日本金属学会

表彰(日本金属学会)

2023年9月20日(水)
富山大学において、下記の方々が本会の賞を受賞されました。
おめでとうございます。
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2023年3月8日(水)
東京大学駒場Iキャンパスにおいて、下記の方々が本会の賞を受賞されました。
おめでとうございます。
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第68回 日本金属学会賞受賞者

日本医療研究開発機構理事長、東京工業大学名誉教授 三島 良直

 相平衡・相反応・相安定性を利用し、原子レベルの欠陥構造から凝固におけるマクロスケールにいたる組織制御を展開して、高温構造材料や熱電などの機能性材料の開発のために、特に金属間化合物を基調とした研究を広く展開した。代表的な研究は、NiおよびCo基のL12、E21、B2型金属間化合物とそれらをベースとする超合金との組織と力学特性の解明、Nbを主体とする超高温構造材料の開発、熱電特性などの機能性金属間化合物の開発が挙げられる。

(1) NiおよびCo基型金属間化合物と超合金の研究開発

 多元系超合金開発の基盤研究としてγ-Ni固溶体母相およびγ′-Ni3Alの相平衡に関して、Ni-Al-X 3元系状態図に関する系統的な研究を実施し、添加元素XのNiやAlへの置換傾向という観点から整理し、金属間化合物における置換挙動を最近接原子間の相互作用から分類可能な式表現を提案し熱力学的解釈を加えた。また、組織安定性がγマトリックスとγ′析出物の整合性に強く依存することから、格子定数ミスマッチに及ぼす添加元素Xの影響を詳細に調べるとともに、第3元素添加により溶液から育成した多数のNi3Al-X単結晶の機械的性質とクリープ特性を調べ、相安定性との関連を解明し、多数のL12型金属間化合物の強度の温度依存性を、APB型やSISF型などの面欠陥のタイプにより整理した。Co-AlやFe-Al基合金ではγ′に代わるアルミナイドに着目し、炭素によりL12類似構造を安定化したE21基合金やB2 CoAlとγCoを組み合わせた二相合金に関して、基礎からタービンの試作までを行い、これら新規超合金開発の基礎を築いた。

(2) Nb 基を主体とする超高温構造材料の研究開発
 エネルギー効率の向上に資するタービンブレードの動作温度上昇を目指し、NbやMoなどの耐火金属と耐酸化性を付与するSiとを主要構成元素とする超高温材料について、その組織と強度・靱性の関係を明らかにした。シリサイドの優れた高温強度を損なうことなく、靱性が低いという欠点を克服するため、凝固プロセスを制御してシリサイド母相内に連続繊維状の延性相が整列配向した組織を作り込むことに成功し、第三世代単結晶Ni基超合金を遙かに凌ぐ高温強度と良好な室温靭性の両立が可能であることを実証した。この組織設計指針は、他のシリサイド合金においても強度・靱性バランスの実現に有効であると認められている。また、Nb基合金の相平衡に対する添加元素の影響を明らかにするとともに、高度な組織解析手法を駆使した高温変形機構や酸化機構の解明など、強制冷却を必要としない次世代タービンブレード開発の基礎を築いた。

(3) 機能性金属間化合物、特に熱電材料に関する研究開発
 機能性金属間化合物、特に熱電材料に関して、相平衡に基づく組織制御の知見をベースに先駆的な研究を行った。環境低負荷元素で構成されるCoSi系、β-FeSi2系、MnSi2-x系などの遷移金属シリサイド、さらにはハーフホイスラーTiNiSn系に注力し、その材料設計を体系的に展開した。真性半導体β-FeSi2は、Co添加でN型、Mn添加でP型に作り分けできる利点を持つが、包析反応と共析反応の固相反応で形成されるため、均質なβ単相の作製には長時間の熱処理が必要となる。この解決を目指し、状態図情報を整備し、β単相組織の形成過程を検討した。特に、Cu添加に対して、電気抵抗変化によるβ単相化速度の評価から、Cu添加はβ単相化を促進するが、それに伴う相平衡変化がβ単相化を妨げる効果を持つことなど明らかにした。このように、実用化に資する高熱電無次元性能指数ZT値を目指した熱電金属間化合物の開発の基礎を築いた。
 以上に加え、耐熱鋼、核融合炉用ベリリウム基金属間化合物、形状記憶合金などで顕著な研究成果があり、また、スペースシャトルの宇宙実験に関わるなど、多岐にわたる貢献がある。さらに、本会のみならず多くの学会や公益財団において、会長や理事としてその発展に大きく尽力している。東京工業大学の学長も務め、現在では日本医療研究開発機構理事長として、材料学のみならず日本および世界の科学技術の発展に多大な尽力を続けている。




