日本金属学会

表彰(日本金属学会)

~2022年9月21日(水)、福岡工業大学において、下記の方々が本会の賞を受賞されました。
おめでとうございます。~
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~2022年3月15日(火)下記の方々が本会の賞を受賞されました。
今回は賞状の発送をもって贈呈式に代えさせていただきます。~
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第67回 日本金属学会賞受賞者

北海道大学名誉教授・JSTシニアフェロー 毛利 哲夫 君


毛利哲夫君は、金属材料の相平衡・相変態の理論研究の分野において、電子、原子、そして組織レベルのそれぞれの階層におけるアプローチを融合した独創的研究を行い、新規な相平衡の発見や相安定性の起源解明、さらに相変態経路安定性や原子レベルからの内部組織変化の理解など、マルチスケールの視点に基づく相平衡・相変態の学理の発展に大きく貢献し、材料数理学なる分野を構築しつつある。成果は以下の4項目に分類し得る。
(1) 第一原理に基づく合金相平衡の解明
 統計力学の手法であるクラスター変分法(Cluste Variatio Method, CVM)に基づく広範囲の原子間相関を導入した高精度エントロピー形式と、密度汎関数法の電子論計算から求めた原子間相互作用力によるエネルギー形式を組み合わせ、原子番号の情報のみから合金相平衡を計算する手段を発展させた。Au-Cu, Cu-Agなどの貴金属系の二元系合金やIII-V族半導体の状態図計算に応用し、有限温度における規則相や固溶体相の安定性の起源を、原子間相関と原子間相互作用力、さらには電子状態密度にまで遡って明らかにした。特に、Fe-Ni実験状態図で未解明のL10 相の安定化の発見は、第一原理計算の威力を発揮した成果と評価される。
(2) 規則合金の安定性と規則化kineticsの理論研究
 CVMを時間軸に拡張した経路確率法を世界で初めてfcc系合金に適用し、長距離規則度のみならず短距離秩序の緩和挙動も含めた、L10相やL12相の規則化の変態経路の詳細を解明した。これに加え、Cahn-Hilliardのスピノーダル分解理論を、規則合金系を対象にしたスピノーダルオーダリング理論へと拡張し、第一原理からCuおよびFe系規則相のスピノーダルオーダリング温度を算出したことは極めて先駆的な研究である。
(3) 連続変位型空間格子に基づく相平衡の理論計算
 CVMを初めとする従来の相平衡理論がrigidな空間格子を前提とするのに対し、同君は連続変位CVMを用いることで局所緩和による規則-不規則変態温度の低下を示し、従来の理論計算の問題点を明らかにした。この連続変位CVMの考え方を変位型相変態や有限温度磁性の解析に拡張し、ZrO2の立方晶-正方晶変態やNiのキュリー温度の第一原理計算へも適用した。又、経路確率法の経路の自由度を配列の自由度に置き換えるというユニークな手法を展開し、空孔型機構による規則化の第一原理kinetics計算の端緒を開いた。
(4) 材料組織の第一原理計算法の開発
 離散格子モデルのCVMと連続体モデルのフェーズフィールド法の混成アプローチを考案し、原子間相互作用力の情報のみからの組織変化計算手法を開発して電子論計算と組み合わせ、Fe-Pd合金やFe-Pt合金における逆位相規則ドメイン構造の第一原理計算に成功した。これは規則化に伴う長距離・短距離規則の不均一分布の時間発展、さらには逆位相境界エネルギーやその異方性が原子レベルの情報から詳細に記述できる画期的な手法であり、第一原理からの組織予測のためのマルチスケールモデリングの先駆的研究である。
 これらの業績により、相変態分野のオリンピックともいうべき国際会議PTM等、数多くの国際会議の基調講演に招待されてきた。さらに、APDIC(状態図国際委員会)Chairmanや日本学術振興会・第172委員会委員長などを歴任し、国内外における本分野の発展にも貢献してきた。本会においても3期の理事在任、分科会委員長としての調査・研究事業を推進、また講演大会の運営にもあたった。加えてスーパーコンピュータ「京」やポスト「京」プロジェクトにおいては材料科学分野の代表として、我が国の計算材料科学研究の地歩を固めるとともに、本分野の人材育成にも多大な貢献があった。現在はJST-SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」サブプログラムディレクターとして、日本の素材産業のさらなる国際競争力の強化に貢献している。



