASによる直接観察―(P77)

九州大学 星野健太君,山本健太郎君,兵頭潤次君,

佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター 瀬戸山寛之君,岡島敏浩君,

九州大学 山崎仁丈君

マグネシウム合金の衝撃破壊靭性に対する溶質元素添加の効果(P76)

神戸大学 干場太一君,川智明君,

日本原子力研究開発機構 山口正剛君,

神戸大学 池尾直子君,向井敏司君

高圧ねじり加工を施したFe2VTaxAl1-x合金の超微細粒組織と熱電特性に及ぼす熱処理の影響(P103)

名古屋工業大学 増田真也君,宮崎秀俊君,西野洋一君,

物質・材料研究機構 土谷浩一君

炭素鋼ラスマルテンサイトにおける結晶学的疲労き裂進展機構の検討(P58)

熊本大学 松村卓哉君,峯洋二君,高島和希君

Ti-Mo-Al-Zr合金ワイヤ材の<001>繊維集合組織に及ぼす断面減少率の影響(P137)

東京工業大学 松本義規君,成田大樹君,篠原百合君,田原正樹君,

細田秀樹君,稲邑朋也君

Formation of nanostructures and vacancy behavior: Their role in the rapid age-hardening in an Al-Mg-Cu alloy(P16)

東京工業大学 三原麻未君,小林郁夫君,

SINTEF Calin D. Marioara 君,

CIFICEN Carlos Macchi 君,

Alberto Somoza 君

Ti-6Al-4V を用いたレーザ積層造形材の微細組織と機械的特性に及ぼす熱処理効果(P31)

芝浦工業大学 宮崎史帆君

物質・材料研究機構 草野正大君,岸本哲君,渡邊誠君,

芝浦工業大学 湯本敦史君

カーボン担持Co触媒におけるCo活性種の構造制御とその酸化反応特性(P7)

大阪大学 吉井丈晴君,中塚和希君,桑原泰隆君,森浩亮君,山下弘巳君

ナノインデンテーション法を用いたMAX相Ti2AlCにおける塑性変形開始挙動の方位依存性(P51)

東北大学 和田悠佑君,関戸信彰君,中村純也君,

物質・材料研究機構 大村孝仁君,

東北大学 吉見享祐君

Investigation of damping capacity in rolled AZ31 magnesium alloy after heat treatment(P26)

PukyongNationalUniversity Juho KWAK 君

Changyong Kang 君,Hansang Kwon 君,

Kwonhoo Kim 君




第25回 日本金属学会・日本鉄鋼協会 奨学賞 受賞者 47名(2017年3月)

北海道大学工学部 応用マテリアル工学コース 金 根佑 君

北海道大学工学部 応用マテリアル工学コース 仙田竜也 君

室蘭工業大学工学部 機械航空創造系学科 小笠原隆人 君

岩手大学工学部 マテリアル工学科 安里祐輝 君

秋田大学工学資源学部 材料工学科 坂本真人 君

東北大学工学部 材料科学総合学科 川森弘晶 君

東北大学工学部 材料科学総合学科 松本暢康 君

東北大学工学部 材料科学総合学科 八木亮太 君

茨城大学工学部 マテリアル工学科 齊藤明子 君

筑波大学理工学群 応用理工学類・物性工学主専攻 田口貴寛 君

東京大学工学部 マテリアル工学科 島田直治 君

東京大学工学部 マテリアル工学科 白形優依 君

東京工業大学工学部 金属工学科 岡田陽太郎 君

東京工業大学工学部 金属工学科 永島涼太 君

横浜国立大学理工学部 機械工学・材料系学科 宮澤大翼 君

長岡技術科学大学工学部 機械創造工学課程 橋川雄至 君

富山大学工学部 材料機能工学科 島野寛基 君

豊橋技術科学大学工学部 機械工学課程 殿塚一希 君

名古屋大学工学部 物理工学科・材料工学コース 崔敏 君

名古屋大学工学部 物理工学科・材料工学コース 樋口佳祐 君

名古屋工業大学工学部 環境材料工学科 正村将利 君

京都大学工学部 物理工学科材料科学コース 服部和樹 君

京都大学工学部 物理工学科材料科学コース 藤本誠 君

大阪大学工学部 応用理工学科 中西陽平 君

大阪大学工学部 応用理工学科 松村遼 君

島根大学総合理工学部 物質科学科・物理分野 杉本有隆 君

香川大学工学部 材料創造工学科 木谷七海 君

愛媛大学工学部 機能材料工学科 阿部駿弥 君

九州大学工学部 物質科学工学科 荒牧信助 君

九州大学工学部 物質科学工学科 福田圭祐 君

九州工業大学工学部 マテリアル工学科 稲田拓哉 君

長崎大学工学部 工学科 花岡桜 君

熊本大学工学部 マテリアル工学科 大塚聖良 君

熊本大学工学部 マテリアル工学科 吉田拓矢 君

大阪府立大学工学域 物質化学系学類マテリアル工学課程 守家隆雄 君

千葉工業大学工学部 機械サイエンス学科 高先純也 君

東京理科大学基礎工学部 材料工学科 鈴木惇市 君

芝浦工業大学工学部 材料工学科 蔵田菜緒 君

東海大学工学部 材料科学科 長谷川綾乃 君

金沢工業大学工学部 機械工学科 小林拓也 君

関西大学化学生命工学部 化学・物質工学科 岡田晏佳 君

近畿大学理工学部 機械工学科 植村強史 君

鹿児島大学工学部 機械工学科 和田裕司 君

群馬大学理工学部 機械知能システム理工学科 篠原亜門 君

福井工業大学工学部 機械工学科 畑雄貴 君

兵庫県立大学大学院工学研究科 材料・放射光専攻 野々村壮紘 君

鈴鹿工業高等専門学校 応用物質工学専攻 森唯人 君


~2017年9月6日(水)北海道大学札幌キャンパスにおいて、下記の方々が受賞されました。
皆様、おめでとうございます。~

第15回 日本金属学会学術貢献賞 受賞者(10名) (2017年9月6日)