第64回 日本金属学会技術賞 受賞者 (3名)

(部門別50音順)

ステンレス薄板の成形技術開発

日鉄ステンレス(株)研究センター センター長 石丸 詠一朗

受賞者は、ステンレス薄板に対して組織制御による成形性向上と独自成形技術の開発として、プロセスメタラジーとシミュレーション技術を活用した研究開発に従事してきた。難加工材の認識があるステンレス薄板の成形性に関して、シミュレーションを用い変形挙動を歪みと応力に要素分離し、引張特性を最大限に発揮させる成形方法を開発した。さらに省合金ステンレス鋼へ対象を拡大し、LCAにおける環境負荷低減に貢献しており学術的にも工業的にも優れたものである。

高強度鋼板の接合技術の開発と接合強度特性に関する研究

日本製鉄(株)技術開発本部鉄鋼研究所 室長 富士本 博紀

受賞者は、一貫して自動車用鉄鋼材料の接合技術の研究開発に従事し、ホットスタンプ鋼板のスポット溶接ソリューション技術開発と強度特性解明による国内実用化、大型輸送機器用の軽量補助ブレーキでの新接合技術の実用化、自動車用鋼板レーザ溶接部の欠陥発生メカニズムの解明、高強度鋼板のアーク溶接継手強度に及ぼす拡散性水素の影響解明などを達成した。これにより部品の軽量化が可能となりCO2削減に貢献した。これら一連の業績は工業的見地のみならず学術的にも優れたものである。

鉄鋼材料のX線その場観測技術と合金設計に関する研究開発

日本製鉄(株)技術開発本部先端技術研究所 課長 米村 光治

受賞者は、X線・電子線さらには放射光を駆使しナノ・ミクロ組織制御に従事、前半は機能材料としてのエレクトロニクス材料、後半は構造材料としての鉄鋼材料の研究開発に取り組んできた。近年では、X線自由電子レーザーを用いた鉄鋼材料の超急速加熱・冷却での転位の瞬間的な動きの観測にも成功し、高性能化・高品質化の可能性を見出した。これらの研究成果は、学術的な進歩・発展に寄与してきたのみならず、先駆的手法の積極的活用と緻密な解析によって、材料実用化開発にも大きく貢献した。




第29回 日本金属学会増本量賞 受賞者(1名)

相変態と強加工を利用した機能材料の開発

物質・材料研究機構若手国際研究センター センター長 土谷 浩一

受賞者はTiNi系形状記憶合金を強加工により非晶質化/ナノ結晶化することで変態挙動や生体適合性等が大きく変化することを明らかにした。またCr-Mn-Fe-Co-Ni系多元固溶体合金においてfcc-hcpマルテンサイト変態による形状記憶効果を見い出した。さらにFe2VAl系熱電材料に関してHPT加工によるナノ結晶化と粒界偏析による粒成長抑制で熱伝導率を半減することに成功するなど、相変態や強加工を利用した金属系機能材料の研究開発に関して卓越した業績を挙げてきた。




第62回 日本金属学会 谷川・ハリス賞 受賞者(2名)

(部門別50音順)

耐熱材料の組織設計指導原理の構築と実用化に関する研究

東京工業大学物質理工学院材料系 教授 竹山 雅夫

受賞者は、平衡論、速度論、高温強度学をベースに、耐熱材料の熱処理による組織制御と特性発現に関する基礎的な研究を行い、世界に類のない金属間化合物強化型オーステナイト系耐熱鋼や高靭性鍛造TiAl基合金の組織設計指導原理を構築するとともにその実用化に向けた応用研究を行ってきた。これらは受賞者の常識に囚われない発想から生み出されたものである。これらの研究を通じて、人材育成はもちろん、多くの産学連携プロジェクトのリーダーを務め、金属学の進歩・発展に貢献をしている。


