日本金属学会

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2014年春期講演大会公募シンポジウムテーマ要旨

  2014年春期講演大会(東京工業大学)におけるテーマ公募によるシンポジウム講演は、下記11テーマで実施することになりました。講演申込要領は前記のとおりです。多数の有益な講演と活発な討論を期待いたします。

S1  マルテンサイト変態研究の歴史と今を考える

History and present state in research of martensitic transformations

 近年、燃費向上のために自動車用部材の軽量化・高強度化が強く求められており、鋼のマルテンサイト変態が注目を集めている。また、TiNiに加え生体用NiフリーTi合金や強磁性NiMn 基合金、高加工性Cu基合金といった新しい形状記憶合金も本邦を中心に精力的に開発が進められている。
 一方、EBSD、STEM-HAADF、3Dトモグラフィーといった新しい組織解析技術やシミュレーション技術の著しい進歩により、組織や変態挙動が複雑なために不明点が多かった変位型相変態の詳細が、次第に解明されつつある。
 この様に変位型相変態研究が新しい展開を迎える中で、鉄鋼・非鉄、熱弾性型・非熱弾性型、金属・非金属の垣根を越えて関連研究者が結集し、 歴史と伝統のある本邦マルテンサイト研究の発展と次世代への継承を目的としたシンポジウムを企画する。なお、今後シンポジウムは定期的に開催する予定である。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

東北大大学院工学研究科教授 貝沼亮介

E-mail: kainuma@material.tohoku.ac.jp

(シンポジウム co-chairs):

名古屋工業大 小山 敏幸 物質・材料研究機構 原 徹
阪大 福田 隆 東北大 古原 忠 東工大 細田 秀樹

S2  めっき膜の構造及び物性制御とその応用(Ⅳ)Nano plating(Ⅳ)

History and present state in research of martensitic transformations

 シンポジウム開催の目的は、めっき膜の構造制御とその高機能化、微細構造体形成のための技術向上を目的としている。
 めっき技術はこれまで電気化学的に検討されてきたが、めっき膜は金属材料そのものであり、金属学的に検討されるべきであると考え、当金属学会の先生方にも関心を持っていただきたいと、度々企画している。シンポジウムでは、膜の構造制御、物性制御、そして応用の各テーマの最新情報について基調講演をいただき、それに沿って一般講演を募集する。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

ナノプレーティング研究所代表 渡辺 徹

E-mail: watanabe-tohru@w.email.ne.jp

(シンポジウム co-chairs):

兵庫県立大 松田 均 広島工大 日野 実
日本エレクトロプレイティング 藤波 知之 吉野電工 吉野 正洋

S3  プラストンの材料科学 Ⅱ

Materials Science on Plaston Ⅱ

 「転位論」は材料科学・工学における重要な学問基盤であり、金属系結晶材料の変形は転位(dislocation)の運動により議論される。一方近年、転位の概念だけでは必ずしも理解しきれない変形現象が顕在化しつつある。例えば、ナノ結晶材料においては複数の結晶粒の協調的なせん断や回転が生じている可能性がある。また、原子のシャフリングを必要とする六方晶、あるいは複雑な規則相における双晶変形の原子的メカニズムや、せん断帯、粒界すべり、アモルファス・金属ガラスの変形、マルテンサイト変態もこの範疇に入る。我々は、転位や回位(disclination)を内包し結晶性材料の変形現象を包括的に理解する上位概念として、変形子(プラストン:plaston)を提案する。本公募シンポジウムは、2013年春期大会で実施した第1回公募シンポジウムに引き続き、新規な挑戦的概念であるプラストンを題材に、材料の変形と破壊についての基礎的議論を行うことを目的としている。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

京都大学大学院工学研究科教授 辻 伸泰

E-mail: nobuhiro-tsuji@mtl.kyoto-u.ac.jp

(シンポジウム co-chairs):

京大 田中 功 乾 晴行 物・材機構 津崎 兼彰
東大 幾原 雄一 尾方 成信 京大 落合 庄治郎

S4  塑性異方性の強い結晶性材料のキンク変形ダイナミクスと強化機構

Kink deformation dynamics and strengthening mechanism in crystalline materials with high plastic anisotropy

 HCP構造を基盤とする金属合金に代表される塑性異方性の強い材料では、一般に立方晶とは異なった特異な変形挙動が現れる。キンク変形は、その1つとして古くから知られているが、最近、このキンク変形による延性発現や強化現象が見出され、注目が集まっている。例えば、高強度マグネシウム合金で見出された長周期積層構造(LPSO)はキンク変形するとともに、その結果形成されたキンクバンドにより著しい強化が起こることが明らかになった。また、HCP積層構造を持つTi-Si-C系セラミック等がキンク変形による歪み緩和によって延性が発現することが見出されている。このような新規な塑性変形挙動に対して、転位の集団運動による理解に加えて、回位の概念を応用してそれを記述しようという試みもなされつつある。
 本公募シンポジウムは、キンク変形に見られるような特異な変形挙動を題材に、回位などの新たな視点から材料の変形と破壊についての基礎的議論を行うために企画されたものである。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