第63回 日本金属学会技術賞 受賞者 (4名)

(50音順)

[分光分析による鉄鋼の耐環境性向上に関する研究開発]

日本製鉄(株)先端技術研究所 主幹研究員 土井 教史 君

受賞者は、構造用鋼の健全性、信頼性向上のための腐食や酸化機構解明や、性能向上のための評価、分析技術の開発に取り組んできた。開発材の腐食生成物や酸化層/母材界面に対して動的、非破壊的な観察技術を駆使し、低合金鋼さびの鋼材保護性や、ガス改質プラント材の信頼性に対し、その材料の機能や特性発現メカニズムを明らかとするとともに、成分最適化に資する成果を挙げた。これら研究成果は、材料の耐環境性能向上に貢献するものである。

[高強度鋼とその製造プロセスメタラジーに関する研究開発]

日本製鉄(株)技術開発本部 主幹研究員 西畑 敏伸 君

受賞者は、一貫して高強度鋼とその製造プロセスメタラジーに関する研究開発に従事し、特に、ホットスタンプ(HS)用1.5GPa級鋼板の国内実用化に貢献、さらに世界初となるHS用1.8GPa級鋼板の開発実用化に成功した。加えて、Ms点以下で生じるオートテンパー現象、オーステナイト(γ)中の炭素拡散現象、γ化を伴うセメンタイト溶解反応に対する理解を深化させた。これらの業績は、工学、工業的価値が極めて高く、鉄鋼組織制御に対する有益な学問的指針を与えるものである。

[高機能銅合金に関する研究開発と実用化]

三菱マテリアル(株)中央研究所 上席研究員 牧 一誠 君

受賞者は、高機能銅合金の開発と実用化、高性能化、金属成分と微細組織が特性に及ぼす影響の研究開発を通して、非鉄金属材料分野の発展に大きく貢献してきた。特に、Mgを溶質元素とした固溶強化によって固溶強化型銅合金の大幅な高強度化、高導電率化、耐熱性向上を実現できることを明らかにし、高強度Cu-Mg過飽和固溶合金、ならびに高導電性Cu-Mg希薄固溶合金を開発、実用化しており、電子・電気機器の発展に大きく貢献した。これら一連の業績は工業的見地のみならず学術的にも優れたものである。

[ステンレス鋼および自動車用高強度鋼板の高性能化]

JFEスチール(株)薄板セクター部 主任部員 横田 毅 君

受賞者は、鉄鋼メーカーの研究者としてステンレス鋼および自動車用薄鋼板の研究開発に従事し、集合組織制御を活用したフェライト系ステンレス鋼の高加工性化、銀添加によるステンレス鋼への抗菌性の付与など高機能なステンレス鋼の開発・実用化を達成した。また、980-1470 MPa級の自動車用高強度冷延鋼板の開発・実用化に携わり、自動車用部品の軽量化を通してCO2削減に貢献してきた。



第28回 日本金属学会増本量賞 受賞者(1名)

[医療用金属材料を含む構造・機能性金属材料の力学特性と加工プロセスに関する研究]

東北大学金属材料研究所 教授 千葉 晶彦 君

受賞者は、Ni-Al系金属間化合物、Ti合金などの力学的特性に関する研究、高強度・高弾性Co-Ni基合金や医療用Co-Cr-Mo合金の高温加工プロセスに関する研究、電子ビーム方式を中心とする金属積層造形に関する研究において業績を挙げている。とりわけ、Co-Ni-Cr-Mo-Fe基合金では機械式腕時計用動力ゼンマイとして実用化された。また、医療用Co-Cr-Mo系合金は人工股関節用ステムとして事業化を達成した(商標:COBARION合金)。歯科鋳造用Co-33Cr-5Mo合金(COBARION EX)を開発し、国内の大手歯科材料メーカーにより販売されている。