[高Crフェライト系耐熱鋼のクリープ強度向上に関する研究]

(株)日本製鋼所室蘭製作所 副所長 東   司 君

受賞者は、高Crフェライト系耐熱鋼のクリープ強化に対するB添加の効果について研究を行なってきた。 B添加によるクリープ強化が、MXの微細化等による常に効果のあるクリープ強化機構とともに、M23C6とLaves相の粗大化を抑制することによる長時間側でより効果のあるクリープ強化機構との総和として表されること見出した。 さらに、B含有鋼の大型鍛造品の製造方法として、それぞれ最適なESR造塊条件、鍛錬条件、熱処理条件を確立し、その開発鋼を高効率対応の火力発電用大型タービンロータに用いることで、火力発電所の発電効率の向上に大きく貢献した。

[鉄鋼材料における相変態と組織制御に関する研究]

物質・材料研究機構 主席研究員 大塚 秀幸 君

受賞者は、鉄鋼材料における組織と特性について研究してきた。 熱処理と合金元素がマルテンサイト変態に及ぼす影響を調べ、新たな組成で良好な形状記憶特性を持つ鉄系形状記憶合金を開発した。 種々のタイプの高温・強磁場中変態挙動測定装置を作製して変態に及ぼす強磁場効果について調べ、磁場印加により状態図が変化することを理論的に予測するとともに、新たな磁場中での組織変化を見つけた。 最近は、BCC鉄中の原子間相互作用を第一原理計算により求め、Fe-Cマルテンサイトに関する長年の未解決問題のいくつかを解明した。

[扁平状非晶質合金粉末の作製とその応用]

TPR(株)執行役員新商品開発 第二部長 小口 昌弘 君

受賞者は、非晶質合金粉末に関する研究に従事し、溶湯から直接に扁平状非晶質合金粉末を作製する方法を見出した。 得られた粉末は1~2mmと薄い厚さと大きなアスペクト比の小判形状を有するため、樹脂、ゴム等の複合材あるいは塗料の顔料として応用した。 また、ピストンリングの表面処理の開発にも従事し、複合PVD被膜(ナノ多層膜)が従来の単層窒化物より機械的特性の向上、高摺動特性を呈することを明らかにした。 平成26年、27年には本会北陸信越支部の副支部長、支部長を歴任し、学会の支部活動の活性化と地域の鉄鋼・金属工業分野の振興に貢献した。

[低合金耐食鋼の大気腐食に関する研究]

新日鐵住金(株)鉄鋼研究所 部長 上村 隆之 君

受賞者は、鋼の大気腐食の基盤研究ならびに鋼橋等の鋼構造物用の低合金耐食鋼開発、防食技術開発を行ってきた。 特に、Kelvin Probeを用いた乾湿繰り返し環境における鋼の初期腐食挙動の解析、オキシ水酸化鉄の生成過程における共存カチオン、アニオンの影響の明確化を行い、さびによる防食機能発現機構解明に向けた成果を上げた。 また、大気腐食に及ぼす塩化物の役割について明確化し、塗膜欠陥部の腐食を著しく抑制する画期的な鋼材の開発、実用化を行い、社会インフラ鋼構造物の維持技術の発展に大きく貢献した。

[高耐熱ステンレス・高合金鋼および自動車用アルミニウム合金に関する研究]

新日鐵住金ステンレス(株) 技術アドバイザー 菊池 正夫 君

受賞者は、高耐熱ステンレス・高合金鋼や自動車用アルミニウム合金の研究開発に従事し、多くの業績を挙げた。 新日本製鐵(株)では、超々臨界圧ボイラ用オーステナイト合金、自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼等を開発した。 また、自動車へのアルミニウム合金の適用技術開発や熱処理型6000系合金のBH性改善と析出挙動の基礎的解明も行った。 九州大学では、鉄鋼の教育・研究拠点「鉄鋼リサーチセンター」の立ち上げ、運営に携わるとともに、Nb含有フェライト系ステンレス鋼の高温強化や再結晶挙動の解明等を行った。

[アルミニウム合金の用途拡大に向けた鋳造・凝固・接合の先端プロセスと組織・力学特性に関する基礎的研究]

東京工業大学物質理工学院 教授 熊井 真次 君

受賞者は、アルミニウム合金を中心とした構造用金属材料の先端的製造プロセスと組織制御、力学特性に関わる研究に取り組んできた。 偏晶凝固機構の解明と組織制御、縦型高速双ロール鋳造プロセスの開発と循環型材料製造への応用、実験的ならびに数値解析的手法による異種金属衝撃圧接メカニズムの解明、粒子分散型複合材料の微小疲労き裂成長挙動の解明等、金属材料の鋳造・凝固・接合プロセスと組織・力学特性における萌芽的問題を発掘するとともに、実用化に向けた産学共同研究を積極的に進め、学術的基礎と工学的応用の両面から当該分野の学術的・工学的発展に大きく貢献した。

[水素貯蔵材料の研究開発]

