日本金属学会

身の回りの金属を知ろう

金属は身近なところで活躍しています。
身の回りに溢れている金属製品について、知っているようで知らない事がたくさんあります。
どこでどんなふうに活躍しているか、身の回りの金属について知ってみませんか?

金属の活躍現場

vol.2医療福祉に役立つ金属

長寿して高齢になってもハイクオリティの生活を続けるためには医療が不可欠です。
必要な強さを確保しつつ、毒性がなく、身体に違和感のない金属がいろいろな医療分野で活躍しています。では活躍現場の一部を紹介します。

1歯医者さんでは、虫歯の治療に金・銀・パラジウム合金やコバルト・クロム合金を溶かして精密に固めて、欠けた部分の補填やブリッジに使用しています。歯並びを良くするための歯列矯正ワイヤには、 伸び縮みしやすい(弾性といいます。)ニッケル・チタン合金が使用されています。ニッケル・チタン合金には、超弾性という性質があるため、歯をじわじわと押して歯並びをよくします。また、なくなった歯に代わる人工歯根(インプラント)にはチタン合金が使用されています。

歯列矯正ワイヤ

<歯列矯正ワイヤ(超弾性Ti-Ni合金)(日本金属学会編:医療用金属材料概論,(丸善,2011),p39)>HP

2動脈硬化した心臓の治療に、外科手術でなく、カテーテル治療を行う場合があります。この治療法では、ステンレス鋼等の金属でできた網状のステントというものをとりつけた細いカテーテルを血管(冠動脈)の中に入れ、 狭くなった血管部でふくらませた後、ステントを血管内に残して血流を確保します。 みなさんの中には心臓手術などで「神の手」と呼ばれる名医の先生がこの方法で手術するのをテレビで見た人がいるかもしれません。

カテーテル治療の概念治療に使用される自己拡張ステント

<カテーテルとステント:(a)カテーテル治療の概念と(b)治療に使用される自己拡張ステント.(山内 清;まてりあ,49(2010),p154)>HP

3元気に歩けるもとは股関節です。テレビではコンドロイチンやコラーゲン等を内服して元気に歩けるようになった例が放映されていますが、すり減った軟骨や骨の異常を根本的に直すには整形外科手術が必要です。そこで活躍するのが 人工股関節として活躍する金属材料です。ステンレス鋼やコバルト・クロム合金やチタン合金で主要部を人工的に作製しています。金属部品同士での摩耗しにくさではコバルト・クロム合金が、腐食に対する強さ、伸び縮みのしやすさではチタン合金が選ばれています。

人工関節

<人工関節:(a)人工股関節(セメントレスタイプ)と(b)人工膝関節(セメントレスタイプ)の製品写真.(石水 敬大;まてりあ,49(2010),p149)>HP

4トカゲのシッポのように失った身体の一部を再生することは夢の研究ですが、実際に再生医療として研究が進んでいます。金属材料ではありませんが、アパタイトというセラミックスがあります。アパタイトはカルシウムとリン酸で構成され、 人間の歯や骨の成分とほぼ同じです。例えば、骨はアパタイトとコラーゲンの複合材料です。アパタイトは体の中に入れても拒否反応がなく、骨の一部となることから、骨折などで大きく欠損した部分に充填することで、回復を早めます。さらに最近では、特殊なたんぱく質を使って、骨の回復を早める研究も行われています。

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