第61回 日本金属学会 谷川・ハリス賞 受賞者(2名)

(50音順)

[医療用金属材料を含む構造用金属材料の力学特性と加工プロセスに関する研究]

東北大学金属材料研究所 教授 千葉 晶彦 君

受賞者は、高温構造用金属間化合物、Co-Ni基超合金、生体用Co-Cr-Mo合金、およびTi合金などの力学的特性・高温強度、高温加工プロセスに関する研究を行ってきた。特に、熱間鍛造技術に基づくインテリジェント鍛造技術の開発、国内では先駆となる電子ビーム積層造形(EBAM)技術に関する研究に注力し、世界最高性能のEBAM装置開発を推進し、EBAMによる造形技術とその最適化手法のための基礎学理の確立を目指し研究開発に取り組み、構造用金属材料研究の発展に大きく貢献した。


[構造用金属材料の加工熱処理によるナノ・ミクロ組織制御とその力学特性に関する研究]

京都大学大学院工学研究科 教授 辻 伸泰 君

受賞者は、構造用金属材料の加工・熱処理によるナノ・ミクロ組織制御と、その力学特性の発現機構に関する基礎的研究を継続して行い、「金属材料の動的再結晶・動的相変態」、「バルク金属材料の結晶粒超微細化法」、「バルクナノメタルの力学特性の解明と高強度・高延性化」などで優れた研究成果を挙げている。特にバルクナノメタルに関しては世界をリードする研究者として数多くの論文を発表するとともに、研究人材育成、大型研究プロジェクトの実行、学会活動などを通じて分野の活性化にも寄与している。



第80回 日本金属学会功績賞 受賞者(5名)

(部門別50音順)

[学術部門]

[Mg基合金の変形・破壊メカニズムとその高機能化に関する研究]

東北大学大学院工学研究科 准教授 安藤 大輔 君

受賞者は、Mg合金をはじめとする軽金属材料に対して、結晶構造変態を利用した機能性付与を主眼とする研究に従事してきた。特に、hcp構造を有する既存Mg合金を超越するためbcc型のMg-Sc合金に着目し、相変態制御を駆使した時効硬化現象や、マルテンサイト変態による形状記憶特性を世界に先駆けて見出し、既存のMg合金にはない機能性という新しい性能を付与する事に成功し、軽量・高比強度以外の用途開拓に繋がる成果を挙げ、今後の更なる発展が期待される。


[マルチスケール組織解析による金属材料の高特性化に関する研究]

物質・材料研究機構磁性・スピントロニクス材料研究拠点 主幹研究員 佐々木 泰祐 君

受賞者は、3DAP、収差補正STEM、FIB/SEMを併用したマルチスケール解析を種々の金属材料に適応して微細構造と特性の関係を解明し、高特性材料の開発まで行ってきた。これまでに6000系アルミニウム合金並みの強度-成形性バランスを有する熱処理型展伸Mg合金の開発や、ネオジム磁石の保磁力メカニズム解明などの研究で、インパクトのある業績を挙げてきた。今後も、マルチスケール組織解析を軸足において種々の金属材料の高特性化に向けた研究の展開が期待される。


[電流-スピン流-熱流の高効率変換に資する材料創製に関する研究]

東北大学金属材料研究所 准教授 関 剛斎 君

受賞者は、スピントロニクスデバイスの高性能化と多機能化を目指し、電流-スピン流-熱流の相互変換のための材料創製に取り組んできた。主な業績として、強磁性規則合金における電流-スピン流変換の観測および電流-熱流変換の可視化、スピン流の高効率な創出を可能とする非平衡合金の発見、金属人工格子を用いた電流-熱流の変換効率の増大などがある。これらはスピントロニクス材料開発の更なる発展に大きく貢献するものであり、今後の幅広い研究展開が期待される。