広島大学自然科学研究支援開発センター 部門長・教授 小島 由継 君

受賞者は、水素吸蔵合金、無機系水素貯蔵材料、炭素系水素貯蔵材料や複数の軽元素系水素化物と触媒の相互作用を利用した様々なナノ複合水素貯蔵材料の研究開発を行ってきた。 近年では水素貯蔵材料の中で水素量の多いアンモニアに着目し、企業との共同研究により、アンモニアを分解して固体高分子形燃料電池用高純度水素を製造するための要素技術開発を行っている。 また、平成28年度には日本金属学会中国四国支部長を務め、本学会の発展と地域において金属学に関する学術の進歩に貢献した。

[合金の高温クリープ挙動に関する研究]

弘前大学大学院理工学研究科 教授 佐藤 裕之 君

受賞者は、固溶強化合金の高温変形、クリープ曲線の定量評価や外挿に関する研究を行ってきた。 クリープ曲線全体を少数のパラメータで合理的に整理できることなどを見出している。 また、地域の企業との共同研究を推進することにより、地域の活性化や研究成果の社会への還元にも貢献してきた。 具体的な産学連携の例として、金属加工会社との共同開発によるシャント抵抗器が挙げられる。 また、支部講演会や研究発表大会の開催にも積極的に尽力し、地域の学術や技術の発展に貢献した。

[耐熱鋼および耐熱合金に関する基盤的研究]

名古屋大学大学院工学研究科 教授 村田 純教 君

受賞者は、耐熱金属材料のミクロ組織と諸特性についてエネルギー論と原子拡散の観点から研究を行ってきた。 その成果は、耐熱鋼ではラスマルテンサイト階層組織形成の解明、原子拡散に基づいた長時間クリープ強度の解明、高温水蒸気酸化における鉄クロムスピネル層の重要性の指摘などであり、ニッケル基超合金では、ラフト構造の形成・崩壊の要因解明などである。 このように、材料に現れる現象の根源的な要因を明確にしようとする研究姿勢を通じて、耐熱金属材料の学術分野の発展に大きく貢献した。

[高強度・高延性ナノ結晶/アモルファス合金の開発]

兵庫県立大学工学研究科 教授 山崎  徹 君

受賞者は、液体急冷法や電解析出法等を用いて、材料組織のアモルファス化およびナノ結晶化による高強度・高延性材料の開発研究に従事してきた。 高硬質で脆性的な破壊を生ずるナノ結晶合金やアモルファス合金に対して、塑性変形誘起のナノ結晶粒成長や、アモルファス相中のナノ結晶析出を利用して加工硬化を発現させ、高い延性を実現することに成功している。 現在、これら合金を用いた様々な精密構造部材の応用開発が進められており、ナノ構造制御による材料開発分野の発展に大きく貢献した。


第40回 日本金属学会技術開発賞 受賞者(7件,34名) (2017年9月6日)

1. パワーモジュール用アルミ一体型基板の開発

(まてりあ 56巻1号)
DOWA パワーデバイス(株) 常務取締役開発部長 小山内英世 君
DOWA パワーデバイス(株) 開発部新規開発課リーダー 結城 整哉 君
DOWA パワーデバイス(株) 開発部プロセス開発課長 井手口 悟 君
DOWA メタルテック(株) 代表取締役社長 菅原  章 君

2. 動的析出強化を活用した自動車排気部品用耐熱フェライト系ステンレス鋼(NSSC®429NF,NSSC®448EM)の開発

(まてりあ 56巻1号)
新日鐵住金ステンレス(株) 研究センター上席研究員 濱田 純一 君
新日鐵住金ステンレス(株) 研究センター主任研究員 林  篤剛 君
新日鐵住金ステンレス(株) 研究センター主任研究員 神野 憲博 君
新日鐵住金ステンレス(株) 光製造所部長代理 小森 唯志 君
新日鐵住金ステンレス(株) 商品開発部部長代理 伊藤 宏治 君
新日鐵住金ステンレス(株) 商品開発部部長代理 福田  望 君
新日鐵住金(株) 八幡技術研究部上席主幹研究員 井上 宜治 君

3. 合金鉄溶解炉による資源循環システムプロセスの開発

(まてりあ 56巻1号)
新日鐵住金(株) 八幡製鐵所ステンレス部ステンレス企画室室長 加藤 勝彦 君
新日鐵住金(株) 技術開発本部八幡技術研究部主幹研究員 浅原 紀史 君
公益財団法人鉄鋼環境基金 専務理事・事務局長 小川 雄司 君
光和精鉱(株) 代表取締役副社長 平嶋 直樹 君
新日鐵住金(株) 八幡製鐵所工程業務部主幹 府高 幹男 君
新日鐵住金ステンレス(株) 製造本部光製造所製鋼工場工場長 兼川  賢 君

4. 低熱処理変形高強度肌焼鋼ECOMAX4 の開発

(まてりあ 56巻2号)
山陽特殊製鋼(株) 研究・開発センター基盤研究室グループ長 藤松 威史 君
山陽特殊製鋼(株) 軸受営業部 丸山 貴史 君
山陽特殊製鋼(株) 研究・開発センター新商品・技術開発室 中﨑 盛彦 君

5. 集合組織を活用したメガコンテナ船用超極厚高アレスト YP460 N/mm2 級鋼の開発

(まてりあ 56巻2号)
JFE スチール(株) 技術企画部企画グループ理事 長谷 和邦 君
JFE スチール(株) スチール研究所接合・強度研究部副部長 半田 恒久 君
JFE スチール(株) 西日本製鉄所鋼材商品技術部課長 衛藤 太紀 君
JFE スチール(株) 西日本製鉄所鋼材商品技術部課長 山村 直一 君
JFE スチール(株) 厚板セクター部部長 青木 雅弘 君

