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金属は身近なところで活躍しています。
身の回りに溢れている金属製品について、知っているようで知らない事がたくさんあります。
どこでどんなふうに活躍しているか、身の回りの金属について知ってみませんか?
応用編 vol.5[実験: 鋳造・凝固]材料の鋳造・凝固を調べる
高温な液体金属を冷やして固める(凝固させる)ことで、複雑形状製品を大量に作ることができる方法を「鋳造法」と呼ぶ。
鋳造法に使われる液体金属は高温なので、設備が整った工場や実験室以外で取り扱うのは大変危険。
実は、身近な液体である水も、思い通りに凍らせることは金属同様難しい。
ここでは水を冷凍庫で凍らせる実験を通して、鋳造法の面白さ、難しさを体験しよう。
凝固方向が内部品質に及ぼす影響を調べよう
【用意するもの】
水、容器(コップなど)、断熱材(タオルなど)、金属板
【方法】
A. 容器に入れた水を、冷凍庫にそのまま置いて凍らせる。
B. 容器に水を入れ、上と横に断熱材を巻き、金属板の上に置いてから冷蔵庫に入れて凍らせる。
ガラス製の容器は割れる危険があるので、取り扱いは十分注意すること!
・透明で綺麗な部分と冷却方向の関係はどうなっているだろうか?
・泡を詳細に観察してみよう。白い泡だろうか?透明な泡だろうか?
添加物が内部品質に及ぼす影響を調べよう
【用意するもの】
水、容器(コップなど)、インク、混ぜ物(砂糖、炭酸水など)
【方法】
1. 水にインクを数滴垂らしてかき混ぜ、インク水を作る。
2. いろいろな条件でインク水を凍らせてみよう!
・インク以外何も加えずに凍らせる
・砂糖を少し混ぜて凍らせる
・炭酸水を少し混ぜて凍らせる
・透明な部分と色付きの部分の境界は滑らかだろうか、ギザギザだろうか。
・透明な部分はまったくの無色透明だろうか、うっすら色が付いているだろうか。
・色付きの部分は透明だろうか。不透明だろうか。中に泡はあるだろうか。
[解説]金属の凝固:鋳造における凝固の制御
凝固の進行と溶質の濃化
凝固の最前線で起こっていること
液体中で固体が成長(凝固が進行)するとき、その最前線では何が起こっているかを見てみよう。 仮に、赤い溶質を少し溶かしたピンク色の液体を、下図のように左側から冷却する場合を考える
冷却している左側から凝固は進行するが、多くの場合は溶質は固体にはあまり残らず、液体に掃き出される。
その結果、固体は濃度が薄、液体は濃度が高くなる。このような、凝固に伴う成分の偏りを「偏析」という。
実際の金属に生じる偏析模様を見てみよう。
これはBi-Sn系合金という金属をゆっくり凝固させ、切断面の模様(凝固組織という)を観察した写真で、 インク水の実験でいえば、Biが水、Snがインクに相当する。
黒く見える部分はBiが主成分、白く見える部分はSnが主成分となっており、 水-インク系と同じように成分の偏り(偏析)が観察できる。
金属にはガスも溶けている
水を凍らせたときにできる白い泡は、水に溶け込んだミネラルや炭酸が最終凝固部に濃化し、溶けきれなくなって出てきたもの。
金属では溶融時に金属内にガスが溶け込み、凝固時に泡となって出てくることがある。
冷却方向だけではなく、様々な条件を変えて凍らせてみよう。
たとえば...
・容器の形状を変える。
・断熱材や金属板の種類を変える。
・煮沸した水道水や、蒸留水を使う。
・冷凍庫の設定温度を変えてみる。
条件によって、氷のどの部分が透明になるか、
気泡がどこに生じるかを観察してみよう。
全体が透明な氷を作れるだろうか?
凝固界面の形
凝固界面をもう少し詳細に観察してみよう。
多くの場合、凝固界面は下図のように樹枝状形状を示す。(これをデンドライトと呼ぶ)
合金の種類や冷却のしかたによって、ほとんど樹枝が見えず滑らかな界面になったり、液体中に孤立して樹枝状の固体が生成・成長したりする。
樹枝状の固体が多く成長すると、その隙間に濃化した溶質がトラップされて、巨視的には偏析は少なくなる。
ここで、AlにSiを溶かしたAl-Si系合金を急冷した場合の凝固組織を見てみよう。
白い部分はAlが主成分、黒い部分がSiが主成分なので、ここでも局所的には偏析が生じていることがわかる。しかし、上に挙げたBi-Sn系合金のときは白い領域と黒い領域がはっきり分かれていたが、 Al-Si系合金では樹枝状のAlが多く、全体的にはグレーになることがわかる。
インク水でいうと、ピンク色のまま均一に凝固したことに相当するだろう。
・虫眼鏡で氷を観察してみよう。
透明な部分と赤い部分の境界は滑らかだろうか、ギザギザだろうか。
・混ぜるものによって、界面形状は変化しただろうか。
金属は凝固時に収縮する
最後にもうひとつ。鋳造にとって重要な金属の性質を紹介しよう。
水は。凝固時に膨張することがよく知られている。
一方で。鋳造に用いられる多くの金属は。凝固時に収縮する。
実際の金属に現れる凝固収縮を。ガス欠陥とあわせて観察した例を示そう。下図はAl-Si合金の山形鋳物である。
材料を溶かした後。脱ガス処理した後凝固させた場合(左)と。 逆にガス含有処理した後凝固させた場合(右)の断面写真である。
(粟野、軽金属第56巻(2006)、pp.335-342より)
脱ガスすると、中央部に大きな収縮ができるが、ガスを含有させると凝固末期に凝固収縮を上回る膨張が生じることがある。
溶融金属の状態では見た目に違いはないが、凝固させると全く異なる中身となる。
凝固収縮によって生じる空洞欠陥は「引け巣」と呼ばれ、最も致命的な鋳造欠陥のひとつである。
身近なものでは、ろうそくのロウが凝固時に収縮する。
鍋やスプーンで溶かして型に注げば簡単に成形できるので、観察してみよう。
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