[金属の微細組織と腐食挙動の関係解明による表面機能化・高耐食化に関する研究]

物質・材料研究機構構造材料研究拠点 主席研究員 堤 祐介 君

受賞者は、電気化学、腐食工学、および生体材料学分野に関連した研究に取り組んできた。金属表面での電気化学反応を利用したインプラント材料表面へのさまざまな生体機能の付与を実現する表面処理を開発した。また、レーザを用いた先端プロセスや電気化学的表面処理との融合により、金属材料の耐食性を飛躍的に向上させる技術開発にも取り組み、着実に成果を挙げている。これらの研究業績は構造材料や生体材料の発展に大きく貢献するものであり、今後の幅広い研究展開が期待される。


[金属のナノポーラス化技術開発とその応用に関する研究]

東北大学金属材料研究所 准教授 和田 武 君

受賞者は、その素材の性質上ポーラス化が難しいとされてきた金属材料をナノポーラス化する研究に取り組んでいる。主な成果として、金属溶湯中での合金固体からの成分溶出現象を利用した金属溶湯脱成分技術を確立し、従来は作製不可能であった数々のナノポーラス金属を創出した一連の研究が挙げられる。それらを蓄電デバイスに応用してその性能を大きく向上させた。更に金属溶湯脱成分技術を利用したナノ複合材料創製や表面改質技術開発にも研究を展開しており、今後の更なる発展が期待される。




第53回 日本金属学会研究技能功労賞 受賞者(14名)

(50音順)

(独)造幣局研究所研究開発課 天野 和久 君

受賞者は、入局以来37年間、貨幣製造工程の一つである検査および成形作業に従事後、研究開発部門に在籍し、貨幣等への微細加工に関する研究開発などを行い、例として、レーザー加工機や電子線描画装置による貨幣用金型への微細加工技術の開発、実用化に至るまで長きにわたって貢献を続けてきた。これらの微細加工技術は、記念貨幣のデザイン性の向上や貨幣に対する国民の信頼維持には欠かせない偽造防止技術の高度化に寄与し、貨幣製造に関する研究開発および社会貢献への功績は顕著である。


東北大学金属材料研究所 板垣 俊子 君

受賞者は、長年にわたり多くの無機材料の元素分析だけではなく標準化関連の分析等も行い、広く元素定量分析業務に従事してきた。特に、ICP発光分光法、原子吸光法、吸光光度法による元素分析技術、それらに必要な化学的試料前処理に関する幅広い技術や専門知識を基に、鉄鋼、非鉄合金、セラミックス等の多岐にわたる元素分析技術の基盤を構築した。分析では材料中の構成元素から微量元素まで対象にし、的確で最適な手法により高度で正確な分析業務行い、関連研究分野の発展に大きく貢献した。


日鉄テクノロジー(株)尼崎事業所解析技術部 小笠原 重明 君

受賞者は、奉職以来、金属材料の成分分析に携わり、材料の研究開発や材料評価技術の発展に大きく貢献してきた。中でも金属材料中の微量不純物元素の定量分析に用いるグロー放電質量分析(以下GD-MS)においては、通常では分析困難な形状の試料の分析手法や定量方法の考案および技術確立を行い、GD-MS分析分野の進歩ならびに金属材料分野の産業発展に貢献した。現在も新たな分析手法確立に向けて検討しつつ、新たな技術者育成に向けた指導も積極的に行っている。


日鉄テクノロジー(株)九州事業所研究試験部 香月 恵介 君

受賞者は、約30年間にわたって、精錬試験、真空溶解試験、熱間圧延試験、冷間圧延試験、熱処理試験、ステンレス鋼評価試験および軌条評価試験に携わり、上工程から下工程まで鉄鋼製造技術・製品開発の支援業務に従事してきた。その幅広い知識と深い見識に基づいた安定かつ高精度なデータは、実用化された多くの技術の礎となった。さらに、若手の技能系社員や技術者の育成にも力を注ぎ、研究環境整備や体制構築、安全管理に大きな貢献を果たしており、その多岐にわたる研究開発への功績は顕著である。