6. 自動車車体の設計自由度を向上するシングルサイドスポット®溶接技術

(まてりあ56 巻2号)
JFE スチール(株) スチール研究所接合・強度研究部主任研究員 松下 宗生 君
JFE スチール(株) スチール研究所接合・強度研究部部長 池田 倫正 君
日産自動車(株) 車両生産技術本部エキスパートリーダー 樽井 大志 君

7. 導電性と耐応力緩和特性に優れた車載電子機器向け大電流用固溶強化型銅合金「MSP®8」の開発

(まてりあ 56巻2号)
三菱マテリアル(株) 中央研究所金属材料研究部研究員 松永 裕隆 君
三菱伸銅(株) 若松製作所部長 牧  一誠 君
三菱伸銅(株) 若松製作所主任 有澤 周平 君
三菱伸銅(株) 若松製作所主任 秋坂 佳輝 君
三菱マテリアル(株) 中央研究所研究員 西村  透 君
三菱マテリアル(株) 中央研究所主任研究員 森  広行 君


第15回 日本金属学会功労賞受賞者(3名) (2017年9月6日)

[学術部門]2名

[鋳造プロセスシミュレーションに関する研究]

東北大学大学院工学研究科 教授 安斎 浩一 君

受賞者は、発電所や自動車等に用いられる複雑形状を有する鋳造品の致命的な欠陥の発生をコンピュータシミュレーションにより予測することで、鋳造品の品質向上、歩留まり向上、コスト低減、といった産業界からのニーズに応えることのできるIT 技術の研究・開発に尽力してきた。 世界に先駆けて、PCを用いた鋳造用凝固シミュレーションシステムを製品化すると共に、今日では世界中で活用されている凝固・湯流れ・鋳造変形等を総合的に評価可能な鋳造プロセスシミュレーション技術の発展に多大なる貢献をした。

[先端高温構造材料の基礎研究と実用化研究]

東京大学大学院工学系研究科 教授(現:東京工科大学教授) 香川  豊 君

受賞者は、金属基複合材料の製造と力学特性評価解析、セラミックス基複合材料の力学特性の評価解析、コーティングの損傷解析と時間依存特性の評価、異種材料界面力学特性の評価解析の分野において、実験と理論の両面から優れた業績を挙げると共にこれらの分野の研究を国際的に先導した。 特に、連続繊維を複合化したセラミックスマトリックス複合材料と耐熱・耐環境セラミックスコーティングの分野における材料強度学の立場から行った材料の信頼性確保に関する一連の研究は、先端高温構造材料分野の学術の発展及び実用化に大きく貢献した。

[技術部門]1名

[エネルギー用高機能鋼材に関する研究]

新日鐵住金化学(株) 常務執行役員 五十嵐正晃 君

受賞者は、長年にわたり、難加工性高強度油井用Ni基合金の開発とその組織制御の研究、高効率火力発電用耐熱鋼の開発とクリープ損傷機構の研究、と一貫してエネルギー関連材料の高機能化開発に従事し、我が国における当該分野の科学技術、学術の発展に貢献した。 また、hcp金属・合金の転位芯構造と応力下での挙動を原子シミュレーション解析で明らかにするなど、金属材料の強化法と塑性変形挙動に着目した材料開発に注力して、幅広く金属工学の発展に努めた。


第27回 日本金属学会奨励賞 受賞者(7名) (2017年9月6日)

[物性部門]

[ナノ薄膜に対する構造解析手法の開発と物性に関する研究]

東京工業大学物質理工学院 助教 春本 高志 君

受賞者は、回折結晶学的な観点からナノ薄膜に対する構造解析手法を開発すると共に、膜構造と物性の関係について研究を行ってきた。主な業績として、(1)原子分解能STEMによるAlN薄膜の成長極性決定過程の解明、(2)FCC(111)薄膜に対する弾性定数を用いない格子歪解析手法の提案、(3)有機酸溶液処理によるナノ多孔質貴金属薄膜の作製とその水素吸脱着特性評価が挙げられる。 現在は、ナノ薄膜における水素化過程の解明に加え、水素を利用した膜改質プロセスの開発に取り組んでおり、今後の更なる展開が期待される。

[組織部門]

[β-Ti 合金のマルテンサイト変態と形状記憶効果に関する研究]

東京工業大学フロンティア材料研究所・未来産業技術研究所 助教 田原 正樹 君

受賞者は、電子顕微鏡等を用いた材料内部組織の観察により、β-Ti合金のマルテンサイト変態と形状記憶効果について研究を行ってきた。 主な業績として、①侵入型原子による局所格子変調構造の生成機構と形状記憶特性の関係の解明、②等温的に生成されるマルテンサイトについての核生成・成長過程の解明、③組織解析に基づく新規形状記憶合金の開発、などが挙げられる。 また現在は、β-Ti合金単結晶試料を用いたマルテンサイトの塑性変形挙動の解明と形状記憶特性の高性能化にも取り組んでおり、今後の更なる展開が期待される。

[力学特性部門]

[計算科学を用いた破壊・変形機構の解明と力学特性改善への応用に関する研究]

