日本金属学会

会長就任あいさつ 会長就任あいさつ

公益社団法人 日本金属学会 
第71代会長 榎 学

 このたび皆様方のご推挙により、中野貴由博士の後を引き継ぎ、日本金属学会の会長を務めさせていただく事になりました。本会の有する長い歴史と輝かしい実績を考えますと、大変光栄に存じるとともに、責任の重さに身が引き締まる思いです。本会副会長の河村能人博士、加藤秀実博士、吉永直樹博士をはじめとして、理事、代議員、委員、支部および会員の皆様、ならびに山村英明事務局長および事務局の皆様のお力をお借りし、金属および関連材料分野の発展のために、微力ながら全力を尽くす所存です。皆様方のご支援とご鞭撻を心よりお願い申し上げます。

 本会は1937年に本多光太郎先生のご提唱により創設され、定款に謳われているように「金属及びその関連材料の学術及び科学技術の振興に関する事業を行い、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的」としております。現在に至るまで、金属材料を中心として、セラミックス材料や高分子材料、複合材料などの周辺材料も含む材料全般に関する研究成果を国内外に向けて発信してきました。特に近年では、材料の基礎学理や基盤技術を一層深めながら、社会ニーズの劇的な多様化に対応すべく、社会基盤材料、環境・エネルギー材料、電子・情報・通信材料、生体・医療・福祉材料など、産業応用を見据えた基礎から応用まで多岐に渡る材料科学・工学の研究発信の場として貢献しております。

 またこのような新しい時代の要請に基づく本会の変革は、歴代会長によって行われて参りました。新たな維持員制度による財政基盤の強化、学会ビジョンの設定による将来像の提示、時流に即した講演大会セッションおよび分科の大幅改変、役員選出制度と表彰制度の抜本的改革、広報推進 WGの設置による情報発信強化、など本会の活動の活性化のための改革が順次進められて参りました。さらに中野前会長の主導のもとに、新たなロゴマークの制定等による広報活動の強化、時代を先取りした産学協創研究会の創設、講演大会における国際セッションによる国際的ハブ機能の強化など、様々な新たな施策も進めております。

 一方最近では、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを通じた経済社会システム全体の変革である GX(グリーントランスフォーメーション)、ビッグデータなどのデータとAI や IoT を始めとするデジタル技術を活用した業務全般の変革であるDX(デジタルトランスフォーメーション)など、大幅な社会変革の流れが生じております。2050年カーボンニュートラルは材料研究者に突き付けられた壮大なチャレンジでもあり、一方材料工学の新たな飛躍のチャンスでもあると認識しております。またデータサイエンスも取り込んだ新たな学際融合領域における材料科学・工学研究の推進も強力に求められているかと思います。そこで研究開発・イノベーション・社会貢献・人材育成の協業の観点から、本会の学会としてのエコシステムの実現の在り方を皆様と一緒に探索していきたいと存じます。With/post コロナ時代おいて、会員の皆様とともに材料分野の新たな時代を構築すべく、改めて中長期的な展望に立って本会のさらなる飛躍のための具体的なアクションに向けて、皆様のご理解とご協力をお願いする次第です。

〇 刊行事業におけるプレゼンスの向上

 会報、会誌、欧文誌の刊行は学会活動の根幹をなすものであり、今後も会員サービスの柱として高い水準を維持していく必要があります。また、外部に向けて学会のプレゼンスを強く示すものともなります。堀田善治欧文誌編集委員長のご尺力によりMaterials Transactions のインパクトファクターは近年上昇しておりますが、他競合誌との熾烈な競争に打ち勝って、本会の世界に向けた情報発侶力を将来にわたって維持するためには、会員各位からのさらなる良質な論文の投稿がどうしても不可欠です。一層ご協力を切にお願いする次第です。

〇 講演会・講習会事業の一層の拡充

 2022年秋期、2023年春期講演大会を皆様のご協力のもと対面で実施することができました。ご尺力いただいた各位に改めて感謝する次第であり、またこのようなオンサイトでの交流は学術の発展においては不可欠なものと改めて認識させられました。引き続き講演大会が魅力的なものとなるように、順次新たな企画の拡充を検討していきます。他方、オンラインを活用した講習会の有用性も明らかになってきており、適宜オンサイトとオンラインを併用して、会員の活発な交流と教育講座等の実施による人材育成を一層推進いたします。

〇 調査・研究事業におけるプレゼンスの向上

 材料科学・工学分野における研究の先導を産・学・官が連携して取り組んでいくことを目的とした産学協創研究会の活動を開始していますが、規模を拡大して次世代を担う若手研究者の一層の活性化を目指します。また、国際情勢を鑑みると国際学術交流はやや難しい時代ですが、従来から行ってきた TMS との若手研究者の相互派遣や KIM とのシンポジウム共催による連携強化を一層進めるとともに、秋期講演大会の国際セッションの拡充に努めて、本会の特にアジアでのプレゼンスの一層の向上を図ります。

〇 人材育成と他学会との連携強化

 会員数減少は本会の継続的な活動にとって危機的な状況をもたらすことが懸念されており、様々な対策が講じられてきました。これまでに金属および関連材料に興味を持つ若い世代を育てることを目指し、学校教育の支援や青少年向けイベントの開催、若手交流等の人材育成に関する事業を行っており、これらはさらに拡充いたします。また、ダイバーシティの促進も重要課題であり、男女ともに学会で活躍できる環境作りのための男女共同参画事業の推進に向けて、これまで以上に対策を講じる必要があります。また、中長期的な視点に立って、例えば子供やその保護者に向けた材料科学・工学のアピール等を検討していきます。同様な課題を抱える他学会とも強力に連携して課題に取り組みます。

〇 広報活動の拡充

 以上のアクションを広く周知するためには、新たに導入したロゴマークの普及、SNS 等による情報発侶がより重要になります。広報委員会によるIT 広報活動の推進を引き続き行うとともに、アウトリーチ活動も含めた広報活動の一層の拡充を図ります。

 

 以上、これまでの改革をもとに本会の活動を新たな時代に対応した形で活発化し、材料科学・材料工学を代表する学会としてプレゼンスを示し、今後の世界の材料研究の発展に貢献できるよう努力して参ります。会員各位ならびに事務局さらには各支部の皆様のご理解、ご協力、ご鞭撻をお願い申し上げます。

2023年4月21日

入会・会員

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