(株)日本製鋼所新事業推進本部金属材料事業推進室 河野 博 君

受賞者は、1981年に日本製鋼所に入社して以来、大学卒研究員を補助する実験員・研究技術員として、鉄鋼材料、セラミックス材料、水素貯蔵合金など様々な材料開発およびその応用システムの開発に従事した。特に、水素貯蔵合金を用いたアクチュエータの心臓部および駆動部の開発・改良に貢献し、応答性が高く信頼性に優れた新規構造を考案するなど顕著な成果を挙げた。また、マイクロ水素貯蔵合金タンク、大型容器への合金充填方法の最適化の応用システム開発にも携わるなど、水素貯蔵技術の進展への功績は顕著である。


愛知製鋼(株)材料試験技術部 木下 隆行 君

受賞者は、入社以来33年間にわたり機械試験や試作溶解部門で研究開発の支援業務に従事してきた。特に「エンジン部品の疲労試験方法開発」、「実働応力測定機構を付与した高速回転曲げ疲労試験機開発」、「同一溶解複数異鋼種製造時の成分コントロール方法開発」の業績は自動車用鋼開発のスピード向上に大きく貢献した。また、高度な試験精度を維持するための試験機保全や日常管理手法の伝承にも取り組んでおり、その多岐にわたる研究開発への貢献と功績は顕著である。


東京大学工学系研究科 木村 久雄 君

受賞者は、奉職以来、35年以上にわたり、在職した研究室および所属組織での技術指導、支援を通じて、大学における研究教育活動に貢献してきた。具体的な研究技術支援では、高温融体材料研究、磁性材料研究等に従事し、研究成果は日英学術論文誌に10編、園際会議発表15件、国内学会発表20件で報告している。また、学生への実験の技術指導、支援を行い、特に化学分析技術においては、機器分析以外にも容量法、重量法などの基本となる分析法について指導教育するなど、研究教育への貢献は顕著である。


兵庫県立大学姫路工学キャンパス経営部 城井 一正 君

受賞者は、旋盤、フライス盤、研削盤、鋳造装置、溶接装置等の機器に精通し、学生の機械工作実習の指導と研究および実験機器の製作を一貫して担当してきた。機械工作実習に関しては、溶接、鋳造、仕上げ研磨の三つの分野のリーダーとして活躍し、安全第一で学生に決して怪我をさせないことを第一に指導を行ってきた。学生の教育、研究者の機器作製支援で多くの実績を上げ、教育・研究に果たした役割は、非常に大きく、その功績は顕著である。


JFEスチール(株)スチール研究所研究企画部 平良 洋一 君

受賞者は、入社以来30年以上にわたって製鋼分野の精錬および鋳造プロセスの技術開発のため、ラボ実験、品質評価、各種実験・評価装置の製作および工場実験支援に従事し、広く製鋼プロセス技術の開発に貢献した。特に精錬プロセスの研究開発で中心的役割を果たし多大な業績を残している。その後、長年培った経験知識をもとに、研究所の安全や資産・設備管理、研究所若手への技術・自主改善活動等への支援を担当し、研究活動のレベルアップに大きく貢献し、研究開発における功績は顕著である。


日本製鉄(株)技術開発本部尼崎研究支援室 永 正市 君

受賞者は、入社以来、鉄鋼材料、磁性材料、半導体材料等の材料開発に従事してきた。特に、粉体物性が深く関与する結晶材料開発において熱電素子用Siクラスレート材料の開発、深紫外レーザー用基板として注目されているAIN単結晶基板の育成、溶液からのSiC単結晶育成技術の開発に取り組み成果を挙げてきた。その結晶育成技術は、水素社会化に資する高機能性結晶材料の合成に貢献するものであり、社外からの評価も高い。職場の人材育成にも大きく貢献しており、その功績は顕著である。