同志社大学理工学部 助教 湯浅 元仁 君

受賞者は、第一原理計算と分子動力学法といった計算科学手法を用いて、金属材料の破壊と変形について原子・電子レベルから解析を行ってきた。 主な業績として、(1)偏析元素による鉄鋼材料の粒界破壊機構の解明、(2)マグネシウム合金における双晶と転位の相互作用解析、(3)マグネシウム合金の加工性改善のための合金設計指針の提案、などが挙げられる。 現在は、上記知見をもとに、計算科学を援用することによる金属材料の力学特性改善手法の構築に取り組んでおり、今後の更なる展開が期待される。

[材料化学部門]

[触媒および磁石材料の希少元素代替を目指した学際研究]

東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 小嶋 隆幸 君

受賞者は、レアアースフリー永久磁石の候補材料であるL10型FeNi規則合金に関する基礎研究を行ってきた。 その後、貴金属代替が求められる触媒に着目し、磁性材料研究で培った経験を活かした触媒研究に取り組み始めた。 特に最近は、磁性材料として有名なホイスラー合金を触媒に応用し、革新的な成果を挙げつつある。 他に、磁性に着目した触媒研究や触媒分野の知見を活かした磁性材料研究なども進めており、異分野融合研究による将来の希少元素代替への貢献が期待される。

[材料プロセシング部門]

[溶液成長法による新規材料開発に関する研究]

東北大学多元物質科学研究所 助教 川西 咲子 君

受賞者は、溶液成長法によるワイドギャップ結晶の低温高速育成および溶液成長時のミクロな界面現象の解明に関する研究を行ってきた。 特にシリコンカーバイドの溶液成長では、(1)冶金学に基づく低温高速成長用の合金溶媒の提案、(2)結晶の可視光透過性を利用した溶液成長界面のIn-situ観察法の確立、などの成果を挙げている。 現在は、育成結晶の高品質化を目指し、成長モードの決定機構の解明や溶液成長時の点欠陥制御に取り組んでおり、今後の更なる展開が期待される。

[工業材料部門]

[金属材料学に基づく骨微細構造構築のための生体材料開発に関する研究]

大阪大学大学院工学研究科 助教 松垣あいら 君

受賞者は、異方性微細構造を有する生体骨や骨代替材料に関して、自在な骨配向性制御のための生体材料開発、それに基づく、細胞・組織の異方性機能発現機構の解明を両輪として研究を遂行している。 金属材料学的手法を駆使した細胞配列化制御、さらには異方性材料としての骨基質の微細構造構築に成功し、材料学の立場から生命現象を捉えることで、革新的な骨代替材料創製を達成している。 生体材料と生体組織の相互作用により制御される、極めて特徴的な生体内での機能材料構築プロセス解明を目指して成果を挙げつつあり、今後の更なる展開が期待される。

[工業材料部門]

[材料解析を基礎とした生体用Co-Cr 合金の高機能化に関する研究]

仙台高等専門学校総合工学科 助教 森 真奈美 君

受賞者は、生体用Co-Cr合金の加工熱処理における組織形成と材料特性の関係について研究を行ってきた。 難加工性である当該合金において、ひずみ誘起マルテンサイト変態と加工硬化・破壊メカニズムの関係を明らかにし、人体に無害な窒素を利用した相安定性制御により冷間加工性の改善に成功している。 また、最先端の解析手法を駆使して熱間加工組織を定量的に評価し、新たな高強度化手法を提案している。 実機プロセスへの応用や工業製品における不具合解析にも積極的に取り組んでおり、今後の更なる展開が期待される。

第7回 日本金属学会まてりあ賞 受賞者(3編3名) (2017年9月6日)

[第7回まてりあ論文賞](2編2名)

1. 電子線ホログラフィによるナノスケール磁化の直接観察 (まてりあ 55巻7号)

デンマーク工科大学 電子顕微鏡センター 主任研究員 笠間 丈史 君

2. 収差補正走査型透過電子顕微鏡による2 次元準結晶構造研究の新展開 (まてりあ 55巻8号)

東北大学 名誉教授 平賀 贒二 君

[第7回まてりあ 啓発・教育賞](1編1名)

1. 測定の不確かさ評価について (まてりあ 54巻6号,7号,8号,9号)
  1. 不確かさとは何か
  2. 不確かさの算出手順 1
  3. 不確かさの算出手順 2
  4. 不確かさの活用

産業技術総合研究所 主任研究員 城野 克広 君


第14回 日本金属学会村上記念賞 受賞者(1名) (2017年9月6日)

[準結晶物質の確立とその発展]

東北大学多元物質科学研究所 教授 蔡  安邦 君

受賞者は、多くの安定な準結晶を発見することで、準結晶という物質を確立したほか、準結晶の安定性の起源は合金の電子構造に由来することを明らかにした。 さらに初めて2元系の安定な準結晶を発見し、完全な準結晶の構造解析を可能にした。 この合金は全く新しい準結晶構造を有するだけでなく、この合金から派生した多くの同タイプの準結晶ならびに近似結晶に量子臨界現象、超伝導や多彩な磁性を示すことで、今日の準結晶合金の発展をもたらした。


第14回 日本金属学会村上奨励賞 受賞者(4名) (2017年9月6日)

[超弾性・形状記憶能を有したマグネシウム合金の創製]

東北大学大学院工学研究科 助教 安藤 大輔 君

受賞者は、SEM、TEM等を用い、様々な材料物性と内部金属組織との関係性について研究を行ってきた。 特にマグネシウム合金に関する研究では、汎用合金を用いて変形・破壊挙動における変形双晶の役割に関して細やかなデータを提示しており、同研究分野で広く利用されている。 近年では、準安定BCC相を有するマグネシウム合金においてorthorhombic相へのマルテンサイト変態が生じ、超弾性変形や形状回復能などの機能性が付加できることを示した。 同材料は航空宇宙向け、医療用の材料としての展開も期待される。

