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年頭のご挨拶

新年、明けましておめでとうございます。皆様にはご健勝で新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
工学をめぐる技術トレンドはかつてないほど目まぐるしい展開を見せており、生成AI技術の進展およびその社会実装による社会生活における行動変容が始まっております。またもう少し実現が先と思われていた量子コンピューティングによる応用も始まりを見せており、材料工学の諸課題への応用も進んでいくものと理解しております。また地球規模の気候変動に対応するためのカーボンニュートラル対策は、政策も含めて色々な議論を踏まえて多少の揺り戻しも起こしながら、全体としては多様な技術シーズを取り組んで着実進歩しているものと思います。このような困難な社会課題の解決に対しては、我々の基盤である材料科学・工学だけでは立ち向かうことはできませんが、他分野科学技術との融合を図りながら、公益社団法人である本会としても社会的使命を果していくことが一層期待されております。そのためには、研究開発・イノベーション・社会貢献・人材育成の協業の観点から、本会のあり方や運営体制に関して学会としてのエコシステム実現の探索を引き続き行っていくことが必要かと思います。
さて、2024年度秋期講演大会の講演申し込みの総数は前年より56件増の1062件となり、コロナ禍前の発表数に回復しました。やはり、対面での発表・討論を通じた交流に期待されるところが大きいものと思われます。特に、ポスター発表は319件と、前年秋の278件を40件以上も上回り、過去最多の発表件数となりました。また、今回も1600名を超える方々に参加申込みをいただいており、コロナ禍前の参加者数にまで回復しております。さらに高校生・高専学生ポスターは17件と前年比7件増と大幅に増加しました。発表者と参加者の討論の機会の増加により、特に今後の我が国の将来を担う若い人達との活発な議論により、これまで以上に盛況を呈する大会となったものと理解しております。研究成果の今後の展開だけでなく、人材育成における新たな展開を期待しているところです。
また、本会が目指している講演大会の国際化の方策の一つとして、秋期講演大会における国際セッションを実施しておりましたが、2024年度からは国際シンポジウムと呼称を改め、日本をはじめ、韓国、インド、オーストラリアに加え、インドネシア、台湾、タイからも講演者を招聘することにより国際的なシンポジウムを開催いたしました。これを契機として、特にアジア諸国との国際的な定期的交流が活発化し、この国際シンポジウムのさらなる拡大や、あるいは通常セッションにおける一層の国際化が進むものと期待しております。
また、国外の材料系学協会との連携につきましても、講演大会への相互派遣やシンポジウムの共同開催を行ってきました。韓国金属・材料学会(KIM)とは講演大会における会長の相互訪問・式典における挨拶を行ってまいりましたが、2024年度も共同シンポジウムであるKIM-JIMMシンポジウムを秋のKIM年次大会の際に開催し、活発な交流を行ったところです。例年通り米国TMSとはJIMM/TMS Young Leaderの相互派遣を進めるとともに、またASM Internationalとの連携事業についても継続しております。TMS会長およびASM会長とは直接歓談の機会を得ましたが、今後のこれら学会との一層の交流の強化を確認したところです。また、我が国全体としてもさらなる交流の進展が期待されているインドとは、新たにインド金属学会(IIM)との連携を深めるために、秋期講演大会にIIMの元会長にお越しいただくとともに、IIMの年次大会に本会から会長、国際交流委員長、事務局長を派遣して、国際交流を一層深めることを目的としたMOU調印を行いました。今後KIM-JIMMと同様な形でのIIM-JIMMシンポジウムの定期的な開催が予定されており、両国の交流が飛躍的に発展する契機となるものと期待しております。会員の皆様にご協力をいただきながら、実質的な交流を有意義なものとするように交流計画を予定していきたいと思います。さらに、他のアジア諸国との連携の強化も計画しておりますので、会員の皆様におかれましても引き続きご支援の程よろしくお願いいたします。このような国外学会との連携を通じて、本会のアジアでのプレゼンスの一層の向上を図っていきます。
また、このような国際化の流れの中で、外国会員の定義見直しを行いました。本会の目的および事業に賛同して入会した国内在住の個人を正員とし、外国在住の個人は外国会員とするように変更を行いました。また、大変心苦しいところではありますが、正員および外国一般会員の会費を2025年1月より改定することとしました。会費改定に伴い、正員も会報(まてりあ)の無料購読に加えて、Materials Transactionsの電子ジャーナルを無料で閲覧できるようにしました。刊行事業は対外的には本会のプレゼンスを示す非常に重要な事業であり、特に歴史のある欧文誌であるMaterials Transactionsの世界に向けた発信力を維持することが重要であります(2023年IFは1.2)。学術誌のインパクトファクターのインフレ傾向には捕らわれることなく、良質な論文を提供する取り組みが重要かと考えます。会員の皆様におかれましては、是非長期的にインパクトのある論文を欧文誌に投稿して、さらに引用していただきますように、重ねてお願いする次第であります。また引き続きオンラインを併用した会員の活発な交流と教育講座等の実施を進めて、会員サービスを一層拡大していく予定であります。
若手研究者の研究活動のサポートとして、フロンティア研究助成事業を行っておりますが、2024年度は前年比1.5倍の15件を採択しました。今後も引き続き本会会員の研究を活性化する取り組みを進めて行きます。一方、支部活動も本会の事業の中で大変重要な部分であります。支部活動においては日本鉄鋼協会の支部との共催事業も多いのですが、支部毎に事業内容や会員数などの事情が異なるため、共催事業の両会負担割合については、両会の支部間の議論の結果を尊重した形とする旨の申し入れを行いました。2025年度の各支部予算策定については、各支部における繰越金の有効活用を含めた予算案作成を依頼し、より一層円滑な支部活動を進めることができるようにサポートしていく予定であります。少子化による若年人口の減少に対する対策、ジェンダーに捕らわれない多様性を確保した人材育成は、現在日本全体で取り組むべき喫緊の課題であります。本会でも様々なレベルの議論や意見の収集により、また会員の皆様のお知恵やご協力のもとに、順次前進ができるように、様々企画を計画して行きたいと思っております。
本年も公益社団法人として、引き続き公益目的事業を公正かつ適切に推進して参りますので、会員の皆様に於かれましては厚いご支援のよろしくお願い申し上げます。
最後になりましたが、本会会員の皆様の益々のご健勝とご発展を祈念いたしまして年頭のご挨拶とさせて頂きます。