日鉄テクノロジー(株)東日本事業所研究試験部 早坂 英之 君

受賞者は、入社以来31年間にわたり、薄鋼板材料の各種試験設備導入と評価試験法確立の研究開発支援業務に従事してきた。自動車の車体軽量化ニーズに呼応した980MPaを超える超ハイテン材を対象とした各種特性評価技術の考案と適用に優れた能力を発揮し、自動車用薄鋼板の研究開発に大きく貢献した。さらに、若手作業者の安全性・作業性を考慮した試験・実験方法を考案した。これらは、薄鋼板新商品開発の陰の功労者として高く評価される功績である。


JFEスチール(株)スチール研究所研究企画部 村元 保彦 君

受賞者は、入社以来39年にわたり、各種鋼板に関し圧延加工、材料評価、溶接性評価まで幅広く対応・遂行し、低温特性に優れた厚鋼板、大型海洋構造物に使用される極厚鋼板、方向性電磁鋼板などの新材料・商品開発に貢献してきた。FCAWやSAW等の各種溶接装置の導入・運用に加え、各溶接工場での溶接トライを成功させた実用化への貢献は特筆できる。また、現場力を維持・向上させるため後進に向けての技能伝承に精力的に尽力した。以上のように、研究技能の上に果たした役割は多大であり、その功績は顕著である。


東北大学工学部 山崎 二男 君

受賞者は、36年間、沖電気工業(株)、(財)半導体研究振興会半導体研究所および東北大学において半導体プロセス開発と材料評価および人材育成・安全管理の面で研究開発支援を行ってきた。具体的には半導体メモリーの高集積化、半導体の品質管理に必須の各種分析装置と解析技術の創意工夫などで、研究者の開発支援に大きな貢献をしてきた。また若手技術者育成や、半導体関連施設の維持にも尽力するなど、企業・研究所・大学における材料研究活動を支え、材料科学発展に貢献した功績は顕著である。


長岡技術科学大学技術支援センター 吉井 一夫 君

受賞者は、奉職以来32年間、機械工作実習等の教育、工作機械利用者への安全教育・技術指導、研究に必要な治具や装置の製作など、教育研究の支援を行ってきた。特に、材料試験に用いる試験片の加工においては、材料や工作機械の特性を考慮したうえで、適正な工具や切削油、および加工パラメータを選定することで、試験片表面の組織変化を極力抑制しつつ高い寸法精度の加工を行い、信頼性の高いデータを得ることに大きく貢献してきた。以上のように、これら教育研究への功績は顕著である。



第72回 日本金属学会金属組織写真賞 受賞者

最優秀賞 1件(5名)

【第3部門】透過電子顕微鏡部門

「(Li、La)Ti03対応傾角粒界における局所イオン伝導測定および原子構造解析」

東京大学工学系研究科 特任研究員 佐々野 駿 君
東京大学工学系研究科 特任准教授 石川 亮 君
北海道大学電子科学研究所 教授 太田 裕道 君
東京大学工学系研究科 教授 柴田 直哉 君
東京大学工学系研究科 教授 幾原 雄一 君

優秀賞 2件(10名)

【第1部門】光学顕微鏡部門

「ポリアニリンによるNiの粒界を優先拡散する水素の可視化」

東北大学金属材料研究所 柿沼 洋 君
東北大学金属材料研究所 助教 味戸 沙耶 君
東北大学金属材料研究所 助教 北條 智彦 君
東北大学金属材料研究所 准教授 小山 元道 君
東北大学金属材料研究所 教授 秋山 英二 君

【第3部門】透過電子顕微鏡部門

「Pt3Co合金触媒粒子表面Pt skin層の精密原子間距離計測」

ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 大森 雄貴 君
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 黄 馨慧 君
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 上級研究員 仲山 啓 君
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 上級研究員 小林 俊介 君
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 主席研究員 桑原 彰秀 君