[金属および金属間化合物の結晶欠陥構造と塑性変形挙動の相関に関する研究]

東北大学金属材料研究所 准教授 岡本 範彦 君

受賞者は、金属および金属間化合物の結晶欠陥構造と塑性変形挙動の相関に関する研究を原子スケールに遡って一貫して行ってきた。 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の皮膜を構成するFe-Zn系金属間化合物の構造解析と微小体積力学特性評価、ナノ結晶Cu微小試験片の変形機構の解明、およびL12型金属間化合物の変形機構の解明などが挙げられる。 最近は、FCC型高エントロピー合金の力学特性の解明および複雑組成固溶体合金における固溶強化量の解釈に挑戦するなど、今後の更なる発展が期待される。

[半導体におけるスピン生成・スピン制御に関する研究]

東北大学大学院工学研究科 准教授 好田  誠 君

受賞者は、半導体におけるスピン軌道相互作用を活用し、新たな原理に基づく電気的スピン生成とスピン制御を実現することでスピン物性の新たなページを切り拓く顕著な成果を挙げてきた。 具体的には、シュテルン-ゲルラッハの実験と呼ばれる量子力学の基本原理を適用した半導体における高効率スピン生成やスピン緩和を抑制できる永久スピン旋回状態の電気的制御を実現した。 いずれの成果も将来のスピン機能物性および量子情報処理において必要不可欠な基盤技術となる。

[高スピン分極ホイスラー合金材料とそのスピントロニクスデバイス応用に関する研究]

物質・材料研究機構 主任研究員 桜庭 裕弥 君

受賞者は、Co基ホイスラー合金材料を用いたトンネル磁気抵抗素子や巨大磁気抵抗素子を作製し、そのハーフメタル性に由来する高いスピン分極率を世界に先駆けて実証する巨大な磁気抵抗比を観測した。 近年は、ハーフメタル性と異方性磁気抵抗効果の相関を明らかにするなど、今後のハーフメタル材料探索において重要な知見を確立させている。 室温における高スピン分極率は、あらゆるスピントロニクスデバイスの性能を向上させる有用な特性であり、今後、実用デバイスへの展開が大きく期待される。


第65回 日本金属学会論文賞 受賞者(5編18名) (2017年9月6日)

[組織部門]1編(4名)

1. Grain Subdivision Mechanism Related to Partial Disclinations in Severe Plastic Deformation: A Molecular Dynamics Study

(Materials Transactions, Vol.57, No.9)
金沢大学 機械工学系 教授 下川 智嗣 君
金沢大学 (現:日立製作所) 山下 智彬 君
金沢大学 機械工学系 助教 新山 友暁 君
京都大学大学院 工学研究科 教授 辻伸  泰 君

[力学特性部門]1編(3名)

2. 原子論に基づく鉄合金のマクロ降伏強度予測のための理論モデルの構築

(日本金属学会誌 80巻 3号)
大阪大学大学院 基礎工学研究科 新里 秀平 君
物質・材料研究機構 主任研究員 譯田 真人 君
大阪大学大学院 基礎工学研究科 教授 尾方 成信 君

[材料化学部門]1編(3名)

3. Recovery of Dy from a Mixture of Nd, Fe, B and Dy by Electrolysis in Molten LiCl

(Materials Transactions, Vol.57, No.8)
秋田大学大学院 理工学研究科 准教授 福本 倫久 君
前田製管(株) 仙台支店 佐藤 勇気 君
秋田大学大学院 理工学研究科 教授 原   基 君

[材料プロセシング部門]1編(3名)

4. Disruption of Collagen Matrix Alignment in Osteolytic Bone Metastasis Induced by Breast Cancer

(Materials Transactions, Vol.57, No.12)
大阪大学大学院 工学研究科 特任助教 関田 愛子 君
大阪大学大学院 工学研究科 助教 松垣あいら 君
大阪大学大学院 工学研究科 教授 中野 貴由 君

[工業材料部門]1編(5名)

5. Anoumalous Temperature Dependence of Hydrogen Permeability through Palladium-Silver Binary Alloy Membrane and Its Analysis Based on Hydrogen Chemical Potential

(Materials Transactions, Vol.57, No.5)
名古屋大学大学院 工学研究科 助教 鈴木 飛鳥 君
名古屋大学大学院 工学研究科 助教 湯川  宏 君
鈴鹿工業高等専門学校 教授 南部 智憲 君
大分工業高等専門学校 教授 松本 佳久 君
名古屋大学大学院 工学研究科 教授 村田 純教 君


第27回 日本金属学会若手講演論文賞 受賞者(3編3名) (2017年9月6日)

1. In-Situ Brinell インデンテーションによるMg-Y 単結晶の塑性変形挙動観察

(日本金属学会誌 81巻4号)
北海道大学(現弘前大学大学院理工学研究科 助教) ○峯田 才寛 君
北海道大学大学院工学研究院 教授 三浦 誠司 君
北海道大学(現弘前大学大学院理工学研究科 教授) 岡  和彦 君
産業技術総合研究所 研究員 宮島 達也 君