構造材料の3D/4D 損傷・破壊挙動とその制御に関する研究

九州大学大学院工学研究院機械工学部門 教授 戸田 裕之

受賞者は、量子ビームを用いた4Dイメージングとその解析技術を先導し、高分解能、高コントラスト、高速、高機能なイメージング技術を開拓した。特に、様々な力学量をバルクで高精細4Dマッピングするなどし、構造材料の複雑な損傷・破壊挙動の解明に供した。これらは、全体積、全時間、イメージベースを特徴とする特徴的な研究アプローチと言える。さらには、これを各種構造材に応用し、構造材料の不均一、不規則で確率的な力学挙動解明や力学特性に優れる材料の創製指針の提示にまで繋げた。




第81回 日本金属学会功績賞 受賞者(8名)

(部門別50音順)

[学術部門]

計算科学的手法を用いた機能性材料に関する研究

九州大学大学院総合理工学研究院 教授 飯久 保智

受賞者は、電子論に基づく第一原理計算を状態図計算へ援用することで、新しい構造材料・機能性材料の設計方法について研究を進めてきた。これまでに、長周期積層構造を有するマグネシウム合金の形成メカニズムに関する研究や、鉄鋼における水素/マルテンサイト変態相互についての研究で、インパクトのある業績を挙げてきた。今後も計算科学的な見地からの機能発現メカニズムの解明、また太陽電池材料・熱電材料などの新材料開発に向けた研究の展開が期待される。


合金および金属間化合物の結晶欠陥構造と塑性変形挙動の相関に関する研究

東北大学金属材料研究所 准教授 岡本 範彦

受賞者は、収差補正STEMや放射光X線回折を併用して原子スケールに遡って合金および金属間化合物の結晶欠陥構造を精密解析し、塑性変形挙動との相関解明に関する研究を一貫して行ってきた。合金化溶融亜鉛めっき鋼板の皮膜を構成するFe-Zn系金属間化合物の構造解析と微小体積力学特性評価や、FCC型ハイエントロピー合金を含む固溶体合金における固溶強化量の新規予測スケール因子の提案など世界に先駆けた研究が挙げられ、今後の更なる発展が期待される。


高精度き裂計測のための革新的超音波フェーズドアレイ映像法の開発

東北大学大学院工学研究科 准教授 小原 良和

受賞者は、き裂の高精度超音波計測法の開発に関する数多くの研究成果を上げてきた。超音波探傷における最難関課題である閉じたき裂に対しては、大振幅入射によりき裂面が接触振動する非線形現象を導入した非線形超音波フェーズドアレイ映像法を開発し、その計測精度を大きく向上させた。さらに、超多点レーザスキャンに基づく3D超音波映像法も創出し、複雑形状き裂の高分解能3D映像化にも成功した。これらの一連の研究成果は国内外で高く評価されており、今後の更なる発展が期待される。


交差相関に基づく界面磁気機能材料の創製に関する研究

大阪大学大学院工学研究科 准教授 白土 優

受賞者は、電荷・スピン・結晶の相関に基づく界面物性制御の新原理を開拓し、本原理をスピントロニクス材料に適用することで、従来は制御できなかった反強磁性材料の磁気機能の開拓と高機能化を実現した。これらの原理を解明するために、放射光を用いた独自の磁気計測技術も開発し、ナノ秒ダイナミクスへも発展させつつある。最近では、制御対象を金属・蛋白質界面に拡げ、磁気機能を持つ蛋白質材料の開発にも展開しているなど、今後の幅広い研究展開と活躍が期待される。


材料創製プロセスが生み出す組織形成を利用した合金設計に関する研究

名古屋大学大学院工学研究科 准教授 高田 尚記

受賞者は、鋳造・鍛造、3Dプリンタ、溶融めっき、加工熱処理等、種々の材料創製プロセスが生み出す組織形成の理解とそれに基づく材料・プロセスの設計に関する研究に従事した。近年では3Dプリンタで積層造形した金属材料の組織の特徴を見出し、特異な力学機能の発現機構を解明するだけでなく、熱力学計算に基づいた耐熱Al合金を鋳造・鍛造プロセス向けに設計し、産業応用を見据えた合金開発がなされている。種々の材料創製プロセスを利用した合金設計原理の構築は今後の発展が期待される。