日本金属学会名誉員推戴者(2名)

(50音順)

京都大学 特任教授・京都大学 名誉教授・大阪大学 名誉教授 白井 泰治 君


白井泰治君は、1979年京都大学大学院工学研究科博士課程を単位修得退学後、京都大学工学部助手に採用され、京都大学助教授を経て1996年に大阪大学教授、2008年に京都大学教授に就任した。2016年京都大学を定年退職し、同年京都大学特任教授となり現在に至っている。この間、材料物性学に関して多くの業績を挙げ、同時に学生の教育と研究者の育成に尽力してきた。
 主な研究業績は、材料中の格子欠陥に関する研究、新たな原子空孔形成機構の発見、新しい陽電子消滅測定装置の発明などである。
 同君は、高温その場で陽電子寿命を計測する新たな手法を開発し、世界で初めて純鉄中の高温熱平衡原子空孔の融点直下までの測定に成功するなど、多くの純金属・合金・金属間化合物・半導体・金属酸化物中の原子空孔とその集合体の挙動を、広範かつ系統的に明らかにした。
 代表的な水素吸蔵合金であるLaNi5において、常温で水素を吸蔵させるだけで極めて高濃度の原子空孔が形成されることを発見した。また、金属合金の規則・不規則変態、時効析出、内部酸化でも未知の原子空孔形成現象を発見し、これらすべてを包括的に説明する新たな原子空孔形成機構として「相変態誘起空孔」を提唱している。
 同君は、日本で初めてβ+-γ同時計測陽電子寿命測定装置を開発し、各種材料の陽電子寿命高温その場測定を可能にする一方、固体素子(アパランシェフォトダイオード)による陽電子の検出に世界で初めて成功し、陽電子寿命計測装置の大幅な小型化・軽量化にも成功した。
 一方、日本陽電子科学会会長、日本物理学会領域代表などを務め、また日本金属学会会長、Materials Transactions誌編集委員長、日本金属学会誌編集委員長として、本会の発展のために尽力した。



筑波大学 名誉教授 宮崎 修一 君


宮崎修一君は、1979年に大阪大学大学院博士課程修了後、同年筑波大学講師に採用され、1998年教授に就任し、2015年名誉教授となり引続き特命教授を5年間務めた。
 主な研究業績は、マルテンサイト変態に伴う結晶学的な側面と形状記憶効果および超弾性に関する力学挙動と材料組織学的な側面について、数多く先駆的成果を挙げたことである。
 Ti-Ni合金の特性が、合金組成の他に内部組織に極めて敏感である事を明らかにし、形状記憶特性を飛躍的に改善するための組織制御の方法を確立すると共に超弾性を実現した。現在世界中で供給されているTi-Ni系形状記憶合金の加工熱処理法の基本技術である。
 歪み焼鈍法によるTi-Ni合金単結晶作製に成功し、マルテンサイト相の結晶構造を決定すると共に、変態に伴う結晶学的知見(晶癖面、結晶方位関係、変態歪みの方位依存性等)を実験的に明らかにし、形状記憶効果の機構を解明した。さらに菱面体相(R相)変態についても、同様に基本特性を解明し、Ti-Ni合金の基礎を先駆的に確立した。
 Ti-Ni合金スバッタ薄膜に微細な内部組織を作る熱処理方法を発見し、駆動力を実用レベルに到達させた。さらに、Ti-Ni-Pd合金薄膜ダイアフラム型マイクロアクチュエータで、100Hzの応答性を実現し、強力大変位マイクロアクチュエータ材料の開発に成功した。
 貴金属を含まないTi-Ta-(Sn、Al)系合金やTi-Ni-Zr-Nb合金で加工性の良好な合金開発が可能であることを実証し、新たな高温形状記憶合金の可能性を見出した。
 NiフリーのTi基超弾性合金の開発が望まれ、Ti-Nb系、Ti-Mo系、Ti-Zr系を基本とする、三元系、四元系、五元系など多くのTi基合金を開発した。また、酸素を含むTi基合金のゴムメタル特性には、ナノドメインの変態が関わることを見出し、変形機構を解明した。
 これらの研究業績に対して、山崎貞一賞(2002)、文部科学大臣賞(2004)、つくば賞(2014)、本多記念賞(2015)などを授与され、本会においては学会賞(2014)、村上記念賞(2012)、功労賞(2010)、増本量賞(2010)、谷川・ハリス賞(2009)、功績賞(1995)などを受賞するほか、2012年には本多記念講演を行い、また日本金属学会会長を務め、本会の発展に貢献した。