2. 無容器プロセスを用いたFe-Cu 二相分離合金の凝固過程と微細構造

(日本金属学会誌 81巻5号)
芝浦工業大学大学院理工学研究科 ○小林  旦 君
芝浦工業大学大学院理工学研究科 教授 永山 勝久 君

3. Hydrogenation of Propyne Verifying the Harmony in Surface and Bulk Compositions for Fe-Ni Alloy Nanoparticles

(Materials Transactions, Vol.58, No.5)
東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 ○小嶋 隆幸 君
東北大学 多元物質科学研究所 助教 藤枝  俊 君
東北大学 多元物質科学研究所 加藤玄一郎 君
東北大学 多元物質科学研究所 准教授 亀岡  聡 君
東北大学 多元物質科学研究所 教授 鈴木  茂 君
東北大学 多元物質科学研究所 教授 蔡  安邦 君


第29回 日本金属学会講演大会優秀ポスター賞受賞者 46名

(2017年9月7日受賞決定) (五十音順)

1 押込み荷重急変法による純粋な加工硬化率と回復速度の測定(P207)

日本大学 五十嵐仁 君,高木秀有 君,藤原雅美 君

2 金属薄膜の流動を誘起した規則配列金属微粒子形成プロセスの開発(P33)

北海道大学 池田大樹 君,中島大希 君,菊地竜也 君,夏井俊悟 君,鈴木亮輔 君

3 単結晶Cu集電体を用いた金属Li負極の不均一析出抑制(P69)

名古屋大学 石川晃平 君,原田俊太 君,田川美穂 君,宇治原徹 君

4 FePtAg薄膜の表面形態と磁気特性の熱処理温度依存性(P96)

東北学院大学 石田響 君,嶋敏之 君,土井正晶 君

5 周期的組織のSEM観察において現れる縞状コントラストの成因(P168)

九州大学 猪俣茜 君,奥村聰 君,赤嶺大志 君,板倉賢 君,村上恭和 君,西田稔 君

6 Ti-Pd 合金のB19 マルテンサイト双晶界面の高分解能電子顕微鏡観察とひずみ解析(P134)

九州大学 岩本孝信 君,副島洋平 君,赤嶺大志 君,板倉賢 君,西田稔 君

7 (Mn, Cr)AlGeの安定構造と電子状態(P227)

鹿児島大学 衛藤翔一 君,福田雄介 君,三井好古 君,伊藤昌和 君,小山佳一 君,藤井伸平 君

8 強相関電子系Ca1xLaxMnO3 のx=0.25 組成付近における軌道整列状態の特徴(P238)

早稲田大学 遠藤智貴 君,後藤崇将 君,井上靖秀 君,小山泰正 君

9 PdAg合金ナノ粒子の水素雰囲気下でのXAFS 構造解析(P75)

九州大学 扇一輝 君,東原登史紀 君,吉岡聰 君,松村晶 君,
京都大学 草田康平 君,北川宏 君

10 溶融CaCl2 中でのTi 還元挙動へのTi溶質の影響(P54)

関西大学 岡田晏佳 君,下川翔 君,森重大樹 君,竹中俊英 君

11 立方晶-正方晶相変態の組織形成に及ぼす核生成形態の影響(P176)

九州大学 片ノ坂聡人 君,赤嶺大志 君,西田稔 君,板倉賢 君,
大阪大学 福田隆 君,掛下知行 君

12 Mg2(Si, Sn)熱電化合物合金の安定性評価のための状態図確立(P78)

東京工業大学 兼子奈都実 君,久保陽祐 君,木村好里 君,KELK 李 鎔勲 君,松並博之 君,八馬弘邦 君

13 Ti-Nb-O 合金のマルテンサイト変態に及ぼす溶体化処理温度の影響(P45)

愛媛大学 川野颯太 君,小林千悟 君,岡野聡 君

14 周期配列Al ディンプルモールドを用いたナノレンズアレイの作製(P242)

北海道大学 河原魁 君,菊地竜也 君,夏井俊悟 君,鈴木亮輔 君

15 Ultra-high aspect ratio laminatedporous structure fabricated in Ti-Al alloy(P260)

東北大学 魏代修 君,小泉雄一郎 君,千葉晶彦 君

16 純Mg単結晶の一軸疲労試験における疲労破壊機構の結晶方位依存性(P157)

熊本大学 城戸優汰 君,中村旭伸 君,角田星也 君,津志田雅之 君,北原弘基 君,安藤新二 君

17 銅[-111]単結晶の繰り返し変形に伴う転位組織形成過程(P160)

東京工業大学 木村匠 君,宮澤知孝 君,藤居俊之 君,
名古屋大学 荒井重勇 君

18 TaスパッタリングによるNd-Fe-B系異方性粉末の作製(P113)

東北大学 木村萌 君,松浦昌志 君,手束展規 君,杉本諭 君

19 Fe-Ni 合金への積層造形用電子ビーム照射により形成される溶融凝固組織の解析(P52)

東北大学 倉田宗明 君,小泉雄一郎 君,千葉晶彦 君

20 第一原理計算によるスピンギャップレス・ホイスラー合金のデザイン(P97)

大阪大学 黒田文彬 君,藤井将 君,福島鉄也 君,小口多美夫 君

21 Ni-Nb 系非晶質合金の局所構造単位(P259)

東北大学 黒田燎 君,有馬寛 君,川又透 君,杉山和正 君

22 ナノファイバー形成アノード酸化法を用いた撥水性・撥油性アルミニウム合金の創製(P186)

北海道大学 近藤竜之介 君,中島大希 君,菊地竜也 君,夏井俊悟 君,鈴木亮輔 君

23 グリッド状に微細加工したNd-Fe-B薄膜のNd系合金キャップ層の効果(P115)