ナトリウム金属融液を用いた新規結晶育成法の開発

東北大学金属材料研究所 准教授 森戸 春彦

受賞者は、ナトリウム金属融液を特異反応場として捉えた新たな結晶育成法の開発に従事している。特に、自らが作成したナトリウムとシリコンの二元系状態図をもとに新たなシリコン結晶育成法を開発し、特異形態のシリコン結晶創製やシリコン結晶の新奇精製手法の開発など多くの研究成果を挙げている。また近年では、シリコン原子がカゴ状に結合したシリコンクラスレートの結晶育成にも成功し、次世代半導体基板の開発に取り組んでいる。今後も独創的な結晶育成手法により、結晶工学分野において更なる研究発展が期待される。


原子論的アプローチによる結晶・アモルファス金属の微視的構造と変形機構に関する研究

物質・材料研究機構構造材料研究拠点 主任研究員 譯田 真人

受賞者は、原子論的解析を基盤とし結晶・アモルファス金属の微視的構造と変形機構の研究に取り組んできた。特に、鉄中のらせん転位と種々の置換型元素との相互作用の起源、格子欠陥が転位を介して巨視的な力学特性に影響を及ぼす機構、アモルファス金属をより未緩和で均質な変形にするための熱的プロセスにおいて、力学特性向上の原理原則の理解につながる業績を挙げている。今後も、種々の金属材料に対して力学特性の発現機構と影響因子の解明に貢献する研究展開が期待される。


半導体用鉛フリーはんだボールの熱疲労環境下における長寿命化に関する研究

日本製鉄(株)技術開発本部先端技術研究所 室長 寺嶋 晋一

受賞者は、スマートフォンなどの高性能モバイル機器に半導体デバイスを接合する「半導体用はんだボール」の大きな課題であった、熱疲労環境下での長寿命化に精力的に取り組み、疲労き裂の進展挙動をはんだ材料の動的再結晶に着眼して解明したことを通じて耐熱疲労特性の発現機構を明らかにし、はんだ材料の開発に成功して当該分野の発展に貢献した。



第54 回日本金属学会研究技能功労賞 受賞者(8名)

(部門別50音順)

東北大学多元物質科学研究所 技術室 工藤 友美

受賞者は、1991年文部技官として東北大学非水溶液化学研究所に入所以来、現在も一貫してガラス加工技術による研究支援に携わってきた。これまで、パルスEPR測定用光照射型窒素フロー温度可変クライオスタット、ESR測定用液体窒素デュワー、CVD用石英反応管、電池材料評価用ビーカーセル等のガラス製実験装置を作製してきた。なかでも、3He偏極ガス封入用ガラスセルの製作では当初から研究者と協議し高度なガラス製実験装置を製作し、偏極セルの安定供給に大きく貢献している。


日鉄テクノロジー(株)東日本事業所開発試験部 小林 正行

受賞者は、長年にわたり薄鋼板の評価試験法の確立や業務改善を通じ、研究開発および製造支援業務に従事してきた。特に、体系化された理論と簡略化した実験評価を組合せ、材料の成形限界線図の精度良く簡便な作成方法を確立、厚鋼板疲労試験方法への薄板開発知見を応用し、溶接部疲労強度向上機能も付加したFCA鋼商品開発、試験用ガス炉の雰囲気制御および均熱帯制御方法の改善による顧客と同様の炉内加熱環境を実現したホットスタンプ材商品開発などを行い関連研究分野の発展に大きく貢献した。


日鉄ステンレス(株)研究センター試験分析室 末次 輝彦

受賞者は、1981年に日本鋼管株式会社に入社、2001年に物質・材料研究機構に転じて以来、研究試料の切断・鏡面研磨・腐食・硬さ測定を担当する試料作製室にて、その運営の責任者として活躍してきた。その中で、研磨に関する技術指導や装置の維持管理を行ってきた。高度な分析のためには精度の高い表面を作り出す必要がある。受賞者はよくこの要求にこたえてきた。物質・材料研究機構の研究基盤を支えてきたと言え、高く評価できる。


物質・材料研究機構技術開発・共用部門 中里 浩二

受賞者は、1983年4月に日新製鋼株式会社に入社以来、一貫してステンレス鋼の実験評価および材料開発業務に従事しており、新商品の開発ならびに製造プロセスの技術開発に多大な貢献をしてきた。主な業績を以下に記載する。①耐摩耗性に優れた新商品NSSCWR-1の開発に主担当として貢献した。②ステンレス鋼の超純水洗浄性評価技術を確立、洗浄性に優れる製造条件を提案した。③ステンレス鋼の高周波加熱時に生じる黄色変色の要因を特定、変色の抑制方法を提案した。


福井工業大学センター管理課 中矢 明彦

受賞者は、34年間、“機械実習”での技術教育を行うとともに、各種の研究用実験装置の製作、そして学生のプロジェクト活動でのものづくり教育に貢献してきた。工作機械での作業を初めて体験する普通科高校出身の学生、つまり機械実習初体験の学生の指導に定評があり、学生の技術力・安全意識の向上に繋げている。また、受賞者の卓越した金属加工技術の支援を受けて研究・実験装置を製作した教員、学生は多い。以上のように、研究開発のための基盤形成・発展に果たした役割は非常に大きく、その功績は顕著である。


(独)造幣局研究所研究開発課 藤山 晶広

受賞者は、貨幣材料の基礎データの収集や検査作業の自動化に関する研究など幅広く研究開発に取り組んできた。特に貨幣の偽造防止技術の研究開発に永く従事しており、2021年11月から発行された新しい500円貨幣に盛り込まれている微細線、微細点、マイクロ文字、異形斜めギザ等の多くの偽造防止技術の開発に、大きく貢献している。開発した様々な微細加工技術の活用を通じて、国民の貨幣に対する信頼の維持と国の文化を象徴する記念貨幣の製造に貢献しているものであり、高く評価されている。


(地独)北海道立総合研究機構産業技術環境研究本部工業試験場 三戸 正道

受賞者は、1983年に北海道立工業試験場へ入庁後、金属試料評価に不可欠な機器金属部品等の加工及び評価を行い、研究者の業務を支援してきた。特に、金属積層造形の造形加工部品の高精度加工や切削加工条件の検討、塑性加工部品性能評価装置の設計・部品加工、レーザー熱処理後性能評価に係る部品の精密加工に携わった。加えて、候補者が確立した様々な加工・計測技術はそのノウハウも含めて次世代の若手職員へ伝承されており、今後の当機構の技術的展開にも大きく貢献している。


JFE スチール(株)スチール研究所鋼管・鋳物研究部 山田 学

受賞者は、長年にわたり鋳造製品および鋼管製品の研究開発における各種実験、試験に携わり、新プロセス、新商品の開発に大きく貢献してきた。特に遠心鋳造ロールの研究開発においては、熱間圧延用ロールとしての特性を実験室で評価する手法の確立に成功し、優れた商品の開発に寄与した。さらに、長年培った経験知識を基に新たな技術者の育成に向けた指導も積極的に行っている。また、職場の環境整備や安全管理にも大きな貢献を果たしており、その多岐にわたる研究開発への功績は顕著である。




第73回 日本金属学会金属組織写真賞 受賞者

最優秀賞 1件(5名)

【第2部門】走査電子顕微鏡部門

Ni-Co基超合金の微小疲労き裂の結晶学的な大規模3D解析

物質・材料研究機構構造材料研究拠点 主任研究員 西川 嗣彬
物質・材料研究機構構造材料研究拠点 主席研究員 古谷 佳之
物質・材料研究機構構造材料研究拠点 主幹研究員 長田 俊郎
物質・材料研究機構構造材料研究拠点 主席研究員 川岸 京子
物質・材料研究機構構造材料研究拠点 主席研究員 原 徹

優秀賞 2件(7名)

【第2部門】走査電子顕微鏡部門

液中銅電析過程のその場SEM観察

ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 上級研究員 吉田 要
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 上級研究員 佐々木 祐生
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 主任研究員 桑原 彰秀
東京大学大学院工学系研究科 総合研究機構 教授 幾原 雄一

【第3部門】透過電子顕微鏡部門

Fe-Cr系σ相におけるZonal転位の転位芯構造観察

京都大学大学院工学研究科 准教授 岸田 恭輔
京都大学大学院工学研究科 大学院生(現:JFE スチール(株)) 奥谷 将臣
京都大学大学院工学研究科 教授 乾 晴行




日本金属学会名誉員推戴者(4名)

(50音順)

大阪大学特任教授、名城大学特任教授、関西大学客員教授、東北大学名誉教授
新家 光雄

新家光雄君は、1978年に名古屋大学大学院工学研究科博士課程後期を単位取得退学後、同大学院研究生を経て1980年に豊橋技術科学大学生産システム工学系教務職員に採用され、その後助手、助教授、教授を経て2005年に東北大学金属材料研究所教授に就任した。2016年に定年退職後東北大学名誉教授となった。
 新家光雄君は、チタン合金やアルミニウム合金に関し、加工熱処理を駆使したミクロ組織制御と強靭化の研究に邁進し、実際に材料を開発するなど、金属学に多大な貢献をしてきている。特にチタン合金を主体とする生体用合金では、新合金の開発、製造・加工技術、熱処理・加工熱処理による組織制御と高性能化、性能評価、さらには実用化に必須の生体組織親和性や細胞毒性なども行い幅広く成果を挙げている。同君が開発した生体用Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金はTNTZ合金として国内外で知られ、メガネフレームや歯科矯正用ワイヤーなどに実用化された。さらに、相安定性制御や集合組織制御にも成功し、微細構造制御による強度・延性・疲労寿命の改善に加え、骨機能再建器具として骨吸収を抑制し骨のリモデリングを良好にするための超低弾性率化と超弾性機能の付与にも成功している。TNTZ合金では、酸素を高濃度に添加すると強度および延性がともに増大することや酸素が熱的ω相へ固溶し安定化することなどチタン合金での通説とされる現象とは全く逆の常識を覆す現象を見出している。さらに脊柱矯正器具用生体用低弾性率β型チタンの開発では、患者と医師の両方に好ましいが相反する特性である「全体の低弾性率性と変形部のみの高弾性率化」という新コンセプトを打ち出し、ヤング率自己調整機能という新しい機構を考案し、実際に開発に成功している。この他、歯科用金銀パラジウム合金、生体用ジルコニウム合金のミクロ組織と力学的特性との関係やチタン合金の歯科精密鋳造に関しても成果を挙げている。
 同君は、本会機能性チタン合金研究会代表企画世話人等を務め、Materials Transactionsや日本金属学会誌で数多くの主企画担当も務めている。さらには、チタン世界会議国際組織委員日本代表として2007年に第11回チタン世界会議JIMIC 5を京都で開催するなど材料工学の発展に貢献した。
 上記の業績に対して、本会より学会賞、村上記念賞、増本量賞、谷川・ハリス賞、功労賞、学術功労賞、論文賞、技術開発賞などが授与されている。また、同君は、日本金属学会会長、副会長、理事等を務め、本会の発展に貢献した。


東北大学参与・名誉教授 原 信義

原信義君は、1977年に東北大学大学院博士課程前期2年の課程を修了後、同年東北大学助手に採用され、助教授を経て2003年に教授に就任した。その後、2012年には東北大学理事に任じられ、2021年に退職するまで東日本大震災からの復興を先導する取組を牽引した。この間、独自の研究手法を開発することによってステンレス鋼をはじめとする各種金属材料の腐食防食の研究を発展させるとともに、人材育成に尽力した。
 代表的な研究業績はステンレス鋼の不働態と局部腐食発生機構を解明し、高耐食化原理を導出したことである。不働態皮膜の化学組成を変調反射分光法によってin situ定量分析する方法を開発し、合金組成および環境因子(電位、pH)との関係を解明した。不働態皮膜自体の耐食性を評価するために、MOCVDによって合成した人工不働態皮膜を用いる研究手法を考案し、Cr濃縮した不働態皮膜本来の耐食性は極めて高いことを明らかにした。このことを高品質IBSD-Fe-Cr合金薄膜を用いて実証した。また、その場観察機能付きマイクロ電気化学計測システムを開発し、ステンレス鋼のMnS起点の孔食発生機構を解明した。これにより、高合金化や高純度化に頼らない高耐食化の新原理(硫化物の組成・性状制御、MnS/鋼界面の高耐食化など)を導き、省資源高耐食鋼の設計指針を与えた。
 マイクロ電気化学計測の手法を炭素鋼に応用することでフェライト、パーライト、マルテンサイト組織の電気化学特性と孔食発生起点を解明した。固溶炭素が局部腐食防止に有効であることを発見し、組織制御による高耐食化法を提案した。この他にも、新しい機能性材料の腐食特性、特殊・極限環境下における金属およびセラミックス材料の腐食特性、および腐食環境計測用の化学・電気化学センサに関する研究で多くの成果を上げた。
 これらの業績に対して文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)など多数の学術賞を授与された。本会においては論文賞、功績賞、功労賞、技術開発賞、谷川・ハリス賞、まてりあ賞などを授与された他、本多記念講演の講師に選ばれた。また、日本金属学会副会長、欧文誌編集委員長、会報編集委員長などを務め、本会の発展に貢献した。


大阪大学特任教授、新構造材料技術研究組合プロジェクトマネージャー、横浜国立大学名誉教授
福富 洋志

福富洋志君は、1980年に東京大学大学院博士課程を修了後、同年に横浜国立大学講師に採用され、1996年教授に就任し、2017年に横浜国立大学名誉教授となった。同年から放送大学特任教授・神奈川学習センター所長を務めた後、2022年に大阪大学特任教授ならびに新構造材料技術研究組合プロジェクトマネージャーに就任した。
 この間、主として高温変形機構に関する研究や人材育成に従事してきた。結晶粒界すべりの機構を解明するため、結晶方位を系統的に制御した純アルミニウムの双結晶を作製して挙動を調べ、DSC転位の運動として理解できる場合があることを初めて実験的に明らかにした。また、動的再結晶機構の研究に集合組織解析を導入し、変形中の新粒形成が結晶粒界のバルジングによる場合と核生成による場合があることを確証した。さらに、固溶体合金の高温変形で生ずる、変形中に集合組織の主方位が変形の安定方位から新たな方位に変わる現象をAl-Mg合金やFe-Si合金を対象として詳細に調べてメカニズムを解明した。優先動的結晶粒成長機構と名付けたこのメカニズムは形成される集合組織を予見できるものである。同君らは結晶構造の異なる様々な合金を対象として変形モードを変えた実験を行って確証し、集合組織制御の新たな道を拓いた。また、結晶構造の対称性が低く、加工性の乏しい材料への集合組織の付与に高温加工が有効で、異方性を活用した材料性能の向上技術になることをTiAl金属間化合物や層状コバルト酸化物熱電変換材料などを対象に実証した。これらの研究業績に対し、本会においては論文賞、ジェフリース賞などが授与されている。
 同君は、教科書「金属材料学」、「見方・考え方合金状態図」の共著執筆や「自動車材料の最前線」、「ハイテンハンドブック」の監修、「金属便覧」での節の執筆をとおして材料工学分野の人材育成に貢献した。また、JIMISをはじめ、本会が主催、共催する国際会議の運営をとおして、本会の国際活動を支援した。同君は、日本金属学会会長、副会長、理事、関東支部支部長などを務め、本会の発展にも尽力した。


日本医療研究開発機構理事長、東京工業大学名誉教授 三島 良直

三島良直君は、相平衡・相反応・相安定性を利用し、原子レベルの欠陥構造から凝固におけるマクロスケールにいたる組織制御を展開して、高温構造材料や熱電などの機能性材 料の開発のために、特に金属間化合物を基調とした研究を広く展開した。業績の詳細は、学会賞の受賞紹介に記している。



第6回 日本金属学会フェロー認定者 (1名)

九州工業大学特任教授、熊本大学特任教授、佐賀大学特命教授、九州大学名誉教授 
堀田 善治



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