熊本大学教授 河村 能人

E-mail: rivervil@gpo.kumamoto-u.ac.jp

(シンポジウム co-chairs):

九大 東田 賢二 阪大 中谷 彰宏 中島 英治 北見工大 大橋 鉄也

S5  励起反応場で創成した低次元ナノ材料とその機能(XI)

Low-dimensional nanomaterials and their functions grown in the physically/chemically excited reaction fields(XI)

 新機能デバイス要素を目指したナノ材料研究が隆盛を極める中、物理・化学的励起反応場を用いると自己組織化機構から逸脱すると思われる機構により形成された低次元ナノ材料が報告され始めた。その反応場では様々な励起源によって原子・分子規模の非平衡反応を促進させ、主としてボトムアップ的成長と操作が可能となる。本シンポジウムでは励起反応場を用いて創成される各種低次元材料を概括してその形成機構と制御の可能性に関する考察を行い、これらの特異的な物理・化学的諸特性と応用の可能性を学際的に議論する。対象とする励起反応場は、物理的には電子線・イオン・レーザー・超音波・マイクロ波などのビーム照射、化学的には超臨界などの高温・高圧条件やサイズ・次元が規制された空間での化学反応とし、形状にナノメートル規模の粒子・ドット・チューブ・ロッド・ファイバー・板状箔などの低次元構造を持つ金属・半導体・無機化合物・有機化合物・それらの複合体を網羅する。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

東北大学多元物質科学研究所教授 田中 俊一郎

E-mail: sitanaka@tagen.tohoku.ac.jp

(シンポジウム co-chairs):

東北大 佐藤 俊一 阪大 保田 英洋 東北大 柴田 浩幸 及川 勝成

S6  グリーンエネルギー材料のマルチスケール創製シンポジウムII

Multiscale engineering of green energy materials II

 東日本大震災を機会に持続可能な低炭素社会の構築とともに安全安心なエネルギーの確保が重要な課題となっている。本公募シンポジウムでは、材料科学の立場から長期的-短期的視野に立って、太陽光発電や廃熱利用などの新規グリーンエネルギー変換システム用材料の創出と共に、超々臨界発電や超高温熱機関などの従来技術の高効率化を実現するための方策についての議論を行っていきたい。グリーンエネルギー材料の創製には、これらを構成するエネルギー材料の構造を原子レベルから実寸レベルまで有機的に結びつけ、マルチスケールでデザインを可能にする材料科学的アプローチが必要である。第2回目となる今回の公募シンポジウムでは、特に、『材料界面のキャラクタリゼーションとその制御』という切り口から、新規グリーンエネルギー材料創製の設計原理確立に向けての議論の場を提供したい。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

熊本大学大学院自然科学研究科教授 連川 貞弘

E-mail: turekawa@kumamoto-u.ac.jp

(シンポジウム co-chairs):

神戸大 田中 克志 東工大 木村 好里 東北大 吉見 享祐 北大 渡辺 精一

S7  永久磁石開発の元素戦略2 ―材料設計の技術課題―

Element strategy for high performance permanent magnets ― technical challenges on materials design ―

 本シンポジウムでは元素戦略4課題のひとつである希少元素を使わない永久磁石材料の開発を目指した基礎研究ならびに産業界における応用研究を対象とする。具体的には2013年春期大会に引き続き、Dyを削減するためのNd-Fe-B系磁石の高保磁力化に関する従来の研究に加え、希少元素を用いない新規磁石化合物の可能性を検討するための磁性理論、磁石の保磁力を高めるために必要な保磁力理論とマイクロマグネティクシミュレーションなど理論的な研究発表を歓迎する。また、保磁力と微細構造の関係を理解するための微細構造解析や薄膜、ナノ粒子合成などによるモデル実験、さらに次世代高性能磁石開発のためのプロセス研究等の広範な磁石研究の発表、さらに応用サイドからの非レアアース磁石の応用の可能性等についての提案など活発な討論を期待する。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

日立金属(株)磁性材料研究所主任研究員 西内 武司

E-mail: takeshi.nishiuchi.rh@hitachi-metals.com

(シンポジウム co-chairs):