東北学院大学 齋藤豪太 君,土井正晶 君,嶋敏之 君

24 Mg吸収端における2 次元異常小角散乱測定の実現とその応用(P195)

京都大学 浴畑嶺 君,橋本隆弘 君,奥田浩司 君,
Spring-8 為則雄祐 君,
Photon Factory 北島義典 君

25 溶融塩中で電析したLi液滴の高速顕微鏡観察(P55)

北海道大学 数土卓也 君,夏井俊悟 君,菊地竜也 君,鈴木亮輔 君

26 Mg-14 mass%Li-3 mass%Al 合金冷間圧延材のミクロ組織と剥離腐食発生挙動(P25)

関西大学 関口雄毅 君,森重大樹 君,
三徳 後藤崇之 君,深川智樹 君,竹中俊英 君

27 CoCrFeMnNi系高エントロピー合金の室温変形メカニズムに関する基礎研究(P142)

神戸大学 世良田遼平 君,池尾直子君,
物質・材料研究機構 大澤嘉昭 君,土谷浩一 君,
神戸大学 向井敏司 君

28 超微細粒Ni多結晶材の集合組織と弾性変形挙動の評価(P230)

東京工業大学 高増宣仁 君
新日鉄住金 小ケ倉勇樹 君,
東京工業大学 宮嶋陽司 君,尾中晋 君

29 γ線照射還元によるCuナノ粒子生成時の添加イオン効果(P16)

大阪府立大学 田中元彬 君,戸田晋太郎 君,岩瀬彰宏 君,
産業技術総合研究所 田中真悟 君,田口昇 君,
京都大学 徐虬 君,
大阪府立大 堀史説 君

30 Al添加α-Ti合金における双晶界面の高分解能観察(P224)

九州大学 徳永隼人 君,山﨑重人 君,光原昌寿 君,中島英治 君,
新日鐵住金 塚本元気 君,國枝知徳 君

31 MoSiBTiC合金のミクロ組織,機械的性質および酸化挙動に及ぼすTiの影響(P79)

東北大学 畠山友孝 君,吉見享祐 君

32 Mg合金強化相としてのMg17Al12単結晶の塑性挙動解析(P226)

大阪大学 早川恭平 君,萩原幸司 君

33 純マグネシウム単結晶の室温以下における引張変形挙動の結晶方位依存性(P198)

熊本大学 林田岳 君,金山龍竹 君,津志田雅之 君,北原弘基 君,安藤新二 君

34 Ti-Mo-Al合金における応力誘起α″マルテンサイトの塑性変形挙動(P221)

東京工業大学 原遼太朗 君,田原正樹 君,稲邑朋也 君,細田秀樹 君

35 非晶質GeSn薄膜の結晶化過程と高濃度Snを含む結晶Geの実現(P118)

九州工業大学 東山将士 君,木村俊樹 君,石丸学 君,
大阪府立大学 奥川将行 君,仲村龍介 君

36 Fe触媒表面におけるCO分子解離反応の第一原理分子動力学解析(P244)

東京大学 福原智 君
熊本大学 三澤賢明 君,下條冬樹 君,
東京大学 澁田靖 君

37 有効原子半径に基づいた新規Mg基金属ガラスの探索(P258)

大阪府立大学 舩田翔太 君,瀧川順庸 君,上杉徳照 君,東健司 君

38 マグネシウムの衝撃破壊特性に及ぼすカルシウムおよび亜鉛の添加効果(P203)

神戸大学 前田智哉 君
リコー 長谷貴之 君,
神戸大学 池尾直子 君,向井敏司 君

39 Mn1xCrxAlGe (0<x<1.0)の磁気相図(P7)

鹿児島大学 増満勇人 君,吉永総志 君,三井好古 君,
東北大学 梅津理恵 君,
鹿児島大学 廣井政彦 君,
東京大学 上床美也 君,
鹿児島大学 小山佳一 君

40 Ti-6Al-4V 単一コロニーにおけるマイクロ引張挙動(P153)

熊本大学 松崎悠弥 君,郭光植 君,眞山剛 君,峯洋二 君,高島和希 君

41 Effect of Alloying Elements on Oxidation-Induced Recrystallization in Titanium Alloys(P215)

九州大学 YANG YANG 君
物質・材料研究機構 北嶋具教 君,原徹 君,原由佳 君,岩崎智 君

42 置換型不純物を含む酸化物および窒化物中での水素の固溶状態(P74)

北海道大学 渡邉拓海 君,國貞雄治 君,坂口紀史 君

43 窒素イオンビーム照射Pt-Ni(111)表面合金系の酸素還元反応特性(P89)

東北大学 渡邉将 君,笹川廉 君,浅野真仁 君,轟直人 君,和田山智正 君

44 6H-SiCの貫通らせん転位を利用した3C-SiC核生成制御(P50)

東北大学 渡邊遼 君,川西咲子 君,柴田浩幸 君

45 多元分離式スパッタリング法により作製したCo-Sr-F ナノ複層薄膜のトンネル磁気誘電特性(P101)

東北大学 王誠君,曹洋 君,張亦文 君,
電磁材料研究所 小林伸聖 君,大沼繁弘 君,
東北大学 増本博 君

46 Numerical analysis of effects of compressive strain on the evolution of interfacial strength of steel/nickel solid-state bonding(P63)

東京大学 Pongmorakot Kittipan 君,南部将一 君,小関敏彦 君

入会・会員

ページトップへ