日本金属学会

金属組織写真賞作品

4-1

応募部門 4.顕微鏡関連部門(FIM, APFIM, AFM, X線CT等)
題目 Nb添加鋼の相界面で重畳した偏析と析出の3DAP観察
作品の説明 本組織写真は、強炭化物生成元素であるNbを微量添加した低炭素鋼(Fe-0.1C-0.06Nb (mass%))をオーステナイト化後、750℃-30sで等温フェライト変態処理を施し、水冷で凍結した部分変態材の3DAP測定結果である。図1に移動するフェライト/オーステナイト相界面近傍のNb原子マップを示す。Nbの局所濃化をより明瞭に表示するため、1.5at%Nbの等濃度面を図中に重ねている。過去の報告の通り、フェライト側にシート面上に分布したナノサイズのNbC相界面析出に対応するNbの濃化領域が特定な方向より観察される。また、それと同時にフェライト/オーステナイト相界面におけるNbの動的偏析も確認できる。NbC相界面析出のシート面を抽出し、直上から観察したNbの原子マップの一例を図2aに示す。シート面内では、NbC析出物がランダムに分布しており、図2bに示したNb濃度のコンタープロット(等高線図)に対応していることがわかる。一方、NbCの核生成サイトであると言われている相界面に対して、同様な解析を行った結果は図3である。図3aに示すように、Nbの偏析が生じた相界面においても、Nbが局所的に濃化したクラスターが見られる。しかしながら、サイズが極めて微細で非常に不明瞭であるため、図3bのコンタープロットを用いることでその分布を可視化した。なお、本組織写真は低合金鋼の相界面で重畳した偏析と析出の直接証拠となる。
学術的価値 強炭化物生成元素を添加した鋼のフェライト変態時に、移動するフェライト/オーステナイト界面で生じる炭化物生成元素の動的偏析およびそれに伴う合金炭化物の相界面析出が広くモデル化されてきたが、本組織写真はその現象を確認した世界初の実験観察である。相界面におけるNbの偏析量およびNbC析出物の核となるNbクラスターの関係を解明することで、相界面析出現象への本質的理解および合金炭化物の分布制御が可能となる。
技術的価値 3DAPはサブナノレベルの空間分解能を有するものの、実際に試料中の原子が電界蒸発の収差により、もとの位置から少しずれた場所で検出される。そのため、析出物と母相間の溶質原子密度の差が小さくなり、析出物が不明瞭になることがしばしばある。本組織写真では、等濃度面および溶質濃度のコンタープロットを併用することで、相界面内およびシート面内におけるNbC相界面析出の三次元的分布を可視化することができた。
組織写真の価値 従来の異相界面に関する研究では、(高分解能)透過型電子顕微鏡の組織写真が主流であった。本組織写真は、近年普及しつつある3DAPで得られたものであり、通常電顕で不可能であった相界面直上からの組織観察ができたことが特筆すべきである。
材料名 Fe-0.1C-0.06Nb合金 (mass%)
試料作製法 750℃-30sの部分変態材から、集束イオンビーム(FIB)でフェライト/オーステナイト異相界面を含有した針状試料を作製した。
観察手法 針状試料の3DAP測定を行い、再構築したデータを解析した。
出典 オリジナル
応募者・共同研究者 1. 張咏杰, 東北大学金属材料研究所
2. 董浩凱, 東北大学大学院工学研究科(現: 中国清華大学)
3. 宮本吾郎, 東北大学金属材料研究所
4. 古原忠, 東北大学金属材料研究所
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