第5回 日本金属学会フェロー認定者 (1名)

 物質・材料研究機構 特別研究員 広沢 哲 君


第67回 日本金属学会賞受賞記念講演

3月15日(火) A会場
9:40~10:40

司会 副会長 三浦 誠司
会長 中野 貴由


 開会の挨拶


 講演「材料数理学としてのクラスター変分法」

北海道大学 名誉教授・JSTシニアフェロー 毛利 哲夫 君




第67回 本多記念講演

3月15日(火) A会場
10:50~11:50

司会 本多記念講演委員長 御手洗 容子
会長 中野 貴由


 開会の挨拶


 講演「永久磁石の高性能化にみる複合組織制御」

東北大学大学院工学研究科 教授 杉本 諭 君




第30回 日本金属学会・日本鉄鋼協会 奨学賞 受賞者 46名

(50音順)

群馬大学理工学部 赤石 瑞季 君

秋田大学理工学部 五十嵐 優樹 君

東北大学工学部室 石川 立 君

室蘭工業大学工学部 伊瀬 公哉 君

愛媛大学工学部 今田 真未 君

豊橋技術科学大学工学部 今堀 弘佑 君

横浜国立大学理工学部 今村 光佑 君

鈴鹿工業高等専門学校専攻科 江口 直暉 君

近畿大学理工学部 大田 尚輝 君

東京理科大学先進工学部 岡田 菜佑子 君

鹿児島大学工学部 鬼丸 翔伍 君

東北大学工学部 皆瀬 陽平 君

芝浦工業大学工学部 勝木 健太 君

京都大学工学部 加藤 由大 君

東海大学工学部 金田 修一 君

関西大学化学生命工学部 亀岡 優翔 君

九州工業大学工学部 黒木 優成 君

名古屋大学工学部 小泉 知也 君

九州大学工学部 近藤 謙太郎 君

北海道大学工学部 坂牧 知紘 君

兵庫県立大学工学部 塩木 貴也 君

熊本大学工学部 塩山 貴大 君

富山大学都市デザイン学部 四宮 悠成 君

岩手大学理工学部 菅原 大 君

大阪大学工学部 瀬口 侑右 君

東京大学工学部 高原 泉 君

島根大学総合理工学部 田中 弘樹 君

金沢大学理工学域 棚田 大輔 君

仙台高等専門学校専攻科 千葉 ありさ 君

東京工業大学物質理工学院 唐 若娜 君

京都大学工学部 中川 楓互 君

金沢工業大学工学部 中林 直哉 君

名古屋工業大学工学部 成川 皓泰 君

東北大学工学部 根本 菜摘 君

長岡技術科学大学工学部 橋本 裕朔 君

東京工業大学物質理工学院 原 巧 君

千葉工業大学工学部 久恒 圭人 君

香川大学創造工学部 日野 直人 君

名古屋大学工学部 深津 義士 君

大阪大学工学部 藤田 達也 君

九州大学工学部 藤原 陸 君

大阪府立大学工学域 本田 このみ 君

早稲田大学基幹理工学部 馬渕 勇司 君

茨城大学工学部 萬波 馨 君

北海道大学工学部 南 達哉 君

東京大学工学部 山下 諒将 君


入会・会員

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