東北大 杉本 諭 物質・材料研究機構 宝野 和博 広沢 哲
JASRI 中村 哲也 トヨタ自動車 加藤 晃

S8  バイオマテリアルの機能発現と生体反応

Bio-functionalization and biological reaction of materials

 バイオマテリアルはその原子結合様式から、金属、セラミックス、高分子に大別される。こうしたバイオマテリアルの生体での反応は各材料において様々であり、一般に利点の組み合わせによって用いられている。さらに表面における生体分子・タンパク質・細胞などの反応は各種材料に依存し、血液適合性や骨適合性などの生体機能性発現を支配する。人工関節、ステント、スキャホールドなどを利用した生体機能再建や再生医療において、各種バイオマテリアルに要求される力学的・化学的・生物学的機能を発現するためには、各種材料をベースにした理解が不可欠である。本シンポジウムではインプラントとしての応用を念頭に金属系、セラミックス系、高分子系バイオマテリアルと生体との相互作用が機能性発現に及ぼす影響に着目し、バイオマテリアルの機能発現・生体反応に関する知識の共有を図るとともに、バイオマテリアルのさらなる高機能化・生体反応の理解についての議論を深める場としたい。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

東北大学大学院工学研究科 成島 尚之

E-mail: narut@material.tohoku.ac.jp

(シンポジウム co-chairs):

大阪大学 中野 貴由 愛媛大 小林 千悟
東京医歯大 塙 隆夫 東北大 新家 光雄

S9  低炭素化社会の構築に向けた耐熱材料の新展開III

Novel Prospect and Technology on Heat Resistant Materials for Realization of Sustainable Low Carbon Society III

 本公募シンポジウムは昨年春(42件)と本年春(33件)に引続き第3回として開催するものである。
 新たな「エネルギー基本政策」が年度末の発表に向けて検討されている。資源の乏しい我国が国際競争力を維持し、且つ、安全安心な低炭素化社会を実現するためには、エネルギーの安定供給は必要不可欠である。現在我国の総発電量の約9割(震災前は約6割)は火力で賄われ、その役割は一層重要となる。日本の火力発電プラント技術は世界最高であり、発電効率は40%超である。しかし、火力発電は温暖化ガスを排出する。したがって、エネルギーの安定供給と環境負荷低減を同時に達成するには、発電効率の向上が不可欠である。その鍵を握るのが蒸気タービンやガスタービン用耐熱材料の高温・高強度化技術革新による耐用温度の向上である。また、持続可能な低炭素化社会を構築する上において、自動車、ジェットエンジン等各種輸送機器に用いられる耐熱材料の高温化、軽量化、高性能化による高燃費化も重要な課題である。本シンポジウムでは、特に日本の発電部門の現状を材料及び運用両面から客観的に分析し、課題を抽出するとともに、耐熱材料の高性能化をもたらす画期的な組織制御技術について、基礎と応用の両面から議論を展開し、新たな可能性を探求する。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

東京工業大学教授 竹山 雅夫

E-mail: takeyama@mtl.titech.ac.jp

(シンポジウム co-chairs):

名大 村田 純教 九大 中島 英治
北大 三浦 誠司 京大 岸田 恭輔 東北大 大森 俊洋

S10  航空機用先進金属材料

Advanced metallic materials for aircraft

 CO2 排出削減と高騰する燃料費の削減のため、航空機体の軽量化および航空機エンジン高効率化の要求はますます高まっている。航空機用構造材料の粋を集めて設計される機体には、複合材料やマグネシウム合金等の新規構造材料の開発が行われている。また、将来の次世代高効率エンジンの開発には超耐熱材料、コーティング、高強度材料、軽量高比強度材料などさまざまな先進構造材料開発、および三次元造形をはじめとする新規加工プロセス開発が必要となっている。本シンポジウムは、海外・国内の航空機開発における金属材料・加工のニーズの動向と、それらに応えるべきシーズとしての金属材料・加工の研究開発の現状と課題をそれぞれ明らかにし、今後の研究開発の指針を得ることを目的として開催されるものである。材料開発、プロセス開発、シミュレーション、組織特性解析、信頼性向上、部材補修・修理など広い観点からの多数の研究発表を期待する。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

首都大学東京准教授 筧 幸次

E-mail: kkakehi@tmu.ac.jp

(シンポジウム co-chairs):

東北大 千葉 晶彦 物材機 川岸 京子 原田 広史 IHI 錦織 貞郎

S11  放射化物質評価における技術と人材育成

Technology and training of engineers for radioactive materials

 放射性廃棄物、産業廃棄物、リサイクルなどは、ものつくりのシステムにはじめから組み込むべきものであるが、これまで組み込まれてこなかった。これらは、産業活動には欠かせない技術であり、安定な社会・生活を築くうえでも重要である。耐用年数を迎え、廃炉になる原子力発電所がこれから増加するため、本シンポジウムでは、原子炉廃炉や放射化物質評価等の技術の学術的側面に焦点をあて、技術の背景となる学理、基本技術、技術動向や要求、そして人材育成について理解する。

テーマ責任者

(シンポジウム chair):

物質・材料研究機構 御手洗 容子

E-mail: mitarai.yoko@nims.go.jp

(シンポジウム co-chairs):

横国大 梅澤 修 奈良女子大 松岡 由貴 京大 山末 英嗣
東工大 細田 秀樹 東北大 折茂 慎一 物材機構 西村 睦
阪大 藤本 愼司 北大 鵜